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ファミレスなのに

5話目少し書き足して、6話目と分けました。

 ファミレスには私とササダ君のほかには誰もいなかった。


 ファミレスといったが、その割に狭いし一人掛けの席の方が多い。壁を二面使って、三客ずつ椅子が並んでいる。二人掛けのテーブルは一つ、注文を取るためのカウンターの背後にある。


 場所が開いたからとりあえず置いてみたという風である。そもそも家族連れを想定していないようだ。最大八名までしか入れないし。



 ササダ君は二人掛けのテーブルを選んで座った。


「ここが一番目立たない」


 などとつぶやいているがいったい何から隠れるつもりなのだろう。私たちの他に客はいなかった。



 荷物を置くためのかごが見当たらなかったので私は床にリュックを置いた。

 その、ゴトッという音を聞きつけて、ササダ君が体を傾けてリュックを見やる。


「ずいぶん重そうですけど、いったい何を持ってきたんですか?」

「ん? カレーだけど?」


「はい?」

「山で食べるカレーはおいしいってよく聞くじゃない」


 ササダ君は「はあ」と頷いた。

 半信半疑なのだろう。私もそうだ。



 子供のころキャンプで食べたカレーは一口に言ってまあ普通だった。


 けど最近思うのだ。子供のころは自然に囲まれているのが普通だった。キャンプ場も家の周りも変わらないと思っていた。


 だから自然の中で食べるカレーにもありがたみを感じなかった。



 でも今は非常に緑が恋しい。山に行きたい、ハイキングとかキャンプがしたい。

 緑に飢えた状態で山カレーを食べたらすごくおいしく感じるのではないか。


「でも登るのはともかく山まで行って帰ってくるのが面倒だし、なかなか食べる機会がなくて。それで、ロケーションの差なら異世界でもいいかなって」


「……え?」



 話の途中で、ウェイトレスが注文を取りに来た。


 ウェイトレスだ。たぶん。ご丁寧にヘッドドレスを付けているし、きれいな腕をしている。


 が、体はやはりというかなんというかタマゴ型だし、ついているのは骨太でたくましいおっさん足だった。


 いや、気にしたら負けだ。私はまだ負けるわけには行かないのだ。


 そんなことを考えながらメニューをめくる。メニューは普通なんだなと一瞬思うがいくら探してもカレーがない。


 ファミレスなのに、そんなことあり得るのだろうか。



「フロア君、カレーってないの?」

「さあ、そういえば見かけませんね」


「フロア君、スープカレー屋で働いているくせにカレーがなくても生きていけるの!?」


 驚きを通り越して舌打ちものである。


「仕方ない。ステーキにしよう」

「え? さっきスープカレー食べてましたよね?」


 ササダ君が若干顔をひきつらせた。ような気がする。


ファミレスより定食屋派です。ステーキより焼き魚。

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