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その日の空はとても青かった  作者: 音切風太
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第二十話 作戦会議

 それから俺たちはのぼせながら温泉を出ると、昼間行った食堂に、今度は再び魔法で男となったリルマと共に向かった。

 食堂『村の家』は、その素朴な名前とは裏腹に屈強な戦士たちで溢れ返っていた。

 ある者は笑いながら乾杯をし、ある者は1人で豆を食べ、ある者は大きな声で作戦会議をしていた。

 かく言う今の俺たちも、作戦会議中であった。


「だから、作戦とかあるのかよ?」


 リルマ青年は、根本的問題に矢を立てていた。


 俺は先にやって来た野菜ジュースを一口飲むと、


「俺とユーシャが乗り込む、魔王と戦う、やっつける」


 言うが、少々不安になって来た、それでは駄目なのだろうか。


「ダメよ!中には何があるか分かったもんじゃないわよ!じゃない、分かったもんじゃないんだぜ!」


 リルマの手元には果実酒が置かれている。

 騒がしい店内、リルマの怒鳴り声も店の喧騒にまぎれ目立つことは無い。


「それよりわっちは盛大な未来のネタバレくらってしまっただわすよ、あのルアー王子が私の子孫だというと、私結局誰かと子供作るのですかい、カー、ミミノスショック」


 酔っ払ったように、杯を口に運ぶミミノスであったが、その中身は牛乳である。

 果実酒を頼もうとした彼女だったが、未成年なので俺が止めた。

 ルアー王子がミミノスの子孫だというのは風呂上がりにリルマが軽く教えたのだ。

 普通は立派な自分の子孫に合うのは喜ばしいことだと思うのだが、ミミノスは別の感想を抱いたらしい。


「リルマさん、魔王城の攻略マップだったら、ここにありますよ?」


 そう言うユーシャの手には、『攻略!魔王城!』の本があった。

 ちなみにユーシャは俺と同じ野菜ジュースを頼んでいる。

 ユーシャもミミノスと同じく果実酒を頼もうとしたのだが、リルマが止めた。

 当たり前だ、ユーシャも未成年ではないか、そう言った俺だったが、ユーシャは呆れて「僕は戦士さんよりずっと年上なんですよ」と言い放った。

 その言葉は俺に大きな驚きをもたらしたが、まあ、そういうこともあるのかと、すぐ立ち直った。


「あら、至れり尽くせりな本ね、見せてみなさい……だぜ」


「大切にして下さいね」


「どうせ汚してもここにも売ってるだろう」


 リルマはユーシャから『攻略!魔王城!』を受け取ると、俺に見えるように魔王城のマップを見せてくれた。

 うむ。

 流石古城を拠点としてるだけあって、ベースは普通の城である。

 まずは門があり、井戸の見える庭がある。城の中に入る入口は正面一つだが、その他にも台所へ続く裏口もあるようだ。

 と、そこへ……、


「すいませーん、山もりパン粉揚げ肉5人分と、焼き立てパン5人分、山もりミモイモのフライ5人分に生野菜盛り合わせ5人分、以上ですね!」


 この量をどうやって持つことができるのか、手とお盆を器用に使って筋肉隆々な逞しい女の店員が、料理を持ってきてくれた。

 次々に机に並ぶ美味そうな料理の数々に、俺はごくりと喉を鳴らす。


「え、ちょっと、1人分多いんじゃないか?」


 リルマはほかほかと並ぶ大量の料理に慌てて店員を呼びとめようとしたが、前にいるユーシャが手を前に出してそれを止めてくれた。


「いいんですよ、戦士さんが食べてくれます」


 ユーシャの言葉に、リルマは「はあ?」と言うように俺を見上げ、俺は笑顔でその視線を受け止めるとリルマたちに頷いた。


「まあ良いわ、じゃあ食べながら作戦会議、いいわね?」


 そうして、俺は家でやってる祈りの言葉を捧げ、リルマは静かに顔の前で手を組んで目を閉じた、ユーシャは食べ物を前に何かを呟き一礼し、ミミノスは手を合わせてこう言った。


「いただきます」


 バラバラに食事の前の挨拶をすると、俺たちはフォークを持って目の前の食べ物を崩し始めた。


「うまい!」


 昼間も思ったが、この食堂の料理はとてつもなく美味い。

 パン粉揚げの肉はジューシーで、またソースが絶品で肉に良く絡みこの店のこだわりである焼き立てのパンに良く合った。塩の振ってあるミモイモのフライは中は柔らかくほっこりしていて外はパリパリ、生野菜はどれもドレッシングがいらないほど新鮮で甘みを感じるほどの美味さがあった。


「あーはいはい、で、城門から行くのは得策じゃないと思うんだが、ロープでも買ってきて2階に忍び込む?窓の鍵くらいなら破ることできると思うけど」


 リルマはミモイモのフライを口にしながら、本の一か所を指さしている。二階、中は倉庫と書いてある所である。


「それより私の魔法で透明になってこっそり忍びこんじゃいかがかい?」


 ミミノスの案はなかなかのもので、実際リルマとユーシャも感心したように彼女を見つめた。


「あ、そんなことできるんだ、それいいかも」


「いいですね、じゃあ、透明になって、二階から忍び込むというのはどうでしょう?」


 ユーシャの案にも、リルマは頷いた。

 俺は頷きながら、料理の山をたいらげて行く。

 俺は作戦とか言うのが苦手だから、彼女らの存在はとても心強い。


「まあ、トラブルがあって作戦通りになんてならないかもですけどな~」


 ケラケラと笑うミミノスだったが、リルマとユーシャは真剣に唸った。


「じゃあ、色んな作戦考えてた方がいいでしょうか……」


 ユーシャは、そこに来てやっとでミモイモのフライを口にした。

 ミミノスはさっきから生野菜ばかりを食べている。


「ミミノス、肉も食べてみろ、美味いぞ」


 言うと、ミミノスはこっちを見て、


「子供扱いはゴメンじゃね、でもちょっとくらい食べてやらんこともないわな」


 そうしてもくもくとパン粉揚げを食べ始めたが、思いのほか美味かったのか、勢い良くパン粉揚げ肉とパンを口に運び始めた。


「太るわよ」


 とミミノスに言うリルマだったが、


「育ち盛りだからいいんじゃよ」


 と返され、リルマは「このガキ」と鼻で笑った。

 ユーシャは、そんな皆を満足そうに眺めていた。

 遠くを見るような、そんな目で。


「ユーシャよ」


 それを引き留めるように、俺はユーシャに声を掛けた。

 ユーシャは、「はい、なんでしょう?」と言うように、俺に微笑みかける。

 ああ良かった。

 意味も分からず、俺は安堵する。


「お前は……」


 秘密が多すぎる、もっと教えてくれても良いだろう。

 そう言おうとした時、異変が起こった。

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