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帰れないかもしれない

 ゲートはこちらの世界でも蜘蛛の巣の形をしている。


 暗い路地の入口にかかっている。ちなみになぜだかその場所だけやたらと暗い。そういうエフェクトなのだと納得しておくのがよさそうだ。


 さてゲートは光っている。常ならば蛍光緑なのだが今は赤だった。

 色が関係しているかどうかは不明だが、困ったことにゲートを通れなくなった。


「だ、大丈夫ですか」


 ササダ君は一応気遣ってくれるのだが、私に助け起こされながらのセリフなので少々情けない。まあ、押しつぶしたのも私だけど。


 それでも、異世界についてはたぶん彼の方が詳しいのだ。彼はゲートを食い入るように見つめた。


「閉じてる……? なんで!?」

「それって……、帰れないってこと?」


 慌てた私はもう一度ゲートに手を伸ばした。

 指先がバチっと弾かれる。が、耐えて両手を押し付ける。バチバチいった。


「ちょっ、無茶しないでくださいよ!」

「いや、なんともないよ」


 そういったのだが、ササダ君はわざわざ手袋を脱いで私の手を両手でつかんであらためる。


 別に怪我はしていないと思うのだけど、ササダ君が思いがけず真剣な表情をしているので止め損ねた。


 というかこれは、かなり照れ臭い状況じゃなかろうか。

 さっきはほとんど会話をしたことのない男に壁ドンされるし、何なんだ。今日は。


 と、現実逃避気味に目をそらしたその時、視界の端にちらりと異世界人の影が映った。


 体ごと振り返ると、異世界人たちが再び集まりつつあった。


「サ――フロア君、ゴーグルおろして、手袋もはめて!」


 一瞬、異世界では彼が嫌がるササダ君呼びをしてしまいそうになった。


 ササダ君も非常事態に気付いたらしく、すぐにゴーグルできっちりと目元を多い、手袋をはめ直していた。


 その間も異世界人たちはゆっくりと我々に近づきつつある。

 マズい、このままでは私はともかくササダ君が食べられてしまう。


 献血でやたらと彼が人気、ということは結局そういうことだろう。

 けど異世界人たちは昭和のビニール人形みたいな見た目なのだ。口は線を引いただけのように見える。どうやって食べるんだろうか。


 いやとにかく今は彼を守らなくては。スプラッタは見たくない。


 異世界人たちはざっと数えたところ軽く十人はいた。私は集まってきた異世界人をぐるりと見回した。大きく息を吸い込む。


「はあい! 本日献血したのは、わ・た・しオーイシよ☆ 彼の血は一滴もありませんっ!」


 陽気に右手を挙げつつウィンクをして見せると、彼女たちは戸惑ったように顔を見合わせた。

 案内箱がひよひよと翻訳すると異世界人たちはしらけた様子で解散する。


 その様子を見て、ササダ君は思わずのようにゴーグルを上げた。


「すごいですね……」

「腹は立つけどね」


 そしてめちゃめちゃ恥ずかしい。なにこの盛大に滑った感。

 まあいい。ササダ君は気にしてないみたいだしとりあえず役には立った。


 ちなみに、ササダ君が栗谷に電話をしてドアを開けてもらうことで私たちはあっさり帰ることができた。



今日一番寒かったはずの江丹別の人が、「さすがに頬がひりひりしますねー」などとのんきなことをニュースで言っているのを見ました。

道民だけどマイナス30度越えは未体験。

ところで、江丹別といえばおいしいブルーチーズがあるところですね。食べたーい。

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