112話 下の者にも意思はある
ホムビッツを助けるため自ら罠へ飛び込んだモンスター達を、スライダーの流水ルートを切り替えて、一体ずつ別の小部屋へ閉じ込める。
そして「高等学舎レベルの問題を時間内に解けなければ、汚水が部屋を満たして溺死」という状況へ追い込み……
「どちらが上か」を本能に刻み込ませてから、モニター経由で彼らにスカウトの言葉をかけた。
<−−− 降参したモンスターの一例 −−−>
〜グリフォン〜
ランク:S
維持費:20000ポイント/日
詳細:鷹の上半身とライオンの下半身を持つ獣。風魔法を自在に使いこなせるだけでなく、鋭い爪とクチバシで敵を屠ることもできる。
〜シルフィー〜
ランク:S
維持費:30000ポイント/日
詳細:風を司る大精霊。高い戦闘力を持つだけでなく、風属性のモンスターをサポートするのも得意。
〜ワイバーン〜
ランク:A
維持費:5000ポイント/日
詳細:下位の竜種。強靭なアゴと尾を持ち、空から襲いかかって敵を食い殺す。肉が美味いことでも知られており、金持ちによる取り合いが起こることもある。
〜コピースライム〜
ランク:B
維持費:2000ポイント/日
詳細:Bランク以下のモンスターと同じ姿をとり、その能力を真似することができる。変身していられるのは1日10時間程度。
〜パンドラミミック〜
ランク:B
維持費:2000ポイント/日
詳細:優れた収納力を持つ箱型モンスター。内部に入れた物は、時間経過のない状態で保管できる。
〜リッチ〜
ランク:S
維持費:25000ポイント/日
詳細:亡国の魔術師であり、数多のアンデッドを従えることができる。魂が劣化することはなく、酷い外傷を受けない限り生き続ける。
〜デス・チャリオット〜
ランク:A
維持費:4000ポイント/日
詳細:戦車に魂が宿ったアンデッド。優れた収納力を持ち、異空間となっている車内に街一つ収めることもできる。生物を収容することも可能。
案の定というか……ホムビッツは<統率>ギフトのアドバンテージを全く活かせず、ほとんどの部下に見放されており……
知性のあるモンスターは「裏切り」を打診した瞬間、これ幸いと「主人の乗り換え」に応じた。
中には……交渉が成立して「嬉し涙」を流す者や、鬼気迫る表情で「配下にして!」と懇願してきた者までおり……
同業者として「どれだけコキ使ったらこうなるんだ?」と、頭が痛くなったほどだよ。
知能の低いモンスターへ、コチラの意思を伝えるのには苦労したが……高ランクの子達が通訳してくれた途端、アッサリと僕らの味方に。
「もう疲れた」と死を希望した子もいるので、全員とはいかなかったけど、最終的に「声をかけた者」のうち9割を寝返らせることができたよ。
『グスッ……俺たちはもう自由なんだ! 意味不明な命令でコキ使われたり、クズを守って死なずにすむ!』
『あぁ、そうだな! 命が惜しいわけじゃないけど、あんな奴を守って死ぬのは虚しすぎる。主人を……仲間を守るために、誇りを持って戦いたいんだよ』
『<幸運のネックレス>って、本当に効果あったんだな! コレをくれた事に関してだけは、ホムビッツ様とハイドン様に感謝だ』
『ここの魔王様はモンスターの扱いが丁寧だ。上の階層で戦った奴らも、満足そうに散っていったし……俺たちも充実した”第二の生”をおくれるだろう』
説得に応じたモンスター達は集団牢へ移り、糞尿で汚れた身体を洗いながら、互いの「栄転?」を喜んでいる。
何体も集まり、牢を蹴破れる状況となったにも関わらず……僕とサーシャを裏切り、1階層上にいるホムビッツを助けようと動く者はいない。
100%アイツの自業自得だし、同情する気も起きないけど……土壇場で寝返られるって惨めだよなぁ〜。
僕もピンチのときに部下から見放されぬよう、モンスター達が「命を懸けたい」と思えるような、ダンジョン運営をしていかないと!
末端まで合わせると2000体を超えるモンスターが降参したので、彼らの希望も聞きながら……<僕>と<サーシャ>、どちらを主人にするか振り分ける。
ホムビッツはサーシャと同じ<風属性>ゆえ、モンスターも「サーシャ自身で買えるモノ」が多く、<未設定のダンジョン>へ振り分ける旨味は少ない。
それゆえ一部の特殊な子達をのぞき、大半のモンスターは<恵のダンジョン>所属となったよ。
ロミオットとナステックの下にも「気の毒なモンスター」は沢山おり、彼らもスカウトすれば裏切りそうなので……
<ゴーレムマスター>になる予定の彼女には、ナステック配下のゴーレムを引き取ってもらうつもりだ。
火属性のロミオット配下は、どちらも「喉から手が出るほど欲しい」モンスターなので、半々くらいの戦力になるよう振り分けると思う。
「メグミ様・サーシャ様、ホムビッツの拘束が完了しました! 汚物の食べ過ぎで死ぬ兆候が出ているため、早めにお越しください」
「執事君ありがとう。今からソッチへ向かうよ」
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






