室木 柴/ころっけぱんだ『カニクリームコロッケ、空を飛ぶ』
おお、カニクリームコロッケ。
ああ、カニクリームコロッケ。
いかなる発想をもってその発想にたどり着いたのか。
カニクリームコロッケ、奇跡を生む。
初めて見た時はそのタイトルに首を傾げたものだが、実際読んでみればこれが面白い。
ジーザス、カニクリームコロッケ。
思わずそう言いたくなってしまう。
簡単にいうと手足の生えた極上のカニクリームコロッケが人類を追いつめるお話である。
まず一度目に純粋に笑った。そしておののいた。
カニクリームコロッケ、おいしそう。カニクリームコロッケ、こわい。
なんなのだこれは。いったいどうすればいいのだ!?
そんな気持ちだった。
発想は突飛だが読んでいるとだんだんそれが常識のように思えてくる。
――読者よ、これが現実なのだ――
そうみじんも疑わず言い聞かせられているようだ。最初はそんな馬鹿なと思っても、ずっと真剣に語られるとおかしいのはこちらのほうなのではと思わざるをえない……。
それを実現しているのは、アツアツのクリームのように滑らかでパワーが込められた文章。異様に語呂はよく、語り口は一見冷静。
真面目にとんでもないことをやることがコメディという言葉を聞いたことがあるが、これもまたまさにそうだ。
カニクリームコロッケをこれでもかと分析し、その性質をわけがわからないほど活かしている。文章が流れるようですいすい読めるので、途中でつまってうっかり正気に戻ってしまいにくい。
ハマれば没頭して読み込むことができる。シュールなコメディをかきたい・読みたい、読みやすい文章を書きたい・読みたいという方にもオススメ。
ただし、少々グロテスク・シリアスなテンションで進むのでそういったものが苦手な方は注意されたし。
『カニクリームコロッケ、空を飛ぶ』
作者名:ころっけぱんだ
作品URL:http://ncode.syosetu.com/n2295dn/