甲姫/あんのーん『夜の街物語』
お題<評価ポイントが二桁以下(レビュー執筆当時96pt)>
――闇の中を、ひとりの男が手探りで歩いている。満月にしか出入りできない、閉鎖的な島に向かって――
この物語はひっそりとした孤独感を漂わせて始まり、ひとつの出逢いを経て、徐々に激しく展開していく。
盲目の主人公が見つめる深淵の世界に、次々と現れるあやかし。そこに響く少女の純粋さは、より一層心を震わせる。
いわゆる「夜の街物語」はダークファンタジーであり、伝奇ものである。読み手は怖いもの見たさからなのか救いを求めてのことか、とにかく読み進めるのをやめられない。鮮烈な描写に包まれ物語の空気感に飲み込まれ、周囲を忘れて読み耽ってしまうことだろう。登場人物がよく練られている点はもちろん、一話ずつの長さや文章と展開のテンポもちょうどいい。
しかし、ここで私がダラダラと語っても仕方がない。
この紹介文を読む者よ、どうか「夜の街物語」の魅力を、自らの目で確かめに行ってほしい。散りばめられた謎が紐解かれる手応えを、主役の二人が絆を結んでは絡める運びを、直に味わってほしい。
やがて最後の場面を駆け抜けた暁にはきっと――
――胸の内に広がる小波にも似た余韻に、浸っているのではないだろうか。
『夜の街物語』
作者名:あんのーん
作品URL:http://ncode.syosetu.com/n2001cw/