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第89話 カフェ2 

 何故かドキドキする昼食を終えると、シルビア様は「とても美味しいんだよ」と言って、皆にアイスクリームという世にも美味なデザートまで注文してくれた。


 このアイスクリームというのがまた格別だったのよね。


 一口食べるとひんやりとした甘さが口いっぱいに広がって、ロシータちゃんとチェリーちゃんは口の周りを汚しながら、フィーちゃんは目を潤ませながら食べていたんだわ。

 ダークちゃんと私は少しずつ食べていたけど、「食べなければ溶けてしまうよ」とシルビア様に言われて、気づいたらお互い頬にアイスクリームをつけながら完食してしまったのよ。幸せ……


 食事を終え、いただいた金貨で支払いをしようと思ったら、「会計なら大丈夫よ」とアリアさんが言ってくれたので驚いてしまう。

 どうやらシルビア様は、半分このお店のオーナーのようなものらしい。

 来る度に信じられない程の金額を納めていくので、アリアさんが毎回突き返しているとか。


 ……すごすぎて、なんだかよくわからないけど、とにかく、シルビア様がご馳走してくださったことだけは理解できたわ……



 食事を終えた私達はアリアさんとコリスさんに挨拶をして、お店を出たシルビア様の後に続いた。


 煉瓦造りの街は立ち並ぶ建物の入り口や窓辺には色鮮やかな花々が植えられ、並んで歩く私達の目を楽しませてくれる。

 まだカフェの幸せな余韻に包まれていて、尻尾が勝手に動いちゃうのを止められない。


「あの、シルビア様、ご馳走様でした」


 感謝と負担をかけている申し訳なさが込み上げてきて、先程言ったにもかかわらず改めて口にしてしまう。


「いいんだよ、それよりも」

「え……? ぁっ……」


 いつの間にか、私の手は再びシルビア様の手に“接着”されていた。


 指と指が絡まる感覚が気持ちよくて……ぼんやりしてしまうわ…… 


 なんだかシルビア様の隣が定位置になったようで、嬉しくて嬉しくてたまらない。

 シルビア様もニコニコと嬉しそうだけど、皆と一緒だとちょっと恥ずかしいなぁ……


 誰もいないところなら、いいんだけど……なんて思っていたら、ロシータちゃんが私とシルビア様の間に入ろうと跳びついた。


「ゆみぃとしるびー、なかよし! ろしーたもっ、ろしーたも~~~~!!」

「ロシータさん、私と仲良くしませんか?」


 フィーちゃんがロシータちゃんに手を差し伸べた。


「ふぃー、ろしーたとおててつなぎたいのかー? いいぞー!」


 ロシータちゃんがフィーちゃんと手を繋ぎ、振り返ってダークちゃんの手も取ろうとする。


「だーく、も!」

「ボクはいい……おいっ、前向け、ばかっ!」


 石に(つまず)いたロシータちゃんの手を反射的に取ってしまうダークちゃん。

 なんとなく世話焼きのメイドさんに見えなくもないかも。

 諦めて大人しくロシータちゃんと手を繋いでいるダークちゃんを微笑ましく見ていると、フィーちゃんと目が合いニコニコと笑いかけてくれる。


 フィーちゃんの穏やかな瞳は、なんとなく全てを見通してるような感じがする。

 私の嬉しくてたまらない気持ちもわかるのかな……?

 ……恥ずかしくなってきた……か、顔が熱いわ……


「……ダ、ダークちゃん、エプロンがねじれてるよ」


 気を取り直して私が伸ばした手は、ダークちゃんの背中をかすってしまう。

「ひゃぁ!」と可愛い声を出してダークちゃんがのけ反った。


「や、やめろっ、ウサ犬!」

「あー。あんまりウサ犬ウサ犬言うと、私だって仕返ししちゃうよっ!」

「なっ、何をする気だっ⁉」


 ダークちゃんの顔に警戒の色が浮かぶ。ふっふっふっ。


「ダークちゃん……、舐めるよっ!」

「はぁっ⁉」


 思いがけないことを言われたダークちゃんがたじろいでいる。これは効果アリだわ。


「ダークちゃん? 獣人はお互いに舐めて、親しい人とのコミュニケーションを取ることもあるんだからねっ!」

「ひっ! なっ、舐めるんじゃないっ!!」


 ダークちゃんがフィーちゃんの背後に身を隠す。


 ふっふっ。獣人同士では当たり前のコミュニケーションでも、他の種族は違うって知ってるのよ~!


 私はジリジリとダークちゃんに近づいていく。

 すると、握られた手に力が込められた気がしてシルビア様を見上げた。


「……ユミィ、ダークを舐めるの……?」


 唐突な質問は私を驚かせた。


「えっ? い、いや、あの……」

「それじゃあ……私の事も……舐めるのかな?」


 ……?


 何を言われたのか分からないでいると、何故かシルビア様は顔を赤らめて恥ずかしそうな表情をしていた。


 理解が追いついて慌てて否定する。何故、そうなるのっ⁉


「えっ⁉ なっ、舐めませんよっ! シ、シルビア様には、そんなことできませんよ!」


 私の言葉が足りなかったのね。シルビア様にはそんな恐れ多いことはできないわ!

 私が慌てて繋いでない方の手を否定するように振ると、シルビア様が目を眇める。


「……どうして? どうして、ダークは舐めて、私のことは舐めないの?」

「えっ、そのっ、あのっ? えっと……こっ、これはそのっ……おっ、お仕置き……というかっ……」


 シルビア様から離れようとするけど、手が接着されているので離れられない。に、逃げられない……


「……じゃあ、私が何か悪い事をしたら……ユミィに……お仕置き、してもらえるのかな?」

「えっ? えっ? あっ、あのっ??」


 言われている意味がわからなくてよく考えるけれど、やっぱり意味がわからない。

 お仕置きって、言われてするものではないのではっ……? というか、悪い事って……?


 真っ黒な美しい瞳が潤んで、あたふたする私の姿が映っている。

 白磁の様な肌は滑らかで、私が舐めていい場所なんてどこにもあるわけがない。


「しっ、しませんっ!」

「何でっ!」


 ムキになったようなシルビア様の声に混乱する。どうしてこういう話になるんだろう?


「なっ……何でも、ですっ!」

「なんだ、なんだー? しるびー、ぺろぺろしてほしいのかー? ろしーたが、やってあげるぞー!」


 ロシータちゃんがシルビア様の顔めがけて長い舌を伸ばすと、シルビア様の二本の指が舌を捉えた。


「ロシータ、舌はしまっておきなさい……」

「もがぁー!」


 ジタバタともがくロシータちゃんの口に、シルビア様が舌を押し込んでいる。


 シルビア様、誰に舐められてもいいというわけじゃないのね。

 何だか意気消沈しているような……?


 いつか、シルビア様が何かイケナイ事をしたら、舐めてもいいのかな……?


 いやいや、そんなことは無いと思いながら、何故か身体が熱く火照った。

あけましておめでとうございます。

今年も宜しくお願い致します(*ᴗˬᴗ)⁾⁾

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