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第63話 賑やかな授業2

 ダ―クちゃんが落ち着くのを待ってから、シルビア様が授業を再開した。

 泣いて少し目が赤くなったダークちゃんは、真剣な表情をしてシルビア様の話に耳を傾ける。


 やる気がみなぎってるのね……私も頑張らなくちゃ……!


「じゃあ皆、体内魔力を用いて、ある程度の魔法は使えそうなので、ここからは応用して魔素……空気中にあるエネルギ―を利用して魔法を使う練習をしていこうか」

「ろし―た、がんばる―!」

「ボ、ボクだって……!」


 ダ―クちゃんがロシータちゃんにライバル心を燃やしている。


「ふふっ。みんなで頑張りましょう」


 フィ―ちゃんもロシ―タちゃんも、目がキラキラしてすごく生き生きしてる。


「そうだね。頑張ろう」

「きゅ―……すぴ―」


 ロシ―タちゃんの頭の上で再び舟をこぎはじめたチェリ―ちゃんを後ろから支えて、私はシルビア様の話に集中する。


 なんだかみんなで授業を受けるって、とっても楽しいな。

 こんな風に魔法を学べるなんて、夢みたい。


 真剣な私たちを見て、シルビア様も楽しそうだった。


「魔素を使わずに魔法を使う時は、体内の魔核を意識すればよかったけど、魔素を使う時は何を意識すればいいかわかる?」


 魔核を意識しない……何だろう……?

 あ、もしかしたら……


「魔素……は、空気中にあるなら……じゃあ、空気……呼吸、を意識する……とか?」


 勢いで答えてしまったけれど、間違ってたら嫌だなぁ。

 私の思いをよそにシルビア様が微笑んでくれる。


「そうだよ。正解。魔素は空気に含まれている。だから、魔素を使う時は、体内に取り入れることを意識して、深呼吸するんだ。鼻から吸って、口から吐いて……これを繰り返してみて」


 私たちは目を(つむ)り、深く呼吸し息を整える。


「血液の流れにのって、魔素が全身を巡っていくのを思い描いてごらん。最終的に魔核に溜まっていくようにイメ―ジするんだ……体内に魔素がみなぎった時、魔力に頼らずに、自然に魔法が使えるようになるよ」


 私たちは深呼吸を繰り返す。


 空気中から見えない力を取り込む事を意識すると、胸の中心がなんだか温かくなってきたみたい。

 体内に少しずつ何かが満ちていくのがわかる。


 あ……、私、こっちの方が得意かもしれない。


 元から持っている魔力を使うよりも、魔素を取り入れた方が体が楽になる気がする。

 体の中を魔素が巡っていく。


 うん。わかる。

 これが魔法になる力なんだ……


 魔法が使えない今、魔素を吸い込んで、それが体内に溜まっていくのを感じられるのが嬉しかった。


「みんな、体内に上手く魔素が溜まってきたみたいだね。……足元の小石を拾ってごらん」


 私たちは足元の小石を一つずつ拾う。

 頭にチェリ―ちゃんを載せたロシ―タちゃんの手に、フィ―ちゃんが小石を載せてくれる。


「あんがと、ふぃ―」

「ふふっ。チェリ―ちゃん、よく寝てますね」


 チェリ―ちゃんは器用にロシ―タちゃんの頭にしがみついて、すぴすぴ寝息を立てていた。

 私も手ごろな小石を二つ見つけたので、ダ―クちゃんに「はい」と言って渡す。

 ダ―クちゃんはさっき泣いたのが恥ずかしかったのか、プイとそっぽを向いてしまった。


 でも、小石は受け取ってくれたから嬉しいな。


 皆の前に立ったシルビア様も手に小石を載せる。


「さっきのダ―クの氷魔法は、場所を選ばない、使い勝手のいい魔法だった。……では、屋外に適した攻撃魔法は何かわかるかい?」

「屋外に適した……」

「むむむ……?」


 皆考え込んでいると、フィ―ちゃんがハッと(ひらめ)いたように呟く。


「シルビアさん、それは、羽のある敵には使えない魔法……でしょうか?」

「正解。フィ―、言ってごらん」

「……浮遊の魔法……ですか?」


 自信無さげなフィ―ちゃんの答えに、シルビア様が笑顔で頷いた。


「私の生徒たちはとても出来がいいね。その通り。浮遊魔法は屋外では最高の攻撃魔法といってもいいと思う……場所は選ぶけどね」


 シルビア様の手の上の小石が、一直線に宙へと浮かんでいく。

 空の方までどこまでも上っていった小石は、太陽の光の中に見えなくなった。


「気に入らない敵は空の上まで出してやれば死ぬよ。確かめたことはないけどね」

「……」

「そうしない時は、途中で下ろしてやればいいよ」


 シルビア様が人差し指を少し動かすと、すごい勢いで先ほどの小石が降ってくる。

 小石は地面すれすれで止まり、また宙へと浮いて落下してくる。


「こうやって敵を空と地面の間を往復させるのは、とてもいい魔法の訓練になるよ。相手が重ければ重いほどこちらの魔法も鍛えられる。子どもの頃はよくこうやって遊んだものだよ。襲い掛かって来たサイクロプスと友達になれたのも、この遊びのお陰だよ」


 シルビア様が懐かしそうに昔話をする。


 それ、遊びじゃないんじゃないかな?

 ご……拷問って言うんじゃないかしらっ……?


「しるび―、かっこいー! ろしーたも、おともだちになりたいぞ!」

「ご主人様! 最高です!」


 賞賛するロシータちゃんとダ―クちゃんを見て、私とフィ―ちゃんは無言になる。

 すごい魔法なんだけど、使いこなせる自信がない。


 私たちの反応がイマイチなのを見て、シルビア様が他の提案をする。


「じゃあ、羽のある敵にも使える魔法は……これかな」


 シルビア様が浮かんでいた小石に手を向けると、渦巻いた闇の塊が小石を包んだ。

 小石は闇から吐き出されると、地面に転がり割れる。

 割れた小石から、禍々しい黒い魔力が出たように感じた。


「そんなに効いてないように見えるけど、即死魔法だよ。これは場所を選ばないから、かなり使える魔法なんだ。ただ、相手がすばしっこいと当たらないから向いてないけど」

「「…………」」


(なんだか……シルビア様の教えてくれる魔法は……基本的に使えないような気がするわ……)


 はしゃぐ子供たちを見ながら、私とフィーちゃんは顔を見合わせた。

 

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