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128話 ナステック限定:劣悪な職場環境




『うわっ、何じゃこりゃあ!?』


 23階層のモニターを眺めていると、<食器洗いバイト>を選んだナステックが、大量の皿を見て悲鳴をあげた。



「あはは。移籍したモンスターの歓迎会で、新旧配下の親睦を深めるため、皆でガンガン飲み食いしたから……汚れた食器がたくさん出ちゃってね〜」


 (バカが)やる気になるような求人広告を出しておいたら、護衛役のゴーレムじゃなく、ナステック本人が引っかかったのだ。



「メグミ君。あの人”油汚れは紙か端切れに吸わせてから洗う”って常識、知ってるかなぁ? 家事した事なさそうだし、片付く未来が見えないんだけど……」


「う〜ん。その場合はオリハルコンゴーレムに喝を入れられるか、皿を割りまくって借金をこさえるだけだから、気にしなくてもいいんじゃない?」



「ふふっ。メグミ君、わざとソレ狙ってるでしょ? 相変わらず黒いなぁ〜」


「バレちゃった? でも、そんな僕が好きなんだよね?」


「うん。鬼畜モードのメグミ君、大好き! カッコ可愛いんだもん♪」



 (22階層へ)マトモな求人広告も出し終えたし……あとはモンスター達が進退を決めるまで、サーシャとイチャラブしながら23階層の様子を観察するだけ。


 誠心誠意仕事に取り組めば、雇用条件どおりのお駄賃を僕が払ってあげるから、捕縛されるまで頑張るんだ……ナステック!




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜ナステックside〜




 うず高く積まれた食器の山を見て呆然としているうちに、部屋のドアが閉まり外へ出られなくなる。


 そして聞き覚えのある無機質な声が、失礼きわまりない言い方で指示を出してきた。



<−−− 貴方には、今からこの食器を洗ってもらいます。不衛生な格好で食器に触れられると雇用者が迷惑するので、クサイ身体を消毒し、服も着替えてください −−−>


「チッ。オリハルコンゴーレムがいるってことは……逆らったら、またどうせ殴り倒す気だろう? 今は時間が惜しいんだ。テメェ等の策には乗らないぜ!」



 メグミの卑怯さを何度も見てきた私は、苛立つ感情を抑えてアルコールのシャワーを浴び、作業服へと手を伸ばす。


「…………。なぜ、下女が着るようなメイド服しかないんだ? というか、靴下と下着はどこにある!?」



<−−− 予算が少ないため、最低限の作業服しか用意していません。靴下と下着は、それぞれ1万バイトで購入できます −−−>


「はぁ!? 砂漠の中っていう立地条件を考えても、それはボッタクリ過ぎだろ!? それにロルを無視して、独自通貨で徴収するんじゃねぇよ!!」



<−−− 被雇用者の態度に問題がある場合、雇用者は減給・体罰等の処分を与えることができます。30秒以内に着替えを終わらせ、定位置についてください −−−>


 くそっ……こんなの、人に対する扱いじゃねぇ。






 最低ノルマをこなすまで部屋から出られない以上、「逆らったところで殴られるだけ」と分かっている私は、恥辱を抑えてメイド服を着用。


 そして素足・ノーパンのまま、流し台の定められた位置に立った。



<−−− では新人教育を始めます。1時間以内に100個の食器を洗ってください。間に合わなかったり汚れが残っていた場合、ペナルティーを与えます −−−>


「グスッ……」



 メイドの格好をさせられた屈辱で涙が出るが、働かねばこのフロアを脱出できないため、桶にはられた水に皿をひたし手で汚れを落としていく。


「心なしか、ヌルヌルする気がしなくもないが……。見るからに貧相な、下民用の食器だからだろう」



 そして、スピード重視で食器を洗い続け……時間ギリギリではあるが、辛うじて100個のノルマをクリアした。


「ハァ……ハァ……。これだけ頑張っても、まだ試用期間だから50バイト……。クソッ! 仕事選びを間違えたぜ!」



 まぁ、誰にでも過ちはある。


 <食器洗いバイト>は最低就労時間で辞めて、もっと効率よく稼げる仕事を探そう。



<−−− 確認した結果、全ての食器に”油汚れ”が残っており、洗ったと言えるような状態ではありませんでした。ペナルティーとして100叩きを行います −−−>


「はあっ!? なんだよ”油汚れ”って! 私は時間いっぱいまで、懸命に食器を洗ウギャアアァァァッッッ!?」






<−−− ペナルティー終了。まともに洗えた食器が一つもなかったので、この時間の報酬はゼロとなります。次は”油汚れ”に気を付けて洗ってください −−−>


「グスッ……ウゥッ…………」



 容赦なく叩かれた尻をポーションで癒し、再び動き始めたタイマーを見て、泣きながら食器洗いを再開する。


 “油汚れ”などと言われても、水と油は混ざり合わない性質だから落ちるわけないし、次も「汚い! 不合格」と判定され殴られるのは明らかだ。



「どうする? スカベンジャースライムすら居ない状況で、どうやってこの危機を乗り越えれば……そうだ! 桶の水を火魔法で温めればいいんだ!」


 水と油は混ざり合わない性質だが、温度が上がるとその限りじゃない……と、座学の授業で習った憶えがある。



「これが答えだ。ファイヤーボール!!」


 絶望の中に一筋の光を見つけた私は、桶の水に向かって全力でファイヤーボールを打ち込み……桶ごと粉々にしてしまった。



<−−− 貴方の過失により損害が生じたので、被害額105万バイトを報酬から差し引きます。支払いが終わるまで次のフロアには進めません −−−>


「なにっ!? ちょっと待て、さすがにボッタクリが過ぎるぞ!! 庶民用の皿や桶など、1万ロルもしないはずだ。いい加減にしないとアァァァッッッ!?」



<−−− 被雇用者が”弁えない態度”をとったため、ペナルティーを与えます。賠償金は誰が返済してもいいルールなので、早急にお支払いください −−−>


 こんなの……<天国と地獄フロア>の、<大地獄ルーレット>より悪質じゃないか!


 他所の職場で働いているゴーレム共、早く独自通貨を稼いで私をここから解放してくれ!!

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
[一言] 30秒で初めて着るはずのメイド服に着替えたのだけは凄いと思いました。
[良い点] 鬼畜な恵君w 安定のバカップルw 全力のファイアーボールw [気になる点] 洗い物するのに、洗剤も石鹸も無いんだ(汗)もしかして、洗濯も洗剤が無いんじゃあ(汗)魔法に汚れを綺麗にするような…
[良い点]  うーん、このバカップル。 [一言]  ナステックが女装の似合わないブ男設定であれば、 このエピソードはより盛り上がりそうですね。
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