どうやら実家に保護されました。
転生直後の混乱のなか、やっと実家に保護されました。
気付くとどこかの部屋の中で寝かされていた。
心配そうに傍で見ていてくれていた男に、礼を言うが、
言葉が伝わっていそうもないので、目を見つめて誠心誠意頭を下げる。
頭を下げると髪が前にきて、なんだかうっとしい。
ポニーテール髷は解かれていた、結ったままでは寝辛いもんなぁ
枕元においてあった紐で、結わきなおして、また誠心誠意の御礼。
喉が渇いていたので、水をお願いした。身振りでわかってもらえたようだ。白湯と粥を出してくれた。粥は、少しの米が黄色い汁に入ったよくわからないものだったが、空腹だったのでおいしく頂いた。
「なさた、なさた」と何度も聞かれ、最初は何を言っているのかわからなかったが、
「(どう)なさった?」と言っているようで、少しは意味がわかると安心した。
昨晩気付いたら丘の向こうにいて、朝明るくなってから歩いて来たことを、なんとか伝えたが、それ以前については伝えようがないので首を傾げたり振ったりして、会話らしきものを続けて、ようやく俺の名前がわかった。
ヒロというらしい。
広なのか廣なのか弘なのかどうなんだろうと思い、紙は貴重そうなので、床を指でなぞったり、土間に棒で書いたりして確認したが、どうも比呂らしい、でも廣でもいいんじゃないかという反応だった、うーんなんだかなぁ。
土間を使った筆談は、あまりうまくいかなかった。字は知っているが、面と向かっているのなら、伝わりにくくても話した方がよっぽど良いだろうと思われているようだ。なんでわざわざ書くのさ?と、書くくらいなら話せよという感じになった。たしかに、知らない方言同士での会話程度には伝わるようだし、言葉と身振りでの会話にした。
もうすぐしたら、お前のパパがくるから、よかったなぁ安心しろよととの事で、待っていたら、女性がきた、俺の母親らしい。
母とともに、あらためてみんなに礼をいって、実家に帰ることになった。
言葉がうまく伝わらない記憶喪失患者のような俺を、悲しそうにがっかりしながらも、五体満足で元気そうならそれでいいかと、ひょこひょこ健脚に足の速い母は、なんか逞しかった。
あの丘をもどり、もう一つ先の丘を越えて、実家についた。
転生直後のあれこれな導入部分はこれで終わりです。
あとは実家での生活と、鎌倉時代に適応してなんとかやっていく話を1話で仕上げて、早く本題にはいりたいと思います。