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イケメンほいほい  作者: いけちぃ
分岐ルート(俺様・チャラ男)
27/32

チャラ男ルート2




鳳巳先輩が可愛い。

この事実に気付くまでに相当数の年月を要した。

思い返せば学生時代も謎のピュアさを発揮していたし、社会人になって再会以降も度々真っ赤になったり挙動不審だったりと色々あった。

無駄にチャラくて色気ムンムンなお陰で気付かなかった。

いや、すみません、そんなに興味が無かった。

意外な反応するなぁとしか思ってませんでした。

まさかの好意ゆえと知ってから、鳳巳の愛らしさに身悶えた。

まさかのリアル乙女ゲーム、私、今、対象者、攻略中です。

なーんて非現実的な現実、萌える以外ない。

「先輩、凄い可愛いですよね」

「は?」

「目の前で王子がリアクションするって贅沢だなぁと」

「ごめん、言ってる意味が掴めない」

ケーキをつつきながらムッと眉を顰める鳳巳。

最初の発言とどう繋がるんだと苛立っているようだ。

これは、可愛い発言がお気に召さなかったか。

「それ止めない?いい加減、王子呼びは腹立つ」

ああ、気に入らないのはそっちか。

彼は昔からこの手の発言に難色を示していた。

「すみません。ただ、先輩は私には王子様なんですよね」

前にチャラ男が付くけれど。

本日も色香の濃いイイオトコだと眺めていたが、突如真っ赤に染まり瞳を潤ませる。

「えっ」

いや、えっ、は此方の台詞だ。

驚きつつ盛大に照れてますってリアクションを止めて欲しい。

この人の此れに参る。

「佐藤さんにとって、俺は王子様なの?」

潤んだ瞳で上目遣い攻撃。

どちらのヒロイン様でしょうか。

「はい、まあ、そうですね」

「何の含みだよ」

あぁー、可愛い人が可愛く攻撃してくる。

チャラ男が付きますと馬鹿正直に答えると唇を尖らせて拗ねてみせる。

うぉい!可愛いな!

計算だったら恐ろしい。

「チャラ男じゃないし」

いや、うん、もう充分。

「俺は佐藤さんだけだし、佐藤さんだけにしか優しくしてない」

萌え死ぬ!

テーブル叩いて悶えるのを必死で堪え奇声を喉で押し留める。

「でも、どんなでも王子様って思ってくれてるのは嬉しい」

ガンっとテーブルに額を打ち付けた。

止めを刺されて動けない。

「大丈夫?佐藤さん、怪我は無い?」

「・・・無いです」

焦る鳳巳に申し訳ないが顔は上げられない。

暫くそのままでいると鳳巳が髪に触れ始めた。

「佐藤さんと一緒にいたい」

脈絡無く告げられて返事に困る。

一緒にいますけど。

いやいや、これは一人言ではなかろうか。

困惑しつつそっと顔を上げると優しく微笑する鳳巳と目が合った。

「俺、佐藤さんと別れないから」

鳳巳の言い聞かせるような宣言。

反応しようがないから聞き流す事とした。





出先で見付けたカフェで遅い昼食。

オフィス街から離れている為、人通りも少なく和やかで天気も良いのでテラス席で紅茶を頂く。

至福な時間だと寛いでいた。

「誰かと待ち合わせ?」

ぼんやりし過ぎて質問は耳を通り過ぎ、向かいに座った相手を間抜けな声で呼んでしまった。

「・・・鳳巳センパイ・・・?」

本日も男前。

珍しく胸元は隠れていてネクタイ、スーツで雄っぷりが上がってますよー、御馳走様です。

などとボーッと眺め考えていたのはしょうもない事。

イスを寄せて側に来た鳳巳の手が太股に置かれ、やっと脳が覚醒した。

「佐藤さん、凄く可愛い格好だけど、誰かと待ち合わせ?」

珍しくスーツではなくよそ行きワンピースで小綺麗にしている。

だからこその質問だと理解した。

太股を揉まれ無表情で威嚇されてるので恐いですけども。

「打ち合わせを終えて一人ランチです」

「・・・仕事なんだ」

あぁ、鳳巳から嫉妬されてる。

全然嬉しくない、ときめかない、ヤンデレ降臨の気配がして嫌な汗が浮かぶ。

「クライアントに遊ばれた結果です。行きはスーツでした」

「ふーん」

「このまま社長に報告するよう指示されているので、着替えられません」

「・・・・・・凄く似合ってて可愛いから、他の男に見せるのは気分悪い」

こんなにストレートに告げられれば馬鹿でも解る。

この人、本当に好きなんだなぁ・・・私を。

「先輩もお仕事ですか」

「正真正銘お仕事ですねぇ」

いやいや、こちらも正真正銘仕事だよ。

そんなタイミングでボリューム満点サンドイッチが運ばれて来た。

戸惑う店員に飲み物を注文しスマートに追いやる鳳巳は流石の一言だ。

空腹を満たすべく食事を始めるも、ガン見されては食べ辛い。

咀嚼しながら鳳巳を見れば当然目が合った。

うわぁ、背中を這い上がるぞわぞわした感覚は何だ。

痺れに似て、かつ身体全体に広がりそう。

これは、あれだ。

18禁に引っ掛かるあれやこれやの前兆に違いない。

返しに困って、食べ掛けのサンドイッチを鳳巳の口許に差し出していた。

しまった、失礼だった!

が、時すでに遅し、仕方無く推し進めよう。

「あーん」

催促した一拍後、鳳巳が真っ赤になる。

・・・・・何に?!

どれの何に赤面要素があったのか教えて頂きたい!

「先輩、食べないんですか」

手を下げかけた所に齧り付かれる。

何故か潤目で睨まれたけれど、残念ながら愛らしいだけ。

ちょっと、もう、悶絶したいのを堪える分だけ禿げそうです。

「佐藤さんて卑怯」

「はあ、左様ですか」

「普段は塩対応なのに、たまに平然とバカップルみたいな事するし」

しかも人前で!

と続く言葉に鳳巳の赤面の意味を知る。

そこまで反応する事じゃなかろうと思うが口にはしない。

視界の先で彷徨くスーツ姿の不審者が目障りなので教える事にする。

あれは職場の同僚で貴方様をお待ちなのではありませんかと。

空気を読んだ結果、こちらに来れずウロウロされてるんじゃないですかね。

「・・・だって、佐藤さんが可愛いから・・・」

ああ、はい、もう結構ですから。

お前の方が百倍可愛いんだよ!

と脳内叫んで心を鎮めました。

「お仕事行ってらっしゃい」

早く戻れとオブラートに包んで言ったつもりが、何故か頬を赤く染めて潤目が復活した。

「もういっかい」

「はあ?」

「言って、もういっかい」

「・・・オシゴトイッテラッシャイ」

何かを噛み締めて頷き席を立つ鳳巳。

どこかふわふわしている気がして心配にもなったけれど、同僚と合流し去っていく姿を暫し見送った。

鳳巳オーダー分は責任を持って消化しレジへ向かえば精算済み。

お連れ様が、の一言がなくとも鳳巳だと気付く。

あの人、乙女みたいに愛らしいのに、完璧王子様で紳士的。

カッコいい!!男前!!

人前で叫ばないので多少の身悶えは許して欲しい。






何故だろうか、鳳巳先輩が不機嫌に見えるのは。

恒例お茶会で合流した途端、こちらを見るなり仏頂面だ。

帰った方が良いかと逡巡して席についたのは、回れ右より直接帰れと言われた方がリスクが無いから。

注文を済ませ、鳳巳と向き合う。

「何に御立腹ですか」

「聞くまでも無いでしょ」

いや、解らないから聞いたんでしょーよ。

うっかり溜息が出て、更にムッとした鳳巳に睨まれる。

「この間みたいな格好じゃない。デートなのに!」

「・・・あぁ、衣裳返却済みなので」

偶然遭遇した日の装いを思い出しつつ「え?」と呆ける鳳巳を可愛いと思う。

寧ろそっちに思考が犯されて、聞き返されるまで煩悩まみれだった。

「クライアント要望に応じたお仕事だって言いましたよね」

「・・・言ってたね」

あれ、本当だったんだ。

鳳巳から小さく呟かれた言葉。

独り言は聞き流すのが礼儀だろう。

「女子力も意識も低い私では満足して頂けないかと」

「どういう意味?」

勢い良く顔を上げたかと思えば焦りと怒りが混じった眼で睨まれる。

これは、ヤンデレ予備軍降臨の兆しだ。

「事実確認です」

「・・・満足出来なかったら別れるの?」

「さあ。先輩次第じゃないですか」

「俺、佐藤さんと別れないから」

あ、はい。

としか応えられないので沈黙を選択する。

最近同じ台詞を聞いた気がする。

数秒考えて、だから何だと思い至ったので放棄した。

「次の休みデートしたい」

チラリと窺えばヤンデレ予備軍撤退していてホッとした。

未だに地雷が読めなくて困る。

「私のスケジュールは仕事でびっしり埋まってます」

「知ってる。でも、本来は休みあるんだから調整出来るでしょ」

言われてみれば、その通りだ。

数年来当たり前に過ごしていたから気付かなかった。

「社長に断っておきます」

「うん?社長と約束してたって事?」

毎週末は社長と市場調査だと伝えれば、鳳巳の表情が固まった。

なかなか面白い現象で器用な人だなぁと感心する。

「え、ごめん、確認させて」

どうぞと促せば焦れた様子で質問が次々飛んできた。

毎週末、社長と出掛けてたの?

市場調査って何してるの?

休日に二人で街歩きって、それ、仕事なの?

いつから?

入社当時からって、え、付き合ってたとか?

違うのに毎週末デートしてたの?

現在進行形でしてるよね?

俺が恋人なのに他の男とデートしてたの?

俺とは週末過ごさないのに?

「意味分かんないんだけど」

怒濤の質問責め後の一言。

いやいや、こっちの台詞!

「まさかの佐藤さんに二股掛けられてるなんて思いもしなかった」

ワタクシは、貴方様が何を仰言ってるのか理解できません。

いつの間に社長と付き合ってる事になったのか。

「しかも、明らかに、俺が二番手」

社長が本命。先輩はお遊び。

ええのぉ、羨ましい両手に花状態だ。

もしや、望めばリアル逆ハーレム。

もしくは三角関係なんてものを愉しめるだろうか。

「何考えてんの?言い訳?それとも俺を捨てる気?」

現実逃避が過ぎたせいで鳳巳がヤバめに覚醒してた。

この人のこの眼は何度か見ているけれど、どの場面も良い思い出じゃない。

「いえ、現実逃避と言う名の邪な妄想をしてました」

「・・・このタイミングで?」

奇異な物を見る目を向けられ少し落ち込んだ。

妄想の内容を聞かれたので素直に答えれば、今度は何故か怒気を孕んだ目で睨まれる。

「最初から俺を弄ぶつもりだったんだ」

いやいや、何言い出してるの、この人。

思わず大声で「はあ?!」と叫んでしまったじゃないか。

「誇っていいよ、佐藤さん。こんな扱い受けても別れたくないんだから、見事に俺を手玉にとってるよ」

いや、だから、妄想って言ったよね。

何なの、この人、話の通じないどこぞの弁護士様みたいだ。

「凄い不愉快だし、まさかの佐藤さんに嫌悪感持ったけど」

左様ですか。

当然でしょうね、二股・逆ハーレム願望を実行されてたら。

誰でも同じように感じるだろう。

自分だったら、そんな糞野郎は即刻排除する。

ただ、すみません、ワタクシ、そんな立場にありません。

「それよりも佐藤さんを縛り付けないとって想いが凌駕してる」

あぁ、駄目な方向に流れてる。

「アンタは俺のなんだから、連れ去って閉じ込めても良いよな。俺以外を見ないよう、俺だけを愛するように調教するのは当然だよな」

鈍く光る瞳で薄く笑う鳳巳。

恐ろしくて顔が引きつれば、何がお気に召したのか笑顔が深くなる。

恐い、恐すぎる!

伝わったんだろう、声を上げて笑い出した。

これは無邪気と程遠い嫌な笑い方だ。


可愛い鳳巳先輩は何処へ?

いや、それよりも、ワタクシ、冤罪で私刑になりそうです。







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