2話 こんなメンバー取りまとめれるか! 私は怪物を狩るぞ!
スィク視点
船長として採用した少女...いや美少女はかなり小さかった。
艶やかで柔らかく揺れる、烏の濡れ羽色の美しい黒髪、長いおさげだが上部が短く切ってあるので正面から見たらショートヘアくらいに見えるだろう。
服はチューブトップで胸部が白く、みぞおちから下が黒いスタイリッシュなデザインだ。
ボトムはタイトだが伸縮性の良さそうな黒いホットパンツに黒いロングブーツ。
戦士の女性は動きやすいように露出度が高く、体にピッタリした服をよく着ているが寒くは無いのだろうか?
体が冷えないか心配になる。
それにしてもこんな美少女だったのか、採用事
条件項目にしか目を通していなかったので知らなかった。
俺が触ったら汚したり壊したりしてしまいそうだ。
歳の近い青年のロクシスが騒ぐ理由が分かった。
美少女から凝視されているのに気がつく
しまった、まじまじと見すぎていたか?
手短に要件を伝えて、言いつけられた用事に向かった。
中の奴らがどうにかしてくれるだろう。
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「船長はお前さんだよアレク嬢」
「な「船長さんもう来てるって?!マジ?!」
ダァン!と重い扉を勢いよく開ける轟音と同時に
若く明るい男性の声が大音量で聞こえた。
先ほど言われた事にも頭は追いついてないが音にも驚いて振り返った。
見目麗しい青年が汗だくで息を切らしていた。
「こ、こんにちは船長さん。
オレはロクシス、駆け出しだけど戦士だよ。
よろしくな」
もう船長と呼ばれても、私はよくわからないぞっ
ヴァニラ色の髪が光に輝いてダリアパープルの瞳が蠱惑的な美青年さん。
焦って詰め寄った。
「あっあの私が船長ってどういう事?私駆け出しどころか入ったばかりの新人よ?」
「あれ?エントリーシートに書いて無かったっけ?」
そう言うと、おもむろに小型タブレットを取り出して画面がみんなに見えるようにした。
『船長ヘカーおよび戦士ストラディオット経験者』
「はい私はどちらも経験していますが、いますが......!
母と2人で営んでいた船団ペジですよ?!
いきなり中規模ペジで船長ヘカーだなんて......」
とんでもない......
母が怪物との戦闘で殉職してまもなく、エントリーシートをネットに掲載した。
母がほぼ全ての仕事をしていて雑務は忙しいらしく、地元の人は女で一つで育て、育っている私たち親子に親身になって助けてくれた。
私が名ばかりの船長兼戦士で獲物を狩るのがメインでも問題なかった。
地元の船団の一番お偉方がほとんど船長の仕事をしていてくれて、教育もしてくれたからだ。
若年者ということもあり、このペジにも戦士ストラディオット枠で採用されたのかと思っていた、てっきり。
「遠慮するな若船長、俺もコイツらも船長の器じゃない。」
最初に聞いた掠れた低く唸るような声が後ろから聞こえた。
それに美青年ロクシスが声をかけた。
「おかえりスィクさん」
「やあ」
スィクは私と他の乗組員を見回すとまた私に目を向け
「ここに居る連中は船長に向かない」
陰鬱整備士
女たらし研究員医者
経験少ない若造
仕事いっぱい保護者
私 経験豊富戦士
消去法 私が船長の役職
「ようこそ我らが船長、アレクエリー」
何はともあれ仕事だ。
仕事さえすれば私のような小娘でも生きていける。
私は船長として何をやって良いのか分からず、とにかく得意な戦闘の腕を見てもらおうと船を港の出港場所に移動させ戦闘の準備を指示した。
そうしないと居た堪れなかった。
緊張も激しくしているので体を動かす仕事をして忘れたかった。
現実逃避に船員を使ってごめん、だけど私を船長にしたのはあなたたちなのでビックリした顔してないで戦闘の用意をして下さーい!
「突然船長にされてしまったけど
私のやるべき事は決まっている。
前からずっとやってきた事よ、怪物の討伐で稼ぐ事!」
自分に喝を入れて武器や薄手の防具を装備した。
怪物の攻撃は一撃くらえば即死級のものが多いので機動性を失うほど防御に振るより攻撃に全力を出したほうがいい。
私は整備された銃の確認や刃の切れ味を再確認した。
ここは天空都市『クレタ』
大地からは毒の瘴気が立ち込め、人類は滅びかけたり進化するほど長い時をかけながら天空に追いやられた。
毒の他に『亜水』という毒と天空との間に分厚い特殊な水の層が発生し世界を覆っていた。
これは通常飲めないが生活に欠かせない資源になった。
その中からか、または毒の中からか怪物やってくる。
人を襲う異形だが、武器兵器がきく上、亡骸も食料から装飾品工芸品武器の材料など色々な資源になり貧しい天空の暮らしを潤してくれている。
そして怪物討伐は一つの大きな職業になった。
その職業名は『O.Leoオリオ』
毎日死線をくぐる営みを続けている。
アレクが所属するペトロ船団ペジはO.Leoオリオという組織の中の小さな一艦だった。
船は船でも天空を渡る船だ。
「バイクの操作は大丈夫?」
整備士のスィクでは無く船医のグラウスが操作関係を色々と教えてくれた。
グラウス曰く「説明下手」との事。
「ええ、前使ってたのと似てる」
「じゃあ目標地点だ。いつでもいいよアレクちゃん」
「はい......」
ブウンと雲上バイクのエンジンをふかすのと同時に船の小型船出入り口から見えている怪物に集中した。
今日はセイレーン(人魚)型とミノタウルス型が目立つ、ピュート(ドラゴン)やゴルゴンも雲の影に居るかもしれない、そういう空域を指定した。
セイレーンはいい値で売れるしミノタウルスはお肉が美味しいしなぜ
「1人はひよっこだよ?!」と驚かれたのだろう?
これでも難易度を抑えた空域を指定したけれど
いつも母と行ってた空域はもっと難易度が高かった。
頭では考え事をしつつも体は勝手に怪物を捌いた、この大きさの船なら放り入れても揺れは少ないだろう心臓一撃で仕留めたミノタウルス3体を出入り口に投げ込む。セイレーン型が襲ってきたので高価な髪を切ってしまわないよう首を切り落とす、髪を引っ掴んで遠心力を利用して船に投げ入れ大きな本体が沈む前に銛とワイヤーで固定して船に運ぶ。
「はい4丁上がりです。」
「お、おおおお......!」
「解体まだ大丈夫ですか?」
「うんうん!気をつけて ね」
ね、を聞き終わる前にゴルゴン型の奇襲に気がつき目を貫いて船に入れた。
「やれやれ!やたら強い船長だぞ。
おいロクシス早く行け」
「グラウス、オレ邪魔になるんじゃない?」
「あの娘に狩り方教わってこいっつってんだよ!」
「いでっ!」
バイクごとロクシスの尻は足蹴にされアレクと恐る恐る合流した。
ヴァルカンが作業着を着てグラウスに声をかけた
「不安そうな顔してたがかなりの腕じゃないかアレク嬢。」
「不安なのは船長仕事でしょ、ヴァルカンめずらしいじゃん討伐見に来るなんて」
「そりゃ新船長ヘカーの初仕事だ。
この後パーっとやらんとな、買い出しはスィクがもう済ませてある」
「いいねぇ」
目の前でどんどん狩られた怪物が積み上がっていく、それもかなり綺麗で高価で取引できる状態で。
「すげえよ嬢ちゃん」
「前の生活がより過酷であった事の証でもある。
彼女は身寄りがなく今1人となんら変わらん。
我々がしっかりサポートしていこう、グラウス。」
しかしグラウスはヴァルカンの言葉をほぼ聞かずに
獲物を積み込みに船に戻ったアレクを口説きにかかっていた。
「討伐おつかれ!疲れただろう?今夜寝かしつけてあげよっか?」
「えっ」
「聞いとんのかこのサイコ野郎!」
まだラブロマンスできてませんが次あたりでできると思います。