118話 バカの配下は賢かった
ロミオットの対処をオリハルコンゴーレムに任せ……僕はサーシャと2人で、残された配下モンスターの様子を観察。
アイツもホムビッツと同じく「下の者をかえりみない主人」だったから、配下のモチベーションは”お察し状態”だ。
『ファイヤードラゴン様。あの方……どうします? 見なかった事にしますか?』
『助けに行くしかあるまい。見捨てたいのは山々だが、アレが死んだら我々まで道連れなのだぞ。ハァ……理不尽な世の中だ』
『でもいっそ、今の酷い状況から解放されるなら……。消えるまでここで残りの”干し肉”を食べ、穏やかな時間を満喫しませんか?』
『それも良いかもな。死後の魂は邪神の元へ帰り、新たな魔王の配下として送られると聞く。今回は大ハズレだったと諦め、次の魔王ガチャに賭けよう』
ホムビッツの時と大きく違う点は、魔王があまりに横暴すぎたためモンスターが疲弊し、「奴隷継続」より「道連れ死亡」を望んでいることか。
さり気なくエレベータートラップを22階層へ戻しても、誰一人ロミオットを助けに行かないし……ついには座って、干し肉を食べ始めてしまった。
モンスターの性格にも個体差はあるけど、生まれた時から無気力な奴なんてほぼいないので、これは「ロミオットが虐げ続けた結果」と言えるだろう。
こんな状態ではスカウトに応じるとも思えないけど、気の毒すぎるし救いの手はさし伸べるべきだな。
ダンジョンの「宝箱出現機能」を使い、彼らの目の前にスカウト状入りの宝箱を送り届ける。
はじめは気にも止めてもらえなかったが……15分ほど待っていると、手持ちの肉を食べ終えたモンスターが興味本位で開けてくれたよ。
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〜スカウト状〜
私は、あなた方の主人<ロミオット>を捕らえた魔王<メグミ>です。
ロミオットは遠からず死亡することになりますが、あなた方の存在まで消してしまうのは惜しいと思ったので、スカウト状を送りました。
我が<恵のダンジョン>……もしくは、同盟相手サーシャが治める<未設定のダンジョン>に、所属替えするつもりはありませんか?
「全員を幸せにする」と言えるほどの力はありませんが、「ロミオットより酷い扱い方はしない」とお約束します。
所属替えする意思のある方は、地図のルートに従ってA-1地点まで移動してください。
そこで”種族”と”紐付け番号”を確認したあと、正式に所属ダンジョンが切り替わるまで待機してもらいます。
*追伸*
最期までロミオットの元に残る方へ。
冥福を祈って、手向けの”唐揚げ”を送ります。
ご自由にお食べください。
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僕のスカウト状を読んだファイヤーフォックスは、その内容を仲間にも共有し、所属替えするかどうかの話し合いが始まった。
知能の低いモンスターが、意味を把握せず”唐揚げ”を食べてしまったので、現物は残っていないけど……情けをかけた事が評価されたようだ。
『どうする? 魔王メグミに鞍替えするか?』
『ここの魔王は悪くないぞ。78期の中で最下位スタートだったらしいけど……今じゃ同盟相手と並んで、トップを爆走している。先は明るいだろう』
『だけど、またクズ魔王だったら怖くないか? 誇り高く戦って死ぬならいいが、先輩モンスターにこき使われて過労死……とかゴメンだぜ』
『その気持ちも分からなくはないが、死んだところで魔王ガチャになるだけだからなぁ〜。それなら当たる確率が高い、メグミとサーシャに仕える方がいい』
本能のままに戦う種が多い<火系モンスター>が、打算的な話し合いをしている時点で、ロミオットの罪深さがよく分かるけど……
そのせいで「次もハズレだったら……」という恐れを抱き、僕に傾き始めた者も多い。
良いのか悪いのか分からないけど、”唐揚げ”くらいなら毎日食べさせてあげるから、お試し感覚でコッチへおいで。
もしウチでも嫌な思いをしたら、そのとき自刃したらいいのであって……今決める必要はないんだよ。
『ふぅ〜、決めた。俺はA-1地点へ向かう! ここに所属しているモンスターを見る限り、メグミは当たりの部類だ。今より悪くなることはねぇよ』
『そうだな。サーシャって魔王も、78期の奴らが掲示板でボコボコに叩いているんだろ? クズが集まって攻撃してるって事は、たぶん良い奴だ』
『肉もくれたしな! 食えなかったけど、初めて魔王から”個”を認められたというか……メグミの策略だったとしても嬉しい』
『くくっ、そうだな。奴の配下になって手柄を立てたら、また”唐揚げ”貰えるかもしれねぇぞ』
『魔王ガチャで配属されるときは、初期ステータスからやり直すことになる。当然、今までの記憶も消去だ! それに比べれば、”所属替え”の方がマシだろ』
『あぁ。サラマンダーの意見に賛成。魔王メグミ・魔王サーシャがクソだった時は、自決して次のガチャを引けばいいだけ。少なくとも二人は自立している』
『ですね。この時期に死ぬと、魔王ガチャで79期に振られる可能性が高くなります。新人は8割以上淘汰されるから、今回と同じ目に遭いやすいかと』
『ハイドンやアリスの配下になって、頭下げ続けるのもムカつくしな。少なくとも……連中が淘汰されるまでは、命を保ったまま静観したい』
スカウトを送ってから30分ほど話し合ったあと、(打算的すぎる気もするが)全員の意見をまとめた幹部格は……
状況を飲み込めていない低ランクモンスターにも事情を説明し、それでも理解できなかった者は、引っ掴んでA-1地点へ連れて行った。
「ここまで自立されちゃうと悲しいな。ねぇサーシャ……正式な配下になったら、彼らにいっぱい愛情を注ごうね」
「もちろん! ある意味”私達の子供”みたいなもんだし、逝くときに後悔しない生活をさせてあげよう」
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






