実家は小袖屋
保護された実家で素直に仕事します。
床屋さん成分少な目です、というかほとんどありません。
なんとか無事実家に保護された。
俺は、隣村に行くと言って出かけ二日ほど行方不明になっていたらしい。
俺は呆けたらしい。
狐憑きとかそんな扱いになるのかもと思っていたが、単にバカになったという事らしい。周りは気を使って接してきたが悪意はなかった。
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実家は小袖屋だった。ようは服屋なんだが、扱うのは小袖が主でそれ以外はあまり扱わない。袴も布地も扱ったとしても少しだけ。小さくはないが大きくもない町にある小袖専門の問屋さんみたいなもんだ。主な商売相手は市で小売りをする商人が多く、お得意周りで商売している者にも卸す。多少小売りもするが知った顔にだけ、その時たまに小袖以外の袴なんかを見繕ったり手入れ用に布地を渡す事もあるが、小袖以外では儲けはない。
最初は現代日本の問屋と同じなんだろくらいに思っていたが、そのうち言葉もわかってくると、いろいろわかってきた。布地を扱うのは太物屋で袴を扱うのは袴屋、染色は染物屋、基本的に業種ごとに製造から販売まで決まっている。布地は太物屋と書いたが、太物は麻と苧に限り、真綿や絹は別扱い。(後に知ったが、木綿はあまりないし、亜麻は無いらしい。)
この時代にはなんでも商うデパート・百貨店も無いし、ましてコンビニも無い。業種ごとの縦割りが強く、製造から販売まで仕切りがある。小袖と袴なら縫製している所が同じでも良さそうなものだけれど別、染色も別。(なんでも扱う商人はいないことは無いらしいが、行商人に限れば田舎専門らしい。)
それでも不便ではなく、市ではなんでも手に入る、いろんな店が並んでいる。
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家族は呆けてもまずは同じ仕事をさせてみるという感じだった。
今までを忘れてしまい言葉も通じにくいが、暴れるわけでもなし、
意思の疎通もできるし、言葉も覚えていきそうな感じで、
見通しはあると思ってくれたんだろう。
転生して記憶も無い俺は素直に従い、実家の仕事に励んだ。
飢え死にはしたくないしね。
家族は、母と弟と妹、それと俺で4人。嫁に行った姉と妹がいるので、なくなった父親を含めるともとは7人家族だったらしい。で、それと叔父家族が4人(叔父、叔父嫁、従妹と従弟。それと叔父家族も嫁に行ったのが2人)
店主は母で跡取りは長男の俺、対外役というか寄り合いには叔父が出席。
(亡くなった親父は無口な男だったので、昔から対外役は叔父だったそうだ)
あと、奉公人というか下働きに5人の男衆と女衆を2人雇っている。
こんな記憶喪失状態の長男では、跡継ぎ問題で揉めるかもと不安だったが、そんな事もなかった。なにも店主跡取りが一番偉いわけでもないようだ。そこら辺の感覚はよくわからなかったのだが、、、例えるなら一つの店で店長も副店長も店員も仕入れ係も帳簿係も、それぞれいなければ店は成り立たないし、それぞれ大切ということらしい(それぞれ偉いわけだ)。だから、店主がかじ取りはするが、商売が失敗したら皆が困るから、かじの方向については皆でしっかり口は出すということのようだ。
そんな環境がよかったのか、言葉がわかるようになると、周りからも気を使われることもなくなり打ち解けていった。ただ、思い出の無い俺をさびしく思ってはいるようだ。
で、この世界に床屋は無い。
いやそれらしきものはあるんだが、俺は認めない。
主人公は、この世界でなんとか生きていけそうです。
でもやっぱり床屋さんの事は気になるようです。
今話のように説明だけの話を解説回というのかな?