120話 元皇太子の最期
〜ロミオットside〜
配下の所有権を渡せという理不尽な要求を受け、「ふざけるな!」と突っぱねたら、突然体中からキモい虫がわいてきた。
「いっ、嫌だ!! そんなっ……私の身体がっ、うわああぁぁっっ!? やめろぉ。やめてくれぇぇぇぇ〜っ!!」
この害虫どもは今、明らかにメグミの意思で動いた!
コイツ……どこかのタイミングで、私の体内に<寄生型モンスター>を仕込んだのか!
「大人しく自分の負けを認め”所属変更の同意書”にサインすれば、考えてやらなくもないぞ。放っておいたら虫の餌になって死ぬけど……どうする?」
「ふぇぇ……私の負けっ、負けデズ〜!! 生涯メグミ様の下僕となるので、命だげは助けてぐだぁざい〜!!」
腹立たしいことこの上ないが、<寄生型モンスター>に身体を蝕まれたとあっては、降伏し媚びへつらうしかない。
体内から寄生虫を除去するまでの時間と、メグミが奴らに命令を出し私に致命傷を与えるまでの時間……どう考えても後者の方が早いからだ。
「オッケー! 虫に食われる最期は勘弁してやるよ」
私が恥も外聞も捨てて泣き叫んだことで、いい気分になったのだろう。
メグミは寄生虫による拷問を中止し、コチラへ近付いてきた。
分かっているなロミオット、今は耐えろ……ハイドンに蹂躙され虐げられたときと同じだ。
地に伏しメグミの靴を舐めてでも生き残って、体内の害虫を除去してから奴に噛み付く!
そして、奴の持つ全てを奪い……
「ミッション用の手形を取ったあと、ルーレットの臓器提供で……”心臓”をもらってお終いだ。良かったな、まだお前にも存在価値があって」
「えっ?」
心臓なんて取られたら死んでしまう!
この拘束を解いて私を下僕とし、ホムビッツとナステックを蹂躙するんじゃないのか?
「せっかくだから、最期に自分の腹わたを抜かれるところ……見ていきなよ。ウチの子達を回収しないといけないから、心臓以外もバラすけどね」
メグミが薄気味悪い笑みを浮かべそう呟くと、天井から大きな鏡が現れ、無残な姿となった私を映し出した。
<−−− メグミ様がお望みなので、地獄ルーレットの内容を書き換えました。”臓器提供ミッション”は、”肉体提供ミッション”となります −−−>
<−−− 配下一同が願った結果、ロミオットには”肉体提供ミッション”が課せられました。遺体の埋葬は行いませんので、あらかじめご了承ください −−−>
メグミの動きに合わせて、オリハルコンゴーレム共がミッションの内容を書き換え……無理やり、その箇所で<地獄ルーレット>を止める。
横で待機していたサーシャまで、汚れてもいい白衣を着て顔にシールドマスクを装着し、長くて美しい髪を一つに束ねて……
「ギャアアァァァッッッ!? 股が! 私の大事な<ピー>が!?」
「チッ! 気持ち悪い視線をサーシャに向けるんじゃねぇよ。お前が見ていいのは、内臓を抜かれて黒く澱んだ自分の腹だけだ」
たまたまサーシャの姿が目に入っただけなのに、メグミの野郎……私の大事な<ピー>を潰しやがった!
許せない。
出来る事ならここから逆転し、奴をボコボコにしたいところだが……それが無理でも、せめてレイスとなって取り付いてやる!
そして奴を「正常じゃない状態」へ誘い、ダンジョンごと自爆させて……
「…………ッッッツ!?」
自身の生が残りわずかなことを認め、私をコケにしたメグミに報復するため、レイスとなるべく自我を保とうとしていると……
奴が腹を切り裂くと同時に、例えようのない苦痛が私を襲った。
おかしい、どういう事だ!?
腹に風穴をあけられたり、ハイドンに身体を裂かれた経験はあるが……ここまでの痛みは感じなかったはず。
「へぇ〜、なるほど。聖魔法をまとった剣で肉体を切り裂いたら、傷が浅くても魔王は激痛を感じるんだ。僕自身も痛むのか、あとで試してみないとな」
コイツ、何を言ってやがる?
聖魔法なんて、勇者や聖女しか使えない代物……なんでメグミなんかが……。
「あぁ気になるのか。先祖に勇者がいた関係で、ホムビッツを屠ったとき覚醒したんだよ。だから安心しろ。アンデッド化しないよう浄化くらいはしてやる」
そんなっ、まさか下層民だったメグミが……勇者の末裔?
「メグミ君。所属替えした子達が、ロミオットの最期を見たがっているんだけど、モニター繋いでもいいかな? 虐げられた鬱憤を晴らしたいんだってさ」
「勿論いいよ。主人が無能すぎて苦労したんだし、”元凶の死”は確認したいよね。消化管引き抜いたらあっという間に死ぬから、それまでに繋いじゃって」
「は〜い♪」
サーシャの声とともに、モニターへ映し出されたかつての手駒からは……「助けられなかった謝罪」や「後悔の念」ではなく、私の死を喜ぶ言葉が聞こえる。
なぜ私は何もかも失い、「服従していたはずのモンスター」にまでバカにされているのだろう?
どうしてメグミばかりがいい思いをし、私が得るはずだったもの全てを奪っていく……?
私の……存在意義は…………
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






