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その日の空はとても青かった  作者: 音切風太
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第三話 戦闘終了

「くっこのっ!」


 俺は剣を振り回すが、俺の攻撃はかすりともしない。

 やがて時間は過ぎ、背後で誰かがあくびをする声が聞こえた。


「戦士さーん、飽きましたよ」


 ユーシャ、お前か。


「ちょっと待ってろ!このモンスターたちを!倒すまで!」


 俺は背後に叫ぶ、ふと動いた目線の先には、御車の親父までもあくびをする姿が見えた。

 モンスターを追い払うのは村でもやっていたが、倒すとなるとこれが初めてのことである、剣に当てることがこんなにも難しいとは、もうちょっと素早く剣を振るう訓練もしておけば良かった。

 俺はただひたすら己に筋肉を付けることのみ励んできた自分を悔やんだ。


「しかし、かれこれご飯を食べ始めて食べ終わるくらいまで時間かかってるのに、よくそんだけ周りをめちゃくちゃにして体力が持ちますね」


 気がつくと、俺の周りは俺の振るう剣により、木は倒れ地面には点々と穴が開くという荒れた光景となっていた。


「当たり前だ!俺は実家に居た日々のほとんどを筋肉トレーニングに使っていたのだ!」


 しゃべっている間にも、穴は一つ増える。


「力と体力だけは!」


 大木が倒れる。


「誰にも負けん!」


 その結果、この特注の折れない剣でしか俺が扱える剣は無くなってしまったわけだが。


「ソロソロアキタゼ」


「オウ!オレタチノヒッサツワザヲクラワセテヤル!」


 踊りながら俺の剣をかわしていたゼリー人間たちは、道の左右に分かれると木の上へよじ登ってしまった。

 どちらかに行ったらどちらかが馬車を襲うかもしれない、俺は馬車の前、左右に分かれたゼリー人間の丁度真ん中に立つと、じっと出方を見た。

 左右のゼリー人間は、木の上からどこの言葉か分からない言葉を唱え始める。


「こりゃいかん、戦士さん、悪いが逃げるぞ」


 言うが早いか、御者の親父は馬を操ると、のろのろと方向転換をし、あっという間に後ろへ逃げてしまった。

 車輪が遠くなる音を聞きながら、俺はそれでいいと思った。

 俺一人の犠牲で済むのならば、それが一番。

 風が木々をざわつかせる、ゼリー人間たちの声は辺り一面に響き渡るように俺には聞こえてきた。


「魔法が来ますよ」


 場違いな声がして、俺は驚いて後ろを振り返る。

 かくしてそこには、一定の距離を置いてちょこんとユーシャが立っていた。


「なぜ逃げない!」


「いやあ、今ここで降りたら運賃払わなくていいかなって」


 ゼリー人間たちの詠唱が終わる、急いで目を戻すと、いつの間にか目の前には丁度ゼリー人間大の火の玉ができていた。

 火の玉は、当然のように俺に向かって飛んできた。


「馬鹿野郎―!」


 俺が逃げるとユーシャに火の玉が行く!

 俺は手を広げると、全身でその火の玉を食らう。

激しい衝撃とともに吹き飛ばされそうになるが、俺はなんとかその場に踏みとどまった。

一瞬遅れて全身に痛みが襲う。


「ナッナニイ?」


「オレタチノキアイダマヲウケトメタダトー?」


 全身じりじりと痺れるように肌を焼く感覚を感じながら、俺はまだ後ろに吹き飛ぼうとする火の玉を全身で受け止めていた。


「筋肉をなめるな!」


 そのまま両手で火の玉を抱きしめるように潰すと、風船が割れるように火の玉は消え去った。

 鎧は焦げ、洋服も半分は墨と化してしまった、しかし俺は立ち続けた。

 流石にゼリー人間たちは焦ったらしくしばらく木の上でおろおろとしていたが、やがて意を決したように右に居た奴が叫んだ。


「カタワレ、モウイッパツイクゾ!」


「ソ、ソウダナ、ケケケ」


 左の奴が呼応してすぐ、再び呪文が森に響き渡る。

 何度でもくるがいい、俺は何度でも受け止めてみせよう。


「魔法で作りだす火が本物の炎でないとはいえ、よくやりますね」


 後ろでユーシャの呆れた声がした。


「何でも言うがいい、これが俺の生きざまなのだ」


 後ろを振り返らずに俺は言う。


「うーん、でも、少し気に入りましたよ、戦士さん、僕も協力しましょう」


 協力?ユーシャは何かができるというのか?

 そうこう考えてるうちに、ユーシャの歌うような詠唱が聞こえてきる。

 それは、人の使う呪文ではなく、明らかにモンスターの使う言葉の呪文だった。


「コッコイツ、オレタチノコトバヲシッテルゾ!」


「ナンダト?」


 ゼリー人間たちも驚いている。

 我慢できず後ろを振り返ると、丁度呪文が終わった所だったのだろう、言葉は切れ、ユーシャが手を華麗に俺に向けて差し伸べる所だった。


「さあ、戦士さん、戦ってください」


 一瞬何を言っているのか分からなかったが、変化はすぐに分かった。

 身の内から、爆発するようにエネルギーが湧いて来たのだ。

 体が熱い、剣が軽い、これは……。

 家族にお前は脳みそまで筋肉でできていると言われ続けた俺でもこの状況は分かる。

 俺は剣を構え直すと、モンスターの元へと走る。

 まずは左!


「ナニ」


 俺はゼリー人間のいる木まで走ると、ジャンプしてゼリー人間との間合いを一瞬で詰め、木ごとゼリー人間を真っ二つにした。

 本当に数秒の出来事だった。

 それだけじゃない、剣から生じた風は、そのまま周りの木をなぎ倒し俺を中心に派手な音と共に仰向けに倒れた。


「カタワレ!」


 次は右の奴、俺の殺気を感じたのか、もう一匹のゼリー人間は逃げようと木から飛び降りるその姿をまた地面に着地する前に真っ二つにする。

 ゼリー人間は、水袋が破裂するように弾け飛んだ。

 後ろを向くと、反対側のゼリー人間は、もう蒸発し初めていた。


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