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イケメンほいほい  作者: いけちぃ
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王子の中で怒せたくない人、ナンバー1のチャラ男副会長様。

彼とは同窓会の数日後から茶のみ友達である。

理由は勿論、拒絶したらヤンデレ降臨しそうで怖かったからだ。




カフェテラスで異性の視線を大いに集めて優雅に座っている鳳巳を見つけた瞬間、キャンセルの理由を幾つか考えた。

回れ右をしなかったのは命が惜しいから。

重い足を引きずって向かいに座れば周囲から非難の目。

鳳巳からは満面の笑みを向けられた。

「今日は早いね、佐藤さん」

「お待たせしてすみません」

「いーえ。来てくれるだけで十分だし」

嘘をつけ。

残業で遅くなって行けなかった日、深夜に電話掛けて来ただろう。

まだ待っていると。

こっちは寝ていたのに恐怖で睡魔が逃げてった。


毎週水曜。

仕事が終わって都合が良ければ集合しようとの条件だったはずなのに。


それ以来、どれだけ遅くなろうが彼の待ち合わせには応じている。

絶対に拒絶してはならないと本能が告げているからだ。

「今日は佐藤さんの男遍歴を聞こうかな」

「そんなもん聞いてどうするんですか」

「えー、秘密の共有」

相変わらず露出多めで無駄に色気垂れ流しな鳳巳は首を傾げる。

何だろう、この敗北感。

ずっと艶っぽくて愛らしい。

「秘密って程の事でも無いですけど」

「そんな事ないよ」

「まあ、語る内容なんてありませんしね」

「ん?」

「ゼロです。誰かと付き合ったことは有りません」

鳳巳の目が見開かれる。

そんなにも驚く事か?

うん、まあ、そうなんだろう。

「本当に?俺を喜ばす為の方便じゃないよね」

意味が分からん。

そんな嘘ついて何になる。

良い歳した女のちょっとした恥だろうに。

大体何故、鳳巳を喜ばせなくてはいけないのか。

全てが顔に出てたのか、鳳巳の頬は綻び目が嬉しそうに輝いていた。

うわぁ、殴りたい。

「これって運命だね」

「はい?」

「俺と佐藤さんは付き合うしかないよねー」

「いやいや、有り得ません」

恐い。

この人、色々恐い。

「鳳巳先輩は遥か遠くの人なので、手を出そうなんて思いません」

「俺達、イイ大人だよぉ?身分なんてもん障害にすらならないって」

「いえ、本当に。茶のみ友達がいいです」

これ以上話していると誘導されて取り返しのつかない事態に陥る危険が有る。

なんたって腹黒チャラ男様だ。

「俺が嫌なんだよね」

左様で。

知った事ではないから聞き流す。

「ねぇ」

甘ったるい声にゾワリとする。

「好きになってよ、俺を」

百戦錬磨な色男にクラクラする。

己の使い方を知り尽くしているから拍手を贈りたいが、踏みとどまるのに必死で余裕がない。

「好きって言ってよ」

「鳳巳先輩!止めて下さいよ、色仕掛けは卑怯です」

「佐藤さんに効くとは思えないし、それならそれでいいじゃん」

「嫌ですよ。お断りです」

「ふーん・・・俺ってそんなに魅力ない?」

圧迫されるフェロモンは無くなったけれど、今度は不貞腐れた鳳巳が出現した。

何て面倒な人だ。

「馬鹿言わないでもらえますか。アンタは魅力の塊でしょ」

女として凹むくらいだ。

「そう、なの?」

「いやいや、誰がどう見たってそうでしょう」

「佐藤さんも?」

「思いっきり誑かされてましたよ。だから止めろとお願いしたんです」

「えっ、マジで?じゃあ、もう一回、」

「無理です、止めて下さい。帰りますよ?」

お綺麗な顔から忌々しげな舌打ち。

このアンバランスさに凝視してしまうのは許してもらおう。

「俺はさー、佐藤さんに振り向いて欲しくて仕方ない」

ティーカップに口を付ける仕草も優雅で一々目を引く。

そんな人からそんな風に言われても答えようがない。

しがない平民、モブな自分がどうしろと?

「どれだけ好きだって言っても少しも響いてないし」

当たり前だ。

アイドルやスター選手やらに、好きだの愛してるだの言われて本気にする一般市民が何処にいる。

モブからすれば主要キャラとはそーゆー物だ。

「どうしていいのか、全く分かんねー」

「・・・見切りつけたら如何ですか」

無神経だろう一言に案の定、鳳巳の表情が一変した。

「ほんっと、昔っから変わんねーなぁ」

うん、正に激怒。

乱暴な口調と黒いオーラで留まってるのがマシなくらい、眼がお怒りだ。

「そこまで突き放される覚えないんだけど」

「私からすれば、拘る理由が解りません」

「知らねーよ。お前が悪いんだろ」

「そうですか。正せば絡むの止めてもらえます?」

言っていて最低だと思う。

が、多分、何処まで行っても平行線のままだろう。

ならば嫌われてしまえば解決だ。

執着するに値しないと思ってもらえばいい。

平然と実行出来るのだから、元から大した人間ではない。

「佐藤さん」

呼ばれて視線を落としていたと気付く。

予想外に怒りを沈下させた鳳巳と目を合わせて失敗を悟った。

「俺を諦めさせたいんでしょ」

その通りだから黙って耳を傾ける。

「だったら簡単。ちゃんと付き合ってくれればいいだけ」

「捨てられるの解っててですか」

「そう。飽きたら捨ててあげるから。そうしたら金輪際、俺に煩わされる事もないし」

「・・・・・まあ、私に不都合はないですから構いません」

直ぐ終わる茶番だ。

とりあえずヤリ捨てされては嫌なので、友達からでお願いしますと告げた。


この時、それは美しく微笑んだ鳳巳がひどく印象に残った。

チャラ男副会長様が腹黒だったのを忘れていた己を罵倒すべき瞬間でもあったけれど。





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