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美少女船長は冴えない男にモテたい  作者: 午没薬
【本編】毒の天、翔る星々
4/8

3話 これは怒られ......ん?

「どうしよう」


怪物をほぼ殲滅した空中で私は恐怖に震えていた。

両手には折れた銛とその片割れ。


共闘していたロクシスが寄ってきた。


「どうしたの?具合悪い?」

「備品の武器...スィクさんが管理してるよね?」

「もちろん、毎日丁寧に手入れしてくれてるよ」

「ああ〜......っ!絶対怒られる!」


涙目で折れた銛をロクシスに見せた。

目をそらされて苦笑いされた、これは絶対やっちゃダメなヤツだ!


「(アレクみたいな使い方想定した強度の買ってないから壊れるよなぁ。

俺の稼ぎが悪いってヴァルカンにどつかれるかも......)」


というロクシスの独り言はあまりにも小さく

天空の風にさらわれて私には聞こえなかった。



____________




「武器、壊れたんだってな」


壁が、いやスィクが出入り口で待っていた。

もうちょっと心の準備をして帰ればよかったなんで

知ってるのお?

心を読まれたのかバイクを指差して


「無線機がずっとオンになっていた、船内全部に

会話が筒抜けになるから気をつけろよ。」

「あ、あはは......ごめんなさい」

「別に」


これは起こっていらっしゃるんでしょうか!?

パッとヴァルカンとグラウスに目配せすると

ニヤニヤしていた。

なにその笑み!何?!

新人が怒られるの楽しんでますか?

ブラック船団(ペジ)でしたか?

ハァとスィクのため息が聞こえた。

ビックリしてチョット飛び上がってしまった。


「場所を変える、整備室についてきてくれ。」

「は、はひぃ!」


船の中に助け舟は無かった。

この後こってり怒られるんだ。

胃が壊れる。


放心してスィクについていき整備室のドアが閉じられると弱々しく声をかけられた。

同時に私と目線を合わせるよう彼は跪いた。


「アレクは悪くない、お前さんみたいに......その

強敵をぶん投げる......とかいう技や硬い頭部に銛を突き刺せるヤツが居なかった。

武器が安物なんだ。

すまない......ケガは無いか?」

「無い、わ。......えっ!えっえっあの私

怒られるんじゃないの?スィク怒ってないの?」

戦士(ストラディオット)の力量に見合わない武器しか無くて恥じてはいるが怒ってない。

というか俺は気弱で怒れ無い」


ふっ、っと一瞬スィクがはにかんだ

こけた頬、ひどい目の下のクマ、何考えてるか分からない上に強面

怖い怖いと思っていたのに急に儚いものに思え、気がついたら彼の綺麗な髪を撫でていた。


「......は......?」


ポカンとするスィク、私は自分のした事の動揺を隠して彼の頭をそっと撫で続けた。

ゴワゴワしているが手櫛でほぐすだけでだいぶ整う香油を少し使ったらもっと艶やかになりそうな髪だ。


「私が悪く無い時は次からこうして私を撫でて」

「そ、それは...できない」

「どうして?」

「アレクが、よ、よごれる」


スィクの顔はじわじわと耳から真っ赤になっていった。

なにこれ...なにこの人かわいい、かわいい!!


「手、綺麗じゃない」

「ちが、俺は醜い」

「あなたの髪はこんなに美しいのに?」


ガタガタン!

スィクは尻もちをついてそのまま壁際に

後ずさろうとしたが、備品や工具やらに邪魔された。

結構痛いのでは?


「そんっそ、そんな事言うのはお前くらいだアレク!」

「今度私の香油ちょっとつけてみてもいい?」

「いらん!だから......お前が汚れるっ」


なにを必死になっているんだこの人は。

後ろに手をついて私から遠ざかろうと必死なスィクに詰め寄ってにおいを嗅いだ。

石鹸の清潔なにおいと彼のほのかな体臭は......

私には心地よかった。


「清潔感あっていい匂いだから汚れないわ。」

「な、な!な?!」

「むしろ戦闘して、汗かいて怪物の返り血とか浴びてる

私の方が汚れてるんじゃ無いかしら?」

「そうじゃな、い...近い...」

「私の頭撫でてくれるなら離れるわ」

「なぁっ...!?う、くそっ...分かったから

離れてくれ。」

「よし!決まりね!絶対よ」


覆いかぶさったままニカっと笑った。

スィクの顔は強面がふやけて真っ赤で涙目で......

いつもの怖さとのギャップに私はついハマって

やり過ぎてしまったかもしれない。

この後めっちゃ距離取られたら凹む。


ゴンゴンとノックオンがあった後すぐ扉が開いた。


「スィクさ〜ん船長(ヘカー)歓迎会早くはじめ......

ウワァアアアー!?

アレクがスィクさん襲ってる?!うそぉ?!」


ロクシスは発狂した。


「そうなのよ」

「ちがうちがうちがう!

俺は!武器が安物で強度が足りないのを詫びていたんだ!」

「これから私が悪く無くて、備品が壊れたら頭を撫でてくれるの!」

「エッ、ウソ、ナンデ急ニ?ナンデ?」

「ロクシスがショートしたぞ」

「そんなに衝撃的なの?」

「アレクお前...無自覚か?」


一体なんのことだろう


その後の私の歓迎会は盛大だった。

なんでも今日一日で一ヶ月分の稼ぎになったらしい

男4人もいるのにそんな稼ぎじゃ経験豊富な戦士(ストラディオット)

船長(ヘカー)にしたくなるよなぁと納得してしまった。

武器がショボいのはお前のせいだとロクシスがヴァルカンに蹴り倒されていた。

不憫だ......。


うん、厚切りのミノタウルスステーキは美味しい。

ハーブがよくきいていてワインで香り付けされ

滴る肉汁と口の中でとろける。

じっくり煮込んだ蛇肉シチューや

ハーブや香辛料で旨味を引き出しまくられている人魚マリネも

スィクがほぼ調理したらしい。

普段強面で老け顔だけど実はシャイで可愛くて

面倒見良くて胃袋もがっちり掴んでくるとは......。



私はスィクの事が本当に好きになってしまった。



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