第二十三話 さらばラノ村
裏切り者よ、そう叫びながらモンスターはグルースへと姿を変えた。
村で様子を見守っている数多くの戦士たちは何も言葉を発さず、俺たちの動向を見守って……いや、探っていた。
動揺、殺気、困惑。
様々な視線が突き刺さる。
下手したらまた捕まるかもしれない、その前に俺がユーシャ達を守りながら逃げなくては。
ふと、身構えていた俺の隣をユーシャが通り過ぎた。
そしてモンスターが変化した大きな青いグレースの前まで来るとそれを撫で、俺でも何か聞き取れない声で何か呟くと、くるりと俺とリルマを振り返る。
「では皆さん、逃げましょうか」
そこにはいつものユーシャがいた。
しかし、俺には少し無理をしているように見えた。
ユーシャの言葉に、俺の横を駆けたのはリルマだった。
「後でゆっくり事情聞かせてもらうからね」
リルマはジト目でユーシャを見ると、颯爽と俺の前を駆けて行く。
「こらー!なにしとるのだわよ、私を放っておいて面白そうなことしないでほしいでっしゃろ!」
村の方からミミノスの声がした。
振り返ると、ミミノスが彼女と同じくらいの大きさのモノの置物に乗って、空を飛びながらこっちに向かっているのが見えた。
村の中では、皆の視線を集めているらしい、
「見ろ!モノの置物が空を飛んでいる!」
と叫ぶ声が聞こえてくる。
こんなときに目立つことしなくてもいいと思うが、あれに乗っていれば下にいる者たちに捕まることはないだろう。
「戦士さん」
呼びかけに顔を前に戻すと、目の前にユーシャがいた。
いつもと変わらぬニコニコ顔で、俺を見上げていた。
少女の格好をしているので、こう見ると謎だったユーシャの性別は女性ではないだろうかと思えてくる。
俺はまだ戦闘の興奮冷めやらなかったが、そんなユーシャを見たら少し落ち着いてきた。
「僕少し疲れてるんですよ、抱えて逃げてください」
と、ユーシャは手を伸ばす。
俺はその手を取ると、しっかりと、だがつぶさないように両腕に抱えてリルマの後を追った。
まだ「ちーと」の力が続いているとはいえ、ユーシャは小さく軽かった。
その小さい身に何を隠し、何を抱えているのだ。
その荷を俺も背負えた良いのだが。
後ろから、
「コラー!待たないかー」
と大声を出しながら追ってくるミミノスの声が飛んでくる。
月明かりを頼りに、リルマの後ろ姿を追う。
そうして俺たちは、ラノ村から逃げた。
7・森の中で、ユーシャ
かくして、俺たちはまた森の中であった。
「じゃーん、いつものリルマちゃん復活よ~」
木の陰から、男装も女装もしてないいつものリルマとユーシャが現れた。
俺はと言うと、魔法を解いた後、リルマやユーシャよりも早く着替えが済んだので、先にミミノスとともに焚火を囲んでいた。
「はー、遊んだ遊んだ、あの村本当良いわね、定住したいくらいよ、モンスターが襲ってくるのが最大の難点だけどね~」
「そうだな」
俺はリルマの張り切った声にも空返事しかできなかった。
裏切り者。
そう呼ばれたユーシャは、焚火をいじっているミミノスの隣でそれを見ていた。
「でもさ、私が男だったらあんなにモテるなんてね!ああ、あんたもモテてたか!ルアー王子に」
「そうだな」
「あのさ、知ってた?あそこタコ怪人が村を発達させたんだってね」
「そうだな」
「うりゃー!」
鈍い音が辺りに響いた。
どうやらリルマの拳骨が俺の頭に飛んだらしい。
「人が折角場の空気をどうにかしてやろうとしてんだから少しは協力しなさいよ!」
見ると、美麗な顔立ちのまま目をとがらせていた。
美人と言う者は怒っても美人なのだな。
「そうだな」
今度の返事は、少しだけ身が入っただろうか。
それを聞いたリルマは、大きくため息を付くと同時に、大きく肩を落とした。
「もう、しょうもない」
そして足を組んで岩に寄りかかると、目をつぶってしまった。
しばらくそのまま黙って焚火を囲んでいた俺たちだったが、その空気を破ったのは、意外な人物だった。
「ユーシャさん、別の星からきたんじゃなかかな」
ミミノスだった。
ミミノスは、焚火をいじりながらユーシャに尋ねる。
星?星とはあの星か?
リルマも片目を開けてミミノスに視線を送っていた。
「そうですよ」
ユーシャはいとも簡単にミミノスの問いに答えた。
「もう、色々と話さなければいけないみたいですね」
諦めたように、いや、もう大文前から諦めているかのように、すんなりとユーシャは語り始めた。




