突破不能の凶悪ダンジョン
【閲覧注意!】
この作品には、不快害虫が跳梁跋扈しています!
同時に腐敗臭漂う、グロ存在も確認されています!
前半のナレーションに騙されず、回避の判断を間違えないようご注意下さい!
ここは剣と魔法とゲームステータスの世界。
レベル制で、よく分からない現象により能力が数値化され、その数値もレベルで上昇する超人達が住まう世界。
そんな世界にはダンジョンがある。
あの5階層ごとに地上と往復できる転送魔法陣があったり、ダンジョンに挑戦した人類やダンジョンに巣食う魔物が倒されると、ドロップ品と呼ばれる残骸を遺して消えたり。
魔物はどこからか忽然と現れて、狩り尽くせなかったり。 ダンジョン内は危険ながら、資源の宝庫と認識されていたり。
内部には攻略を阻む罠もあり、油断すると命を取られる危険性に満ちた場所であったり。
魔物達の大暴走が発生して、普段はダンジョンから出てこない魔物が、大量に外へ出て多大な被害を生む悲劇が起きたり。
こう言ったダンジョンは世界に点在し、時には争いの種となりつつも、人類は上手くこれと付き合ってきた。
そのダンジョンには、近隣国を含めて驚くほど高い知名度を持つモノが存在した。
2つ存在する二つ名は特に定着しており、それを出すだけで町以上の規模を持つ場所なら通じる。
その内一つは曰く、食料庫ダンジョンと。
これは伊達ではない。
人類が確認している、地下20階層の内10層までの様子で付けられた二つ名。
そこに出る魔物はどれも見慣れたモノばかり。
人類が食べるあらゆるモノが魔物として詰め込まれている。
牛・豚・鶏・魚・海藻・野菜・果物・穀物
副産物で、動物の毛・皮・鶏の羽根等も。
ありとあらゆるモノが、世界のありとあらゆる所に在る“魔”力の“素”……魔素に影響を受けて、攻撃的な魔物化したモノが。
この魔素によって、より人類の体に馴染む味となり、より美味しいとされる変化が起きる。
ボスが出てくる10層の食材は特別珍重されて、王家もパーティー等を開く際には定番の食材として愛用するほど。
それらを大量に、安定して入手出来るこのダンジョンだ。 食料庫と呼ばれるのも当然である。
おまけにダンジョンの常識であるスタンピードが今まで一度も記録を見る限り起きておらず、そんな意味でも優良なダンジョン視されている。
お陰でこのダンジョン周辺では食料生産は下火である。 生産せずとも美味しい食べ物の数々が得られるので。
だがダンジョンだけで食料の全部を賄える量はないため、全く生産していない訳ではない。
ないのだが、やはり生産量は馬鹿に出来ない超人気ダンジョンである。
こんな人類に都合の良いダンジョンが有って良いのか?
良いんです。
…………と、心の底から言いたいのだが、やはり美味しい話には裏がある。
人類が到達・確認したのは20層と言ったはず。
ここまでの情報は、10層までの話。
11層以降を知っている者は、誰ひとりとして口を開かない。
最大20層まで到達している者もいるのだ。
それを武勇伝として語らないのはおかしいだろう?
でも、その到達者をはじめとして、誰も語らない。 自慢もしない。
ダンジョンへの入場を管理している組織は、探索は10層までを強く強く推奨している。
生きて戻ってきた連中に問い詰めても、みな一様に青い顔をして力無く首を横にゆっくり振るのみ。
なぜか?
~~~~~~
《11層以降、何度見ても最悪過ぎませんか?》
“この世界に転生させた”女神がダンジョンの主へ、ダンジョン内を監視するモニター越しに、そのモニターを乗っ取り問いかける。
「そうですか? 女神様がここで出来るだけ長く生き続ける事に意味があると、そう仰っていたじゃないですか」
《それはそうですけど……》
女神とそんなやりとりをしているのは、特徴らしい特徴がない、日本では地味な女性。
平均よりわずかに低い身長と黒目、目が隠れる長い前髪と腰に届かない位の後ろ髪も黒い。
感情をあまり感じない様子は、可愛らしいお人形のよう。
その女性は地球で不幸にみまわれ、命を落とした所にこの女神から勧誘された存在。
女神の望む地点でダンジョンを運営してほしい。
構造は死亡率の高い危ないダンジョンでも、非殺傷ダンジョンでもいい。
寿命の無い肉体で、とにかく出来るだけ長く、その地に居てほしい。
その望みに応じてやってきた魂。
《それはそうなんですけど、11~20層まで全部ゴk……Gの魔物ってどんな神経をしてるんですかねぇ!?》
見た目はとても綺麗で完璧な美人だが、どことなくポンコツ臭を漂わせる女神の言葉にも、女性はどこ吹く風。
「ダンジョンの主が身を守るなら、ダンジョンの挑戦者を追い払う手段が必要でしょ?」
女性は言う。
ダンジョンの基本的な役割として、人類にダンジョンへ入ってもらう理由となる部分は10層までに集めた、と。
ダンジョン運営には、俗に言うダンジョンポイントが欠かせない。
そのDPを得るには、ダンジョンに挑戦者を招き入れる必要がある。
その挑戦者から自然に漏れでるナニカがDPに変換されるのだ。
「現在ここは30層と、私のプライベート空間。 攻略者としての名誉の為や、ダンジョンの出す利益の為に主と成り代わるべく命を狙うものから身を守るなら、この位は必要なんですよ」
身を守る方法として、心身共に追い詰めて、二度と変な野心を持たぬよう叩き潰す手段を選んだだけだ、と。
この言い分はとても真っ当なものである。
あるのだが、言われた女神は納得できずに渋い顔。
《だからって、やり過ぎだと思いませんか? Gの魔物を精製するコストが低くて沢山造れるからって、各層ごとに10万匹を越えるGって!》
「費用対効果は抜群じゃないですか」
《いやいや!! アレを見続けて何ともないの!? カサカサワサワサ動き続けるアレを見続けたら、普通は気持ち悪くなってくるでしょお!?》
「それで追い払うつもりなんですから、承知の上ですよ」
《なにこの子!! もしかして精神が鋼より堅いもので出来てるの!?》
ちなみに、11~18層で出て来るGの種類を少し挙げてみよう。
30㌢~2㍍サイズのコックローチ
雑草を背負ったヒュージコックローチ
カラがむけたヒュージコックローチ
毒持ちコックローチ
病毒を運ぶコックローチ
麻痺持ちコックローチ
半透明なコックローチ
卵持ちコックローチ
うるさいコックローチ
悪臭を出すコックローチ
食料盗み食いコックローチ
綺麗好きなコックローチ等々。
これだけで、良くわかるだろう。
人類のあらゆる感覚に訴えかけ、やる気を削ぐ選び方。
もし魔法の冷気で動きを鈍らせている間に21層まで通り抜けようとしても、最後まで魔法を使い続けられる魔力を持っている者なんて、まず居ない。
いつか魔力切れをおこし、囲まれるだろう。
肉体的にも精神的にも、本気で殺しに来ている。
《19層以降なんて本当に酷いし!!》
こんなのでもめげずに踏破しても、19層がまた酷い。
層がひとつの大きな部屋になっていて、20層への階段は頭から尻までの全長が4~5㍍はあろうジャイアントコックローチが門番役をしている。
もちろん今までのコックローチ勢揃いでお出迎えされ、逃げ場無しの地獄絵図。
どれだけ心が強くても、こんな惨状を見たら気が遠くなるだろう。
「こうだからこそ撃退率100%の、難攻不落ダンジョンです」
事もなげに言う女性からは、妙な威圧感を伴ったオーラが放たれている。
ヒトはこれを、自信と呼ぶ。
《それでも20層まで到達して、待ち構えるボスを見て逃げだすのは、誰も否定できませんて》
対魔法ジャイアントコックローチと、対物理流体金属ジャイアントコックローチ。
魔法に滅法強いジャイアントコックローチと、物理攻撃に滅法強いジャイアントコックローチ。
それがそれぞれ5体ずつ。
しかもしかも、その2種を足して2で割った様な、どっちにもソコソコ強い激つよジャイアントコックローチが1体。
ダンジョンの主による心尽くしの心折設計。
独特な質感で黒光りをし、頭に良く動く2本の触角を備え、奇妙なリズムでカサカサと縦横無尽に駆け回る。
そんなのを10層連続で見せつける。
口にするのも憚られる、悪魔がごとき所業。
過去に20層へ到達した者は、このボスを見て残らず逃げ出した。
ボスの層の転移魔法陣はボスを倒した向こうに有るので、今まで挑戦者の誰もが20層にある魔法陣を使用していない。
だが、そんな設計をしても女性は悪びれない。
「この世にはどうせ、人知を越えた化け物と呼ばれかねない能力持ちが居るんでしょ? そんなのに力で対抗するのは無駄。 私は死にたくないもの。 だったら挑戦したくないと思わせる構造を用意するのが、最善じゃない」
《それはそうなんですけどぉ……》
女性に指摘され、人差し指同士をつんつんつつき合わせる女神に、女性が話を続ける。
「そんな精神攻撃でも耐えきって進む奴用に21~30層がある。 まあ誰も来ないから、実際に通用するか不安で仕方ないけど」
さっきの自信は薄まるが、階層を語る内容はとても酷い。
「30層のボス層まで、全部迷路状の迷宮ばかりで攻略に時間がかかり、出て来る魔物はアンデッドとゴーレム系列」
つまりここでも視覚効果を狙っている。
虫が効かないなら、今度はグロ(テスク表現)だと。
見てキツい、匂いもキツい。
特にゾンビの選定は完全に殺しに来ている。
人類の肌や呼吸器を爛れさせ、身に付ける悉くを腐らせ錆びさせるガスを放出するゾンビばかり。
21~30層の間だけに充満するよう作られた構造により、20層クリア直後に下へおりる階段から様子をうかがっても、その空気がバレない心ばかり(集中攻撃)の設計。
それが大量に配置されている。
「アンデッド系のドロップ価値は低い物がほとんど。
戦う価値が無いのに、戦わなければ進めない苦痛。
それに道幅とあまり差がないゴーレム系を交ぜて、通せんぼによる精神的威圧感と、硬い物を殴る反動からの痛みや武器の疲労・破壊も狙う。
更にゴーレム系は岩・鉄・銅・銀・銀等の種類で、特に金属ゴーレムのドロップは鉱石やインゴットだから、金銭的な価値で持ち帰りたくなる気分を煽る。
だがそれは、鉱石類の重さにスタミナを奪われる罠」
そして一番の問題。
《21層から30層のボスまでたどり着くのに、人類の能力では半月位かかりますよね?》
「そうです。 物を無限に収納できるスキルが有って、そこに食料の用意がなければ、まず飢えるのです」
11~19層には、食料を盗み食いするのがいて、余計に消耗する。
20層攻略後に一度帰って、補充してから魔法陣に乗って再挑戦したって、半月分の用意が無ければ攻略不可能だ。
なにせアンデッドやゴーレムのドロップ品に、食料は無い。
ゾンビ系の落とす腐った肉でも食べるぜ! と言って食べたところで、腹を壊したり消化器を爛れさせるのがオチだ。
さらに階層は迷路の壁ばかりで、その壁はこう言ったファンタジーダンジョン御用達である、破壊不可能な無敵壁だ。
壁を壊してショートカット! なんて許されない。
《そもそもとして、大量のアンデッドが居るせいで充満している、本気で危険なガスの中で食べ物なんて食べられないんじゃないでしょうか?》
半月分の食料を用意しても、それを食べる気にもなれなければ、食料が無いのも同然。
散々(腐った)肉を見せられてきては、相当な場数を踏んできているベテランでなければ、携行食の(乾燥)肉なんて食べる気にもならないだろう。
もしかしたら戦闘中に、飛び散った腐った肉の欠片が水筒にくっついて、飲み水が汚染されるかもしれない。
腹が減っては戦はできぬ。
水が無ければ命は保てぬ。
魔法で生み出す水だけで空腹を凌いでも、それで力は入るのか? 無理でしょ。
となれば、当然ながらまともな攻略など出来ようもない。
「それもありますね」
我が意を得たり。 そんな満足顔で、女性が頷く。
「つまりこんなダンジョンを完全に攻略せず、1~10層で美味しいものを狩りまくった方が、色々美味しいと言う結論となる訳です。
無限収納スキルを持った化け物だって、こんなのの攻略なんて嫌になるでしょう。
なので、これならダンジョンの主として倒されずに済むはず」
心と体を徹底的に殺しに来ているダンジョンだと改めて認識した女神が、小さく身震いする。
《確かに生きて欲しいのですが、これはやり過ぎだと思いますよ?》
ぽつりと呟いた女神の言葉を、女性は華麗にスルーした。
10層までは食の楽園で、それより下は飢餓地獄。
まだ言っていない、もう一つの二つ名。
沈黙のダンジョン。
11階層以降に挑戦した者が、どんな階層だったのか喋らない為。
あと周囲がずーっと石をレンガ状に切り出して積み上げたような石壁が続く。
つまり延々と変わらない風景を強いられて、見飽きて口数が減るのも精神ダメージにつながる。
こんなダンジョンの攻略?
(人類の限界より何倍もの早さで動けるとか、人外になってなきゃ)無理でしょ。
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蛇足
(ポンコツ)女神はなぜ女性を招いたか。
その世界の魔素とか魔力が少し悪くなってきているとか。
それを浄化する機能もダンジョンにはあって、存続していて欲しい。
その効果を高めるのに、異界の魂が良いとか。
だから異界で死んだ女性を勧誘した……らしい。
作中で寿命の無い体と言っていたが、物理的に命を奪われれば死ぬ。 だから死なない様に工夫を重ねている。
ちなみにその女性の補佐は複数いて、たった1人で寂しくダンジョン運営……なんて事にはなっていないから安心。
なお今回は、女神との対話だって事で補佐達は黙って控えていたそうな。
んで、女神は勧誘した責任感からか、時々こうやって女性とモニター越しに会話しにくるそうだ。
ただ内容的に、女神のグチがほとんどとか。




