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その日の空はとても青かった  作者: 音切風太
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第十一話 森の中へ

 崩れ落ちた後の瓦礫の山を前に、俺はやってしまったと思った。

 本当なら、この国を守る役目を担いたかったはずなのに、どう言う訳だかその国の警備隊事務所を破壊し尽くしてしまった。

 後悔、そして次の後悔。


「地下の人たちは大丈夫ですかねえ」


 俺に抱えられながら他人事のように言うユーシャの台詞に、俺は青くなった。

 思い出したのだ!


「ルアー王子!」


 俺のその声とほぼ同時に、瓦礫の山の真ん中が爆発音と共にはじけ飛んだ。

 あまりにもタイミングが良すぎたため、俺の大きな声が爆発を生んだのかと思ったくらいだったが、それはないと、爆発でできた穴の中から出てきた人物を見て確信した。


「ルアー王子!」


 今度は俺の背後にいた警備兵の全員が口々にその名前を発する番だった。

 その中から出てきた人物、それは警備兵2人に支えられてでてきたルアー王子と爺の姿だったからだ。

 無事だったのか、良かった、しかしさっきの爆発は……。


「無事も無事でしょう、ルアー王子は一応大魔法使いミミノスの子孫なんだから」


 リルマは俺に目をくれることなくそう言い放った。

 大魔法使いミミノス……聞いたことがある、すごい戦士とすごい僧侶と共にすごい国を救いそのまますごい国をもっとすごい国にした後で王となったすごい者だと……。


「それはすごい」


「すごいのよ、本当は」


 俺の言葉に、リルマもゆっくりと頷く。


「ということで逃げるわよ」


 リルマが俺の腕をひっぱる。

 俺もこのままではまずいと感じ、リルマと一緒に瓦礫に背を向けそーっと歩き始めた。

 目を丸くして集まって来た野次馬たちにまぎれて、そのまま城の外に逃げるつもりだったのたが……。


「待てリルマ!あとでかいの!そしてちっさいの!」


 何やらルアー王子に呼ばれたような気がしてつい振りかえりそうになったが、リルマが俺をひっぱったまま離さない。

 周りがざわめき立ち、警備兵、ルアー王子、野次馬の民衆たちが俺の姿を探し始めた。


「いたぞ!あそこだ!」


 どこからかその声が飛んできたと同時に、俺たちは走り出した!


「捕まえろ!色々な罪で国家反逆罪だー!捕まえた奴には、多大な報奨金を用意する!いかなる手を使っても良い!捕まえろ!ただしリルマは無傷でだー!」


 次にルアー王子の声が高らかに響き渡った。

 その声が終わるか終らないかのうちに、野次馬や警備兵たちが俺を追って走り出した。


「リルマ!掴まれ!」


「はいよー」


 リルマが俺の背中にしがみついたのを確認すると、思いっきり地を蹴って空を飛んだ。

 地面は軽々と足を離れ、普段の俺が跳躍するその千倍を俺は飛んだ。

 建物の屋根を飛び、飛び越え、そして、城壁の上に飛び乗ると、下を見下ろす。

 街にいた者たちは皆、信じられないと言った表情で俺たちを呆然と見ていた。

 遠くで警備兵や街の人たちが驚きの表情を見せながらも俺たちを追ってきてるのが見える。


「トリデ城のものたちよ!すまない!これは誤解だ!この誤解はいつか説く!その時、また会おう!」


 出せるだけ大きな声でそう叫ぶと、声の大きさでびりびりと城壁が震えた。

 いかん、このままでは城壁まで壊してしまう。

 そう危惧した俺は、そのまま「待てー!」と追いかけてくる人々を背に、城壁を飛び降りた。

 鈍い音と共に地面に着地した俺は、そのままものすごい勢いで走り出した。

 遠くへ、どこか遠くへ。

 しかし、目的地は決まっている。


 5・森の中で、リルマ


「はい、これで良いですね」


 ユーシャは俺の額から手を外した。

 すると、俺の中で爆発していた力は弱まり、そのまま慣れた自分の体が戻って来た感覚がした。

 ちーと、というものになれる時間は終わりのようだ。

 場所はトリデ城より北の森の中、さらに遠くの北の山の上には魔王城の姿が小さく見える。

 空の上では太陽が夕日に変わろうとしていた、橙に染められようとしている森の中は、静かに夜の訪れを待たんとしていた。

 あれからどうしたかというと、ただただ魔王城の方向に向かい走り続けていた、目的地、すなわち魔王城である。

 そしてこの森の中にいるという現在。


「いたあ、腕や腰痛いんだけど、どんだけ勢い良く走ってるわけよ途中で落っこちたらどうしようかと思ったじゃない~」


 リルマは木々の下で大の字になって寝ながら「もう動けない」だの「マッサージしてよ誰か~」と言っている。


「まったく、15分のオーバーですよ、戦士さんはもうちょっとちゃきちゃき動いて欲しいですね」


 ユーシャもやれやれと木にもたれかかると、そのままずるずると座り込んだ。


「す、すまない」


 そう言うと、ユーシャは一つため息をついた。


「まあ、僕の力が切れる時間より大分短めに時間を教えておいたので……、良かったですけどね……」


 そこまで言って、寝息を立て始めた、寝たのか?


「ユーシャ?」


 試しに声をかけてみるが、やはり声は帰って来ない。

 ユーシャのさっきの言葉を聞いて浮かんだ疑問を聞いてみたかったのだが……。


「ユーシャ、力が切れると、お前はどうなるんだ?」


 しかしユーシャはやはり答えない。

 規則正しい寝息を立てながら、眠りの世界へと行ってしまったようだ。


「眠ったようね」


 大の字になったままのリルマが俺を向いてそう言った。

 眠ったのならば、そっとしておかなければ、さっきのちーとの魔法のせいで疲れたのだろう。

 その寝顔を見て安心したせいか、俺の腹が盛大に鳴った。


「腹が減ったな!」


 そう言えば朝ミケラの実を食べて以来何も食べていない。

 俺はその場を呆れ顔のリルマに任せると、食糧と薪の確保に行った。

 丁度ミケラの実が沢山生ってる所を見つけたので、摘んでいる途中、俺と同じ大きさくらいの熊と出あった。

 熊は俺を睨むと、勢い良く襲ってきた!

 俺は剣を構える……。

 30分後「大物を見つけたぞ」と熊を持って帰る俺に、リルマは異様な目を向けて迎えてくれた。

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