111話 有能なボスの元で働きたい
<マボロ虫>による思考誘導と、詐欺師の常套文句である「これはチャンスです。見つけた貴方は運がいい!」を組み合わせた結果……
元々オツムが弱かったホムビッツは、護衛の忠告があったにも関わらずアッサリと罠にかかり、糞尿とともに26階層へ流されていった。
『うおぉぉ〜っっ!?』
『『『ホムビッツ様〜!!』』』
「危険かもしれない」という忠告を聞き入れ、護衛に順番を譲っておけば致命傷にはならなかったのに……バカな奴。
クラスメイト全員で魔王転生しなければ、コイツが一国の宰相になっていたかもしれないなんて……今更ながらにゾッとするよ。
「基準値を超えたな。これ以上流すと窒息死するから、一旦”汚物”の量を戻してくれ。あと、”ルートの切り替え”も忘れずに」
「カシコマリマシタ」
ホムビッツが「救助不可能な深さまで落ちた」のを確認したのち、現場のゴーレムに、「汚物タンク」の弁を締めるよう指示を出すオートマタ。
あまりに大量のブツを流してしまうと、配下のモンスターをポイント化する前に魔王が死んでしまうので、今回は繊細なコントロールが必要だ。
「メグミ様。ターゲットが分岐点Aを通過したので、今後は”27階層行き”となるようルートを切り替えました。現在のところ、特に問題は起きていません」
「執事君ありがとう。護衛が後追いするかもしれないから、引き続きスライダーの入り口を監視してくれ」
「かしこまりました」
このスライダーを作るとき特にこだわったのが、A・B・C・D・E地点の分岐路を用意し、それを手動レバーで切り替えられるようにした点。
そうする事で、ターゲットの到着地点を32カ所に振り分けられ……優秀な護衛を、大将から遠ざけられるようになった。
「22階層まで潜らせるケース」自体が珍しいし、今後使う事があるかも分からないけど、強敵は各個撃破するに限るからね。
勝てそうな敵を「有利な戦場」と「数の暴力」でタコ殴りにし、ポイントや経験値をガッツリ頂いてから、無能魔王を屠らせてもらうよ。
そんなことを考えていると、大将を失った護衛たちがため息まじりに愚痴り始めた。
『ハァ〜。このままだと、<王佐のダンジョン>所属である俺たちの未来は死だ。気が進まないが他に手はない。この穴に落ちて助けに向かおう』
『それしか無いよな。あ〜クソッ! 俺だって出来ることなら、有能な魔王の下で働きたかったぜ! 生まれる前に、<幸運のネックレス>が欲しかった』
『たしかに。ホムビッツ様の配下として生を受けたのが、俺たち最大の不運だもんな。ぶっちゃけ、ハイドンの手下にリンチされる方が100倍マシ』
『『だよなぁ。ハァ〜』』
なんというか……本当にごもっともだと思うし、「お気の毒さま」としか言いようがない。
まともなダンジョンに生まれていたら、一騎当千のSランクモンスターとして活躍できただろうに、トップがこの有様じゃあね。
『俺たちの存在が消えてないって事は、ホムビッツ様もまだ生きているという証拠。他の配下にも”後追い”するよう指示を送り、仲間全員で助けに向かうぞ』
『うむ。”助けろ”という連絡が来ないのは、まだ急場を凌げていないからだろう。急いで乗り込むべきだ』
『ロミオット様・ナステック様には知らせるなよ! あの二人はホムビッツ様を殺し、報酬を独占したいと考えている。わざわざ”弱み”を晒す必要はない』
『もちろん教えないさ。ふぅ〜。連絡も終わったし……何割生き残れるか分からないけど、逝くか……』
『『おぉっ!』』
予想したとおり「魔王が死んだら道連れになる」護衛たちは、部下へトラップの場所を伝えたあと、開きっぱなしのスライダーに飛び込んだ。
しかし……悲壮感たっぷりに愚痴る彼らを見ていたら、(アレの配下として)死なせるのは可哀想になってきたな。
「ねぇメグミ君。”生き残りたそうな子”は私達でスカウトする? 彼らは”運が悪かった”だけだし、気の毒になってきちゃって」
「やっぱりサーシャもそう思う? 僕も”可哀想だな〜”と思っていたんだ」
あまりに報われない配下一同の姿を見て、サーシャも僕と同じことを感じたみたい。
モンスターの譲渡は、「所属ダンジョンの魔王が承認すれば」認められるから……ホムビッツを殺す前に、「配下の移籍手続き」を済ませよう!
僕らのダンジョンへ所有権が移れば、「ホムビッツの死」とともに彼らが消滅する事はなくなるし、コチラへ危害を加えることも出来なくなる。
ハイドンや奴の配下が、特殊なギフトで彼らを利用する可能性もあるから、「採用後すぐに重用」って訳にはいかないけど……
状況がある程度落ち着いたあと、僕らの配下として「新たな生」を歩んでもらうのもアリだと思うよ。
「じゃあ……”上司替え”を望んでいる子にモニター経由で交渉して、拒否されたら排除。スカウトを受けた子は、一体ずつ別の牢屋へ移動させる方針で」
「了解! 今の経済状況なら、維持コストを心配する必要もないし……ガンガン交渉していくね♪」
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






