108話 討伐軍のお掃除完了!
モスキートを突撃させ、ゴーレムの包囲網を徐々に狭めた段階で、感知タイプの兵士や指揮官は「本気の襲撃」だと気付き騒ぎ始めたが……
末端の連中が大騒ぎしており統率もヘッタクレもない状態なので、時すでに遅し!
周囲をそこそこ強いゴーレムに覆われ、「プ〜ン♪」という音で集中力を削がれた兵士は、次々と殺され数を減らしている。
「E-2地点が、人間に突破されそうだ。D-3から4体応援にまわれ!」
「SG412号、足元の人間生きているぞ。トドメはきちんと刺すように」
コアルームの隣にある司令室では、ダンジョン内限定の<意思疎通機能>を利用して、オートマタが現場へ指示を送っている。
個体数の少ないオートマタを補助するため、監視役のフェアリーがモニターに映った場所を隅々まで調べ、手薄な場所を報告してくれるから助かるよ。
『貴様ら、私の指示が聞こえんのか! 今すぐ三人一組となり、ゴーレムを一体ずつ始末しろ……と言っているだろう!』
『ああぁぁっ! 高給貰ってるくせに無能な指揮官サマよぉ、早くまともな指示出せや! このままじゃ、俺たち全滅しちまうぞ!!』
命令が届かず指示系統が乱れ「烏合の衆」になっている討伐軍を見ると、「拠点を守る魔王って有利だなぁ」と改めて思わされる。
あくまでも一定ポイント稼げるまで、生き残られたらの話だけど……配下のモンスターとリアルタイムで意思疎通できるって、替えのきかない利点だよね。
僕とサーシャの戦力を合わせ、奇襲攻撃をかけてから3時間……地上に5000人以上いた討伐軍は壊滅状態となった。
戦いが始まって早々に戦線離脱したり、本能のまま<天国と地獄フロア>へ逃げ込んだ連中はまだ生きているけど……
所在地は「司令室のモニター」で丸見えなので、3km以上遠くへ逃げないかぎり、ゴーレム部隊の餌食となるのは時間の問題だ。
奇襲をかけた直後は、虫一匹いない<結界付きテント>の中で護衛をこき使うだけだった”オバサン聖女”も……
あちこち噛まれすぎて自暴自棄になった兵士に、「テメェも道連れだ!」とテントを破壊され、結界を失ってモスキートの餌食に。
その様子を見ていたオートマタが、「オバサン聖女の血を吸い出せ!」と命じたものだから……
火魔法を使った必死の抵抗もむなしく、肌が見えなくなるくらい多くの蚊にかまれ、全身を腫れ上がらせて息絶えたよ。
長く修行しているだけあって、火魔法の腕は中々だったし……絶望的な状況になっても最期まで元気に喚いていたから、生命力は強かったのだろう。
聖女として囲われず鍛えていれば、「一人で生きていけるくらい屈強な冒険者」になれたかもしれないね。
「う〜ん……0階層のゴーレムは、そろそろ撤収してもよさそうだな。殺戮ポイントが一気に増えたから、魔王界隈でネタにされるのも時間の問題だし」
「そうだね。残党狩りと物資の接収は私がやるから、メグミ君はダンジョン内部にいる討伐軍の殲滅をおねがい!」
「了解! フロア移動用の"転移陣"、使わせてもらうよ」
残党狩りと後処理をサーシャへ任せた僕は、殺戮ポイントを稼ぐために、ゴーレムを使ってダンジョン攻略中の人間を狙う。
<天国と地獄フロア>でリタイアされ、地上へ逃げられるとサーシャの配下に迷惑がかかるから……
地下との境目にミスリルゴーレムを3体配置し、敵の逃げ道を塞いだあと、戦いやすいフロアから順番に狩りを行った。
<未設定のダンジョン>には、”浮雲フロア”のような「ゴーレムが自滅しちゃう階層」もあるため、そういう所にいる敵は移動するまで倒せなかったけど……
“ダンジョン内での動きやすさ”は、<モニター>と<業務用ルート>を使える僕らが圧倒的に有利だからね。
地上にいるはずの上司と連絡が取れなくなり、焦る連中を尻目に……好きな階層へ自由に移動して、標的を囲み”数の暴力”で撃破!
相性の悪い魔法使いやギフト持ちに、700体近くゴーレムを削られたものの……翌朝には殆どの敵を狩り終えたよ。
「生き残っていた討伐軍10000人のうち、今回の襲撃でおよそ9800人が死亡。生き残った連中も、ほとんどはダンジョン内で餓死するはずだ」
「メグミ君、お疲れさま〜♪ コッチも、地上の残党狩り完了! 遠くへ逃げた敵を4人ほど取り逃がしちゃったけど、おおむね上手くいったと思う」
「ありがとう。物資の接収・殺戮ポイントの確保・聖女の殺害……この奇襲の目的はすべて達成できた! 頑張って戦ってくれた、モンスター達に感謝だな」
「うん。黙祷を捧げよう」
最前線で命果てるまで戦ってくれた、ゴーレムやモスキート達。
君達が頑張ってくれたお陰で、僕らは大きな成果を残せたし……新たな”成長の糧”を得られたよ。
僕らの力になってくれてありがとう。
数分間の黙祷を捧げたのち、僕らは<未設定のダンジョン>から<恵のダンジョン>へ移動し、ロミオット達を狩るべく準備を開始。
サーシャが<聖なる祈り>から解放されたことで、戦死したモンスターの補充もできたし……「徹夜明けで眠いこと」以外完璧な状態だと思う。
「ターゲットの3人は、未だに<手形フロア>でヒーヒー言っているな。足止め用に新設したフロアとはいえ、手際悪すぎだろ」
「あはは。まぁ……あのフロアは、自分で動かなきゃ前へ進めないうえ”足腰使う構造”だからね。お坊ちゃん育ちの彼らには厳しいと思うよ」
たしかにサーシャの言うとおりだが、人間時代にパパから貰ったお小遣いで買い揃えた、自慢の高ステータスはどこへ行ったのだろう?
敵が弱い分には歓迎だけど……「コスパ大好き魔王」の僕は、奴らの行動を見るたびズッコケそうになるんだ。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






