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イケメンほいほい  作者: いけちぃ
分岐ルート(俺様・チャラ男)
21/32

俺様ルート1




専務様の勘違いと思い込みをへし折って面倒事が片付いたと喜んでいた。

「ははっ、そうかそうか、やっちゃったなー」

上機嫌な竜崎に頭を撫でられるまでは。

褒めてくれてるのは確かだが、怒っているように感じるのは何故か。

「放っときゃ良いのになー」

「時間の無駄でしょ、イイ男が勿体ない」

「楓が絆されて翻弄されて正気になった桐山に切り捨てられる様を見たかった」

鬼か!

「そうなっても俺がいるんだから怖くないだろ」

それはまあ、そうだ。

竜崎にはお見通しなんだろう。

大きな手が頬を撫でて来る。

「桐山は堅物だぞ」

「あぁ・・・うん、しかも物凄くお人好しで面倒見がいいよね」

だから何だと首を傾げる。

「そこまで解っててどうして気付かない」

声を立てて笑う竜崎の真意が分からない。

「楓は本当、自分虐めが好きだな」

いやいや、結論の経緯が見えないし納得出来ない。

終始御機嫌な竜崎に不安を掻き立てられると「ま、頑張れ」と軽い言葉を贈られた。

お陰でひとつ、己の選択が間違いだったと、それだけは判った。




『出て来い』

電話での一言に青ざめつつ従った。

マンション前で待機する黒塗りの車にも黙って乗りましたとも。

『上がって来い』

車を降りて迷う暇無く再び電話で命じられる。

超高級マンション最上階で待ち構えているだろう専務様を思うだけで溜息が漏れそうだ。

また此処へ訪れるなど想像すらしてなかった。


出迎えた桐山は相変わらず神々しい美形っぷりだった。

「何か飲むか?」

「あ、はい、頂きます」

リビングに案内されソファに座るか否かで迷っていると呆れた様子の桐山に座るよう促される。

「土下座させる為に呼んだんじゃない」

あ、はい、すみません。

珈琲まで淹れていただき、ありがとうございます。

それで本日は何用でしょうか?

「俺と恋しないか」

あっぶない!

今珈琲飲んでたら完全に吹き出していた。

「ぶっ飛んだ提案ですね」

「そうか?まあ、そうかもしれんな」

過去の執着をぶった切って何故そうなる。

「お前となら俺は俺でいられる」

「はあ・・・では友人で構わないかと」

「男女の友情は成立しない」

アナタ様の持論はどうでもいい。

「だからって何故に恋なんですか」

「お前に想われてみたい」

おぉっと、キタ!

真っ直ぐ見つめられての言葉攻め!

流石専務様っ、がっつりハート鷲掴みだ。

瞳に熱がなくとも充分にそそられる。

「・・・結局捨てられるんでしょうねー」

それでも恋をしろと。

「誰がだ、俺か?」

「いやいや、逆ですよ」

「お前が俺を捨てるんだろう」

「いや、だから、逆です。何で私が捨てる側なんですか」

「そう言っただろう」

身に覚えが有りません。

顔に出たのか専務様の眉が顰められた。

「私生活に首を突っ込む事は無いと」

あぁ、アレね。何様なイタい発言の事ね・・・

「それでよく恋しようなんて言えますね」

何言ってんだモブの分際で。

と、鼻で笑って直ぐに記憶からデリートする出来事なのに。

「だから恋しようと言ったんだ」

「・・・・・」

「そんなお前が俺を受け入れたら?どうなるだろうな。気になって考えずにはいられない」

「そ、うですか」

顔が引き攣って上手く表情が作れない。

「だから俺を愛してくれ」

聞いた瞬間、その場から、桐山の部屋から逃げ出した。

勿論、深々と頭を下げて帰る旨を伝えた上で。

勿論、相手の返事など聞いてません。






『何だ、もういいのか』

翌日の夜に電話した相手の第一声だ。

『もっと先かと思ったが、随分早かったな』

「・・・大変申し訳御座いません」

『何がだ』

ふっと小さく笑う桐山に大きく胸が跳ねる。

あぁ、沼が・・・底無し沼に足を突っ込む己が見える。

『それで?』

「有り難く受けさせて頂きます」

『・・・受けるのか』

あまりにも意外そうだったので不安が過ぎる。

これはもしや、読み違えたか。

本気かと思って真面目に応じたが、まさかの冗談でしたパターンだったとは。

「えーっと、前言撤回します?」

『何故だ』

嬉しそうに聞き返されても困る。

『断るかと思っていただけだ。付き合う事に何ら異論はない』

左様ですか。

『また連絡する。次に逢う時はデートだな』

電話を切って暫くは動けなかった。

物凄く緊張したせいで手が汗でぐっしょりだ。






特別何か変わったか?

答えは否。

相変わらず忙しい身で自由は無いし、相手もだからと何を要求してくるでも無いので今までと変わりない。

正直、恋人と言われてもピンと来ない。



いつものように会社へ赴き専務室に通され2人きり。

当然のように隣へ座る桐山に「近い」と抗議したが当然無視された。

ソファの端にずれれば同じ分だけ距離を詰めてくる。

「話しにくいです」

「そうか」

はい、ですから離れて頂きたいんです。

「次に逢う時はデートだと言っただろう」

「・・・いやいや、仕事なんで」

随分前の話だなぁと考えて反応が遅れた。

1ヶ月は経過してるが、その間、一切そういった話題は出なかった。

白昼夢か願望からの妄想だったと思うくらいに。

「お前が何も言わないからだ」

不満げに睨まれても心当たりがないので首を傾げる。

「毎朝メールをしても予定を聞いても社交辞令しか返さないのは誰だ」

言い方から察するにワタクシですか?

いえ、すみません、今まで通りのテンションで今まで通りに返していただけです。

「俺に恋するんだろう」

「いや、まあ、はい、そうです」

「俺を知りたいと思わないか」

思わないと言ってはいけないのは判る。

沈黙が肯定だとしても。

「まずは俺に興味を持て」

「・・・はい」

難題を突き付けられた気分だ。

罪悪感で溜息が漏れる。

「あの」

「ああ」

「仕事しても良いですか」

イエスの返事は貰ったが、残念な物を見る目と呆れに近い桐山の表情が胸に刺さった。


「珈琲でも飲んでいけ」

この一言で業務終了後の即時退出を阻まれた。

先程の続きと解らない鈍さはないので拒絶は出来なかった。

「あの」

「ああ」

珈琲を運んで来た美人秘書がこちらを睨んで出て行った後、向かいに座る桐山を眺めて思う。

この人やっぱりイイ男だと。

「会社でお付き合いしてる方はいないんですか」

「それでお前と付き合っていたら問題だろう」

「そうですか」

「何だ」

随分不満そうだ。

不貞を疑うとか咎める意図は全くなかったが、彼のプライドを刺激したようだ。

「はっきり言え」

「・・・面倒だなと」

「何?」

「お手つきがいると絡まれそうで面倒だと思っただけです」

その手の相手が社内外にいて当然で、よく考えれば己も渦中に飛び込んでたよ。

と、今更認識しただけだ。

そうでなくとも彼はモテる。

周りに新たな女が集れば全力で叩き落とされる、コレ、常識。

「お前は俺を何だと思ってる」

「超優良物件様」

「何だと?」

「いやいや、誉めてます。決して馬鹿にしてません」

額が青筋立って怖い。

思わず土下座したくなるのは条件反射みたいなものか。

した瞬間に怒りを増幅させるから堪えたが、蛇に睨まれた蛙状態だ。

珈琲を飲む口実で視線を外すが相手からの視線が物凄い突き刺さって痛いです。

「健全な男性なら当然じゃないですか!」

「・・・何の話だ」

うん、彼の反応は最もだ。

視線に耐えきれず叫んでおいて何だが、ちょっと落ち着こう。

「性欲処理の話です」

「・・・そうか・・・・・俺への最初の質問がそれか」

「いやいや、質問してません」

説明しただけです。

ついでに確認しただけで、桐山がどうしていようと・・・あぁ、如何、興味が無い。

「すみません」

「今度は何だ」

「興味無いとか思いました」

本当に申し訳無い。

先程からの流れでコレは駄目だろう。

「謝られた俺はどうすればいい」

いや、知りませんよ。

その、呆れて言葉も無いって態度を止めて頂けると精神ダメージを受けずに済むんですが・・・思っただけです。

言ってません。

「何なら知りたいんだ」

「あー・・・驚くほど何もありません」

となれば出来るのは誠実に向き合うくらい。

以前の二の舞だけは御免だ。

「せめて正直に向き合います」

「結論が俺に興味無しか」

「まあ、急に変化を期待しても無駄ですね」

「お前・・・どれだけ俺に無関心だ」

「もう違いますから、多分」

「多分だと?」

「はい、まあ、努力しますって事で」

信用されていないのか、即座に返された。

努力を証明してみろと。

はいはい、何か質問すればいいんですね。

「桐山さんはどんな人なんですか?」

考えて、そもそも何も知らないなぁと思った。

「俺様会長様・有言実行・堅物・お人好し」

「それは俺の事か」

「昔の貴方の印象です。今は俺様専務様・有言実行・排他的傾向有りって認識です。あぁ、後は、私が傷付けたって事しか知りません」

「印象最悪だな」

「そうなんですか?」

思わず聞き返してしまった。

露骨にムッとした桐山はご機嫌斜めなお子様そのものだ。

「俺を紹介する時は何と言う気だ」

「イイ男」

おっと、睨まれた。

拗ね顔でされても迫力半減なのでダメージは無い。

「貴方の声と顔が好みだと言いませんでしたか」

だから、それで顰めっ面しても怖くありません。

ギャップ萌えでときめく。

「本音でイイ男だと思ってます」

「今更どんな人かと聞いたのにか」

「支障なさすぎて気付きませんでした」

人付き合いとは互いを知り合う行為なんだと。

「桐山さんの好きなものから教えて下さい」

まずは第一歩。

桐山の人となりを知る事から始めよう。






あの日から朝の挨拶メールが少し変わった。

お見合いのような問答が加わって、桐山と己の住む世界は根本的に違うと知れた。

御曹司かつ会社を継ぐ者として育てられているから当然だが、共通点が無さ過ぎて困る。

いや、己のトークスキルの無さとコミュニケーション能力に問題があるのかもしれない。

こればっかりはどうしようもない。

「お疲れですか?」

「あぁ、いえ、何でもありません」

「これ見よがしの溜息でしたが」

それはどうも申し訳御座いません。

外出から戻った弁護士様に絡まれるとは思ってもみませんでした。

「仕事でトラブルでも?」

「でしたら即御相談させて頂きます」

「炬兎の事ですか」

溜息は自分へ向けてだが、それよりも何故この人の口から彼の名前が出たのか。

「報告を受けましたから」

左様で。

「飽きたら僕がお相手しましょう」

「め、滅相もないです」

「相談も浮気相手も承りますよ。いつでもね」

いえいえ、本当に結構です。

伸びてきた手に思わず椅子と後退るが襟首を押さえられ動けなくなった。

次いで右耳を甘噛みされリップ音を残して解放される。

社内はちょっとした騒ぎになっているが、弁護士様は優美に微笑んで己のオフィスに去って行く。

って、またか!

また耳ですよ!

思わずデスクに突っ伏すけれど、周囲からの雑音が現実逃避を阻んでくる。




これって不貞行為になるんだろうか・・・



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