109話 宿主を惑わせる悪魔の虫
<恵のダンジョン>にそこまで慣れていないサーシャと、<三馬鹿>抹殺作戦の指揮を務める予定のオートマタへ、大まかな流れを説明。
誰かがミスすると余計な時間がかかり、狙いどおりにいかなくなる可能性も高くなるため、誤解がないよう丁寧にイメージを共有するよ。
「という訳で……<手形フロア>で走り回った結果、ロミオット・ホムビッツ・ナステックの現在地は大きく離れている。今なら、誰からでも狙える状況だ」
「メグミ君、まずは<統率ギフト>を持つホムビッツから狙うんだよね?」
「サーシャ正解! 危機感をおぼえて三人まとまられたとき、一番厄介なのがホムビッツの<統率ギフト>だからね。念のため最初に消す」
サーシャがギフトを奪う予定のナステックは、より深い階層へ落として直接殺すつもりだから、敵方の戦力が少なくなる最後。
<火魔法の才>とかいう、クソの役にも立たないギフトを選んだロミオットは、消去法で2番目だ。
「死亡した魔王は、その時点でランキングから除外される。つまり<新人狩り>にも知られるから、ホムビッツを殺したあとは時間との勝負だ! いいね?」
「「「「「「「「はい」」」」」」」」
サーシャが戦力補充で保有ポイントを全て使ったため、僕らの<殺戮ランキング>が上がった件については、「消耗戦を制した」と掲示板で囁かれている。
だけど……<新人狩り>とサーザンド王国は、なんらかの形で繋がっている可能性が高いので、奴らへ正しい情報が伝わるのも時間の問題だろう。
それまでには<三馬鹿>全員を始末し、奴らの親玉であるハイドンの選択肢も、せばめる策を打ちたいものだ。
「ホムビッツとその配下は、現在<手形フロア>のD-3地点にいる。近くにある分断トラップは、26階層まで落ちる<汚物スライダー>だ」
ちなみに<手形フロア>は、時間稼ぎと分断に特化した2階層連結型の巨大迷路だよ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜手形フロア〜
ツルツルの石でできた床に油がしかれ、飛行できぬよう障害物があちこちから突き出ている、階段やトラップも豊富な巨大迷路。
フロア内350ヶ所にある認証装置のうち300ヶ所で、自分の手形(モンスターの場合は体の一部)を認証後……
解放された<試練の扉>を3時間以内に見つけ、手形を認証させることで次のフロアへ進める。
なお……このフロアで認証されていない個体は、23階層以降<異物>と見なされ個室等に入れないルールとなっているため……
特殊なギフト持ちの異空間へ隠れたり、部下任せにして認証作業を逃れることはできない。
また認証装置にはミッション付随の物もあり、<変顔>や<スクワット100回>といった簡単なものから、<採血3L>といったヤバイものまであり……
手形認証後にハズレのミッションが表示されて、それを拒否すると、積みあげてきた認証カウントがゼロに戻る。
認証装置は一人が使用すると10分間使えなくなるうえ、不規則に壁の位置が代わり迷路のマッピングもできないので、人海戦術は使えない。
このフロアを突破するには、自らの足で点在する認証装置を探し……一つ一つミッションをこなして、地道に「手形の数」を増やすしかないのだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
<恵のダンジョン>を潰しにくる78期の魔王や、主力となる高ランクモンスターが、<幸運系アイテム>を使ってくるのは明白だったので……
あらかじめ「身体に直接害を及ぼさない=ハズレとは言えない」認証装置を作ることで……<大地獄ルーレット>同様、アイテムを逆手に取れるように。
そして「ダンジョンのオブジェクトじゃない壁」を、後から手動ではめ込むことで、<分断トラップ付き認証装置>を隠し……
任意のタイミングで壁を取り払って、敵をハメられる構造にした。
「<大地獄ルーレット>で植えつけた寄生型モンスターは、すでに<三馬鹿>の体内で孵化している。攻撃準備ができ次第、ホムビッツの意識を操作するぞ」
「「「「「「「「はい」」」」」」」」
今回は、脳に寄生するタイプのモンスター<マボロ虫>を使って、ホムビッツの思考を一時的に狂わせ……分断トラップがある道へ誘導する。
そして<幸運系アイテム>を過信し、「どの認証装置も一番最初に使う」自己中心的なあの男を、汚物スライダーで地獄送りにするよ。
マボロ虫
ランク:D
維持費:50ポイント/日
詳細:体長2cmほどの小さな寄生虫。戦闘力はほとんどないが、宿主の脳に寄生して思考を操ることがあるため注意が必要。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






