129話 稼いだバイト代でウナギを食べる
〜ナステックside〜
地獄の食器洗いを続けること30時間……心身ともズタボロにされた私は、ようやく仕事部屋から解放された。
「グスッ。こんな鬼畜バイトがあってたまるか! 死ぬ気で頑張ったのに、”基準を満たしていません”ばかり。結局、100バイトも貰えないなんて」
しかも得た収入は”賠償金支払い”のせいで奪われ、638万バイトの借金まで残る始末。
もし庶民の仕事環境が、私が経験した地獄と同じだとしたら……奴らは、一人残らず借金奴隷となっているだろう。
「ルールに書いてあった借金の利息は、高利貸しと同じ”10日で1割”。借主の変更もできないから、ゴーレムへ借金を押し付け置き去りにするのも無理だ」
このままだと、私は返済のために内臓を売るハメになってしまう。
一刻も早く配下のモンスターに稼がせ、638万バイト全て返しきるしかない!
「おぃ聞いているか? 命令だ。今すぐ上位のゴーレムに認証装置を集め、10体ほど23階層へ送れ! コッチで洒落にならない事態が起こっている!」
「申し訳ございません。22階層の配下一同トラップにはまり、場所すら分からぬ牢獄へ閉じ込められてしまいました。誰も22階層に居ないので無理です」
「なんだと!?」
くそっ、メグミの野郎……私が目を離した隙にモンスターを罠にはめ、手足となる戦力をもぎ取りやがったな!
「こうなったら仕方ない。トラブルが起きても金を取られずに済むバイトで私自身も稼ぎ、借金の返済スピードを上げるだけだ!」
時間稼ぎ見え見えの23階層を抜けたら、きっとボス部屋とコアルームがあるはず。
22階層でウロチョロしている、ロミオット達より早く其処へたどり着ければ勝ちなんだから、まだ勝機はある。
希望が消えたわけじゃない!
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〜メグミside〜
22階層のモンスターを呼び寄せようとして断られ、600万バイト以上の借金を背負うことになったナステックは……
賠償金が発生しない高時給の接客バイトを選び、ポーションを飲み干してから仕事部屋へと入っていった。
〜接客バイト〜
報酬:1プレイ7000バイト
雇用条件:認められるまで試用期間アリ
試用期間中は報酬が半額となる
プレイ中に怪我を負った場合は自己責任
最低就労時間:30時間
「ねぇメグミ君。あれって、ドSなお客様を神と崇め接待するバイトだよね? なんであの人、痛い目にあっても学ばないんだろう?」
「さぁ? バカの思考回路は分からないよ。でも……ナステックは<大地獄ルーレット>で一度”扉を開いている”から、相性は良いかもしれないな」
<食器洗いバイト>では、棚の下に入っているスポンジや洗剤にすら気付かず、油まみれの食器を水に浸けて手でこすったり……
いきなり水桶をファイヤーボールで壊したりと、予想以上の無能っぷりを見せてくれた。
僕は一定時間おきに「働くしかない」と考えるよう、マボロ虫で思考誘導しただけなのに……なぜ、あんな派手に自滅するのだろう?
今回のバイトは客の命令に従っておけば金を貰えるから、そうそうミスは起きないと思うけど、もう二度と奴に能動的な仕事はさせたくないな。
<−−− 最低就労時間を超えました。オリハルコンゴーレムさん、このアルバイトを続けますか? −−−>
『ハイ。ヨロシクオネガイシマス』
足手まといの魔王とは裏腹に、「護衛→バイト代を稼ぐ駒」となったゴーレム達は、3体とも甲斐甲斐しく働いている。
<−−− 了解しました。貴方の働きは素晴らしいので、これからも期待しています。無理のない範囲で頑張ってください −−−>
『アリガトウゴザイマス。ホメラレテ、オカネモモラエルナンテ、ココハテンゴクデス』
ゴーレム達を担当する上司は「通常モード」のオートマタだし、彼らの仕事ぶりも素晴らしいので、「いびり」という概念は存在しないよ。
問題行動があるとすれば……
<−−− 給与明細の改竄が必要なときは、いつでも言ってくださいね。適当なミスをでっち上げて、食事代とか引いておくので −−−>
『カンシャシマス! ウナギノカバヤキ、オイシイデス』
自販機価格の10倍で食べられる「ウナギの蒲焼」を、別々の仕事場にいるゴーレムが3体とも気に入り、稼いだバイト代で食い倒していることくらいか。
仕事部屋から出たところで、ナステックに「もっと稼げ」と言わんばかりの態度で搾取されるだけだから、ご飯に代えたいという気持ちは分かるし……
どこぞのバカと違って借金をこさえる事はないから、上司のオートマタも全力で協力中だ。
僕とサーシャも時々食べるんだけど、「ウナギの蒲焼」って活力が湧いてくるんだよね〜。
他者から搾取した金を浪費するのはよくないけど、自分で稼いだバイト代をウナギに代えるのはいい選択だと思う。
「メグミ様・サーシャ様、ナステックの配下を牢獄へ移動させました。今は”唐揚げ”を食べさせながら、”知性のないモンスター”へ状況を伝えております」
「執事君ありがとう。全員が状況を把握したら、23階層のゴーレム3体も取り込みにかかる。準備しておいてくれ」
「かしこまりました」
「ウナギの蒲焼」は自販機価格でも高価だから、毎日食べられると困るけど……そんなに好きなら時々ご褒美としてあげるし、ウチへおいで!
僕やサーシャは罵声をあびせたりしないし、頑張っている子は褒めるタイプだから、相性いいと思うよ。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






