130話 ナステック包囲網・完成
お客役のワイルドタイガーに、「新たな扉」を開かれるナステックを観察していると、オートマタが説得完了の報を持ってきてくれた。
「メグミ様・サーシャ様。23階層にいる4体を除くナステック配下は、全員”移籍”を希望するそうです。配属先も任せるとのこと!」
「よくやった! ナステックに移籍を承諾させるまで、あと半日くらいかかるから……。執事君、彼らに居心地の悪さを感じさせぬよう取り計らってくれ」
「お任せください」
22階層で求人広告を見たモンスター達は、<ゴーレムマスター>ギフトの効果で賢くなったオートマタに説得され、30分もかからず”移籍”を決め……
地図で示したエレベータートラップに自らかかって、27階層の一区画にある牢獄へと入った。
もちろん、仲間になる予定のモンスターを不衛生な場所に監禁する気などないので……彼らが入っているのは、牢獄とは名ばかりのリラックスルーム。
スライムジェルで作ったプルプルのゼリーシートが敷かれ、自販機の各種料理を好きに食べられるよう、箱いっぱいの銅貨も置いてある。
今彼らは、新たに合流した「上層階で捨て駒にされていたモンスター達」と一緒に……
ナステックのアルバイト映像を見ながら、唐揚げを食べているそうだ。
<賢臣のダンジョン>所属のモンスターは、魔王のギフトで感情が育っているから、人間くさくて面白いよ。
「元配下に爆笑されるくらい、ナステックのバイト映像はおもしろいが……地上部でハイドンが突撃準備をしている状況だし、時間が惜しい」
スライムのような「知性がないモンスター」の説得も済んだので、23階層に残されたゴーレム3体へ求人広告を出すぞ!
〜移籍希望者募集〜
詳細:
こんにちは。
<恵のダンジョン>で魔王をしているメグミです。
貴方の働きぶりを見て「ウチのモンスターになって欲しい」と思い、スカウトを送りました。
<賢臣のダンジョン>から<恵のダンジョン>へ移籍して、クリーンな職場環境で働きませんか?
女性魔王が指揮をとる、<未設定のダンジョン>への移籍も歓迎ですよ!
P.S.
22階層から上にいた貴方の仲間は、全員コチラの呼びかけに応じてくれました。
今は「ナステックの承諾」を待っている状態で、清潔な部屋で美味しい肉料理を食べています。
報酬:人間と変わらないレベルの食事・寝床を提供。
活躍してくれたら、その日のご飯をグレードアップします。
条件:移籍同意書にサインした後、ナステックが承諾するまで仕事部屋から出ないでください。
バイトを継続して、その報酬で「ウナギの蒲焼」を食べるのはOKです!
彼らの仕事部屋にチラシを出現させ、モニターで仲間のオートマタと繋ぐと……3体はオートマタから現在の状況を聞き、移籍同意書にサインしてくれた。
説得にかかった時間は、3体合わせてたったの10分。
<賢臣のダンジョン>所属だった子達って……魔王との信頼関係は皆無でも、モンスター同士の仲はいいんだよ。
「ふぅ〜。ウチにも”同格のオリハルコンゴーレム”がいる以上、護衛3体だけで僕が待つコアルームに着くまで、ナステックを守れるわけがない」
しかも命懸けで守る"神輿"の性格がアレでは、迷いもせず見捨てられて当然だわな。
僕はナステックみたいにならぬよう、これからも誠実にモンスターと向き合っていくぞ!
『ウレシイ。アカルイミライガ、ミエマシタ。イッショウケンメイ、ハタライテ、アタラシイマオウサマニ、アピールシマス』
<−−− ナイス意気込みです! 無理しすぎるのも良くないから、適度に"ウナギ休憩"をはさみつつ頑張ってください! 同僚になるのが待ち遠しいです −−−>
『ハイ。ガンバリマス』
護衛を全て剥がせたので、僕とサーシャは「オリハルコンゴーレムとオートマタの癒されるやり取り」を聞きながら、23階層へ戦力を集中させ……
通信特化ゆえ難しい仕事ができず、最低就労時間だけ満たした後「求人板」の前で放置されていた、メイルーンを確保。
そしてナステックの仕事部屋を、ぐるりとSランクモンスターで囲み……ヤツが逃げ出したくなるようなお客様を投入した。
メイルーン
ランク:A
維持費:4000ポイント/日
詳細:体長10cmほどの箱型モンスター。
魔力バッテリーのエネルギーを使い、登録済の別個体へ手紙を送ることができる。
異空間のダンジョンでも送信機能は健在だが、送る難度が高いほどバッテリーを消費するため使用回数が限られる。
魔力バッテリーは時間経過で回復する他、他者がMPを注ぎ込んだり魔石を与えることでも復活可能。
ただし、自力回復以外のコスパは非常に悪い。
「さすがにゾンビと”扉を開く”のは嫌だろうから……ナステックは、最低就労時間を超えたらすぐ飛び出してくるはず。そこを捕らえるよ!」
「了解! 移籍の同意・ミッション用の手形・<ゴーレムマスター>ギフト獲得まであと少し! メグミ君、うっかり奴に死なれないよう頑張ろうね♪」
「うん!」
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






