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イケメンほいほい  作者: いけちぃ
分岐ルート(俺様・チャラ男)
26/32

チャラ男ルート1

分岐ルート17からの続きとなります。



目の前に尋常じゃない色香を放出している人物がいる。

誰あろう鳳巳先輩だ。

貴方に惹かれてます宣言してから初のお茶会ですが、まさかの事態に目が潰れそうです。

「どうかした?」

殆ど視線を上げられず挙動不審なので鳳巳の問いかけは尤もだ。

体調不良を心配される程で申し訳ないが、原因は貴方様ですよ。

ティーカップに口を付け、溜息と共に精神疲労を吐き出した。

「先輩、物凄く艶やかですね」

「はあ?」

「エロスの無差別テロみたいになってます」

「いや、言ってる意味分かんないんだけど」

いやいや、そのままの意味なんですけど。

視線を上げるも、あ、ダメだ・・・と視線を戻すのは当然だ。

「ですから、全身から溢れ出てます」

「何が」

「エロい何かが」

「・・・うん、ごめん。よく分かんない」

「いや、だから、ピンクっぽいヤバいのが周囲に甚大な被害を与えてます」

店中の人間が中てられてるので、自分だけがヤバい人ってわけではないだろう。

結論として、鳳巳の色香が原因だ。

「俺、今は普通なんだけど」

ムッとした様に、ごめんなさい、キュンとしました。

決して不真面目に聞いてるわけじゃないです。

意識的なチャラ男を発動してないのも承知で、だからこそ伝えた。

無意識ならばコントロールして下さいよと。

「幸せなんだから仕方ないじゃん」

「そ、うなんですか」

この先は聞いてはいけない。自滅の予感しかしない。

「愛おしい相手が目の前にいるからね」

「先輩・・・勘弁して下さい。沼が深くて恐ろしいです」

「沼?」

ええ、底無し沼の予感がします。

片足は完全どっぷり浸かってバランスが今にも崩れそうだ。

「佐藤さん」

反射的に顔を上げて、思わず出そうになった奇声は唇を噛んで送り返した。

「デート、何処に行こうか」

甘く溶けそうな眼差しに耐えられない。

物理的な距離が必要だ。

今すぐ此処を立ち去らなければっ。

腰を上げようとして、右手首をそっと掴まれた。

いや、いやいや、タイミング!

「どうかした?」

してますよ。

貴方様の目を見られない状態に追い込まれてます。

触れた指が肌を撫で擦ってくるので、過剰に反応した挙げ句、耳まで朱に染まってますが、何か?

「佐藤さん、物凄く可愛い反応してくれるね」

「不可抗力です」

「うん、意識してるって伝わる」

それが良いのか悪いのか判断出来ない。

間違って伝わるよりは良いのだろう。

「今日の予定決まった」

いい加減、卑猥に感じるお触りを止めて欲しい。

と、己の煩悩まみれな思考に呆れて自制心強固を図っていた為に危機察知が出来なかった。

この時、ちゃんと反応しておくべきだった。




あれ?

これ、どういう事?

「せ、先輩、事態が飲み込めてないです」

我が家の玄関で後ろから抱き締められていますが、何故でしょう。

そもそも、何故、彼と我が家に帰宅したのか。

覚えている経緯と言えば・・・ボディータッチ過多で翻弄され思考回路不能でしたって事だけ。

「入れなきゃ外で襲うよ」

発言と共に腰をがっちり掴まれ、首筋を嘗め回され、屈した結果が今の状況だ。

・・・・・いやいや、ちょっと待て。

中で襲って下さいって返答になったのではないか。

「大丈夫。酷いことはしないから」

そんな事は解ってます!

「何故こうなっているんでしょう」

「んー・・・俺が決めたから?」

ちゅうっと左耳にキスして離れた鳳巳。

やっとパーソナルスペースを保てた事に安堵したのは当然だ。

思いっきり鳳巳の視線を感じたけれど、取り繕う余裕はありませんでしたとも。




距離を置きつつ並んで座る。

話がしたいと懇願して許された、一人分のスペースが命綱だ。

既に体勢を変え躙り寄って来ている鳳巳から下がりつつ、真正面で向き合う。

「お願いがあります」

「うん」

四つん這いでゆったり近付く様は色っぽい。

肉食獣に捕獲されるのが自分でなかったら愉しめた。

流石チャラ男先輩!

あぁ、そのまま喰われてしまえ!

エロいわー。

何て画面に向かって叫んでるはずだ。

「せ、先輩、お願いがっ」

「うん。話せば?」

いやいや、話せねーよ。

仰け反って下がり続ければ直ぐに追い詰められた。

当たり前ですけどね、我が家は広くないワンルームです。

結果、壁と鳳巳に挟まれた。

頬を押し付けて首に鼻を擦り付けられる。

スベスベお肌を堪能出来ない!

首に唇らしき感触と息が当たっているので心音の脈打ちが煩く響く。

「お願いですから手加減して下さい」

耳の真下、顎のラインにちゅうっと吸い付かれる。

顎先まで辿り同じく吸い触れられる。

数度繰り返され、うっかり動けなくなった。

身動ぎひとつしようものなら、間違いなく唇同士で触れ合う事になる。

鳳巳が行っているのは誘惑だ。

容易く屈したくなる心地好さには、彼の想いが込められているからだ。

触れる度に好きだと告げられているのが伝わるのだから、抗えないのは仕方無い。

この人は恐ろしい手練です。

「わかる?」

口付けが止んだ瞬間、顎を引いた。

代わりに額同士が触れ合う羽目になった。

「好きだって言ったの」

見つめる瞳が愛おしいと告げていて慄く。

「君が好きだよ」

両手が頬を包み込み、そっと額が離される。

「とても好きだよ。伝わってる?」

触れる手。

注がれる視線。

降ってくる言葉。

彼の総てで好きだと告げられている。

そうと判る程に全身全霊で伝えて来る鳳巳が恐い。

「あれ?青褪めてる」

おかしいなぁと呟いて微笑み掛けられる。

「俺が好きなの、伝わったよね」

「つ、伝わってます」

声が掠れてしまい、慌てて首を縦に振る。

「何で青褪めるのかなぁ・・・こう、真っ赤になるとか喜ぶとか、そんな反応期待したんだけど」

左手は外れ、右手は頬を撫で擦る。

その間も視線は決して外せない。

これは駄目なやつだ。

油断や流され体質を発揮したら取り返しがつかないやつだ。

「佐藤さん」

「は、はいっ」

「俺が恐いんでしょ」

その通り、物凄く恐い。

恐怖で喉が張り付くくらいだ。

「失敗したなぁ。佐藤さんは相変わらず敏いよね」

あんなにも全身で想いを告げられれば誰だって嬉しいだろう。

心地好さに負けても当然な程の威力だ。

ただ、底が見えない事への恐怖で踏み止まった。

受け入れた瞬間に要求されるものが不確定かつ不穏過ぎる。

この人は、ヤンデレ予備軍、ヤバめの人だったと。

「流されてくれれば楽だったのに」

「・・・同意します」

「今からでも間に合うよ」

いや、無理です。

気付いた時点で手後れだ。

「佐藤さん、真面目なお話しよっか」

不穏で甘い空気が薄くなりホッとする。

鳳巳は苦笑して最初の位置まで優しくエスコートしてくれた。

いちいち完璧王子様でときめくのは仕方無い。

何故か手を繋いでいるけれど、振り解く程ではないから放置する。

「俺と君の今後についてなんだけど」

「今後・・・」

「時期がくれば後腐れなくお別れ。結婚後も関係を続ける。俺と佐藤さんが添い遂げる。選択肢は3つ」

え?お別れ一択ですよね?

「何も始まってませんよね」

心の赴くまま首を傾げれば鳳巳がムッとした。

「何言ってんの。佐藤さんは既に俺のだから」

いつだよ、所有権発生してないし、明け渡した覚えもない。

「その上でどうするか話したいの」

「普通にお別れでいいと思いますが」

未来があるとは最初から思ってない。

竜崎にも翻弄されて傷付いて戻って来いと言われたから、そのつもりだと告げたが思い切り不機嫌になってしまった。

繋いだ手が痛い。

「竜崎に言われたから俺と付き合うって聞こえるんだけど」

「まあ、そうなりますね」

「ふーん」

手が引かれ体勢が崩れた。

腰を抱かれ引き寄せられた為、鳳巳の胸に飛び込む形になった。

無駄に肌蹴けた胸元に顔を押し付けているので、唇が触れないよう顔を引く。

「気に入らない」

更に腰を抱き寄せられる。

隙間ない抱擁は鳳巳から心音と体温を伝えて来る。

「ほんっと何なの、竜崎って」

肩と背中に回された腕の締め付けが強すぎる。

変な声が出るところだった。

「佐藤さんからここまで信用されるって、何なわけ」

言われてみれば確かに。

同時に当然だ、とも思う。

「昔も今も立ち入る隙がない」

「終わるので立ち入る必要ないです」

「・・・佐藤さんは俺と続ける気がないわけね」

「先輩に無いので、私には最初から選択肢ゼロです」

気が済んだのか、抱擁から解放される。

不満げに口を尖らせた鳳巳を至近距離で拝む事にはなった。

ありがとうございます。

「俺は可能な限り、佐藤さんを所有したい」

駄々っ子か!

そんな顔で言われて絆され、最終的にはポイ捨てされて来た女性達を思う。

ああ、きっと、夢心地のまま悲劇のヒロインとして美しく幕を閉じたんだろう。

鳳巳の唯一と信じて。

この人なら簡単に出来る。

「私の所有権は私にしかありません。鳳巳先輩に渡す気も無いです」

彼の甘言にうっかり嵌まっているが、それだけだ。

はっきり告げて溜息を吐いた。

「飽きたら捨ててくれるって言いましたよね」

「・・・言った」

舌打ち後の渋々の肯定。

「ヤリ捨て上等なので後々面倒は起こしません」

一筆書きましょうかと尋ねたが、何故か傷付いたと言わんばかりに鳳巳は表情を歪めた。

いやいや、今後の事を明確にしたいと言い出したのは誰だ。

アンタだろーよ。

「俺を弄んだ挙げ句に竜崎の元に行くんでしょ」

「それ、先輩には関係ないです」

「俺は佐藤さんが好きなんだよ?関係あるだろっ」

いや、ねーよ。

何言ってるの、この人。

必死に逆ギレしているが、泣き出しそうで困る。

「別れた後の事は先輩には関係ないでしょ」

「関係あんだよ!ふざけんなっ」

いやいや、ちょっと、冷静に理性的に会話がしたい。

「鳳巳先輩」

埒が明かない。心底面倒だ。

結果、己で判る程に温度の無い声が出た。

鳳巳が我に返って肩を震わせる程度の威力はあった。

「ごめん、鬱陶しかった」

この人の評価すべき点のひとつが、想像以上にこちらを把握してる所だ。

「俺は、佐藤さんが好き」

肩を落として呟く様にきゅんと来た。

先程までのギャップと幼く見える言動は的確に萌えをついて来る。

流石は王子、チャラ男先輩!

「鳳巳先輩のそーゆー所、悶えるくらい好きです」

「えっ?!」

驚愕で目を見開いたかと思えば、耳まで赤く染めてしまう。

彼に一体何が起こったのか。

瞳まで潤ませて縋るよう見つめて来るが、残念ながら意図が全く読めません。

「もういっかい」

「はい?」

「・・・もういっかい、言って」

舌足らずの幼子のような口調でお強請りされましたが、これ、潤み目と合わせて威力抜群です。

すみません、イケない衝動が突き上げてくるんですけどっ。

唇を戦慄かせ、同じ台詞を必死に紡ぐ。

望みを叶えた鳳巳は、泣き出しそうに顔を歪め、けれど至極嬉しそうに抱き締めて来た。

感極まりを正に体現している。

「佐藤さんが、俺を好きって言った!」

言いましたが、今回が初めてでもない。

大喜びの鳳巳に疑問はあるものの、彼にとっては特別だったと解るから余計な発言はしない。

とりあえず・・・己の頬やら唇が彼の素肌に触れているので、幸いを堪能する事としよう。






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