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イケメンほいほい  作者: いけちぃ
分岐ルート
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11のに

注意事項がありますので活動報告をご覧下さい






鬼畜弁護士様の気が済むまで晩酌に付き合った結果、身も心もボロボロです。

なので、折角の休日にチャイム連打とか本当勘弁して下さい。

よろよろ、よれよれで玄関のドアを開けた瞬間、外からも勢い良く引かれた。

チェーン付いてるから全開不可ですけど。

「・・・煩いです」

「何も言ってないだろう」

そうですねー、行為そのものの事を指したんですけどねー。

隙間から拝める俺様専務様は本日も実に優雅でお美しいですよ。

「開けろ」

「嫌ですよ、何の御用ですか」

「この状態で応対するつもりか」

そのつもりですが、何か?

HP未回復の瀕死状態で王子の相手など出来るか。

「電話が繋がらないから来たんだが・・・酷い様だな」

そもそもの発端はアンタですよと思うのは八つ当たりだ。

ああ、心が荒んでる。

「もう良いですか?寝たいので」

「具合が悪いのか?」

「至って健康です。ご心配痛み入ります」

「棒読みだな、おい」

「そうですか、申し訳ありません」

「また棒読みだぞ、お前。喧嘩売ってんのか」

「自棄になってるだけです」

キラキラしやがって、この美形が。

構ってくれるな。

見えない傷口に塩を擦り込まれてるみたいで痛みに苛立つ。

理由は解らないけれど、確実に怒りを感じてる。

「入れろ、話を聞いてやる」

迷ったのは僅か。

元生徒会長様には義務として愚痴を聞いてもらうと決めた。





「何があった?」

率直な俺様専務様。

今の自分には有難い。

「それはこっちの台詞です」

冷蔵庫からペットボトルの水を出して桐山に手渡し座る。

広い部屋では無い為、相手の存在感が強すぎて居心地が悪い。

「どういう意味だ」

「どうして私に構うんです」

「気になるからだ」

「それです。それを止めて下さい」

若い時なら一喜一憂して楽しめたかもしれない。

もしかして自分もヒロインになれるんじゃないかと期待したかもしれない。

乙女ゲーム大好きですからね。

「消化不良です」

「迷惑か?またそうやって俺を締め出すのか」

「迷惑ではないです。ただ、どう受け取ったらいいのか分かりません」

鳳巳の事で一層に。

このままでは確実にヤられる事だけは分かる。

「気になると言われても、私には関係の無い話です」

「何故だ?俺はお前と知り合いたいのに関係無いはずないだろう」

「まあ、そうですね」

桐山の言っている事は正論だし納得する。

それでもやはり他人事だ。

「・・・鳳巳先輩に言われたんです。既成事実作るのが丁度良い、何度も抱いて啼かせてイかせ続けたら意識してくれるでしょって」

何だ、やっぱり自分の所為か。

ヤンデレ降臨は不実な己が招いた結果だ。

ぼーっとした頭で納得していたら握り潰さんばかりの力で手首を握られた。

痛みを訴えようと視線を上げ、直ぐに逸らした。

怖い、怖い。

眼力5倍増しで突き刺さる!

「鳳巳が何だと?」

はい、やらかしたー。

後の祭りですねー・・・

い、痛い痛いっ。捻りまで加わった!

「あいつとそういう関係なのか」

「ち、違います、とんでも無いです」

激しく頭を振るが桐山の怒りが収まる気配は無い。

「だったら何だ。どういう事だ」

「成り行き上の会話です!」

「どんな成り行きだ?どうしたらそんな話になる」

「お、覚えてない・・です・・・」

もっとマシな言い訳をしろ。

目を泳がせて嘘丸出しではないか。

お前は馬鹿かと自分で呆れる。

案の定、専務様の逆鱗に触れた。

乱暴に引きずり倒されて伸し掛かられる。

何故だ。

今度は何故こうなった?

「鳳巳に何をされた」

過った記憶に恐怖も蘇る。

現状と合わせて混乱しそうで必死に感情を抑え込む。

「無理強いされたか?それともお前も応じたのか?」

「ちが、違う、」

「あいつはどんな風に触れた。お前は?喜んで受け入れたか」

押さえ付けられた手首に爪が食い込む。

「俺を拒んであいつを選ぶのか?何故だ?」

怒り一色だった瞳に別の感情が滲んだ。

見覚えがあるそれは、竜崎が偶に見せる情欲そのもので怯んでしまう。

鳳巳があの日に見せた物でもあるから。

「同じようにすれば俺を受け入れるか・・・?」

自答して顔を近付けて来る桐山。

必死で顔を背けたけれど、舌打ちした桐山の手で顎を押さえられ更に体重を掛けられてしまう。

完全に身動きがとれない所へ最初は口端。

僅かに離れ、次に唇へとキスされた。

言動とは反対に優しい口付けは、愛おしいと言われてるようで戸惑う。

唇が離れお互い暫く見つめ合う。

濡れた瞳が色っぽいわぁ、さすが美形!

眼福・・・とか思うな、馬鹿。

「随分と余裕だな、慣れてるのか?」

第一声がそれか。

殴りたい。今すぐ急所を殴ってやりたい。

「放して下さい」

「・・・そう急くな。もう少し楽しませろ」

ニヤリと笑う俺様。

スチルゲット!・・・て、おーもーうーなー。

状況を考えろ。

「私は楽しくありません」

「そんなにあいつが好きか」

誰がそんな話をしてる。

「安心しろ。俺は充分満足させてやるぞ」

何をだ、何を!

望みは解放と冷静に話せる環境です。

「もう・・・勘弁して下さい・・・」

泣けるものなら泣きたい。

これも自分の所為なのか。

俺様を追い詰める、何をしたと言うのか。

抗う気力すらなくて溜息をつけば桐山は眉を顰め不満げに上から退いた。

御丁寧に手を貸し起こしてくれるので大人しく従った。

「不満そうだな」

「いえ。ゴチソウサマデシタ」

「お前・・・喧嘩売ってるな」

滅相も御座いません。

体育座りで膝に顔を埋めていると何故か頭を撫でられる。

ぎこちない、けれど気遣っていると判る優しい手付き。

「嫌だったか?」

「・・・レア度高ぇとか思った時点で頭可笑しいと思います」

「そ、そうか、よく分からんが・・・嫌じゃなかったんだな」

声色に嬉しさが滲んだ気がする。

好意を抱かれてるのではないかと思うじゃないか。

恐ろしい妄想をしてる己が怖い。

「あの、お願いなんで手加減して下さい」

「何の話だ」

「以前も言いましたが、有り得なくてもときめくので過度な接触とか勘弁して下さい・・・」

「嫌じゃないなら構わないだろ」

「欲望のまま襲ったらどうするんですか」

責任取れませんよと叫んだら残念な物を見る目を向けられた。

「襲われたのはお前だろう」

「まあ、そうですね」

「随分と他人事じゃないか」

そんなわけない。

こっちは被害者なんだぞ。

と憤るくらいが当然なのにね。

俺様専務様の艶めき半端ないって感想しか無い。

「すみません」

「・・・鳳巳の気持ちがよく分かった」

左様で。

「お前は例え好意を伝えても微塵も響かないんだな」

「そうなんですか?」

鋭い眼に睨まれた!

「お前の話だろう」

更にめちゃくちゃ低音ボイスで凄まれる。

「だ、だってですね!過去一度も告白された事がないので分かりません」

「一度も?無いのか?その歳で」

はい、そうです。

純粋な驚きが心にダメージを与えてくれる。

「お前・・・どうやって生きて来た」

「現実逃避です」

憐みの目を止めろ。

誰より自分が解ってますから。

「いや、待て。鳳巳がしていただろう」

「ライクとラブは違います」

何故か専務様が黙り込んだ。

「これも以前言いましたが、身の程を弁えてるつもりです」

同情など無用だ。

言ってて切なくなるけれど・・・今に始まった事じゃない。

「楓」

おっと、名前呼ばれた。

凄い破壊力ですねー。

しかも魅惑的な瞳に見つめられている。

これは心臓への負担がっ、負担がヤバい!

「俺がどうしてキスしたと思う」

「はい?・・・え?」

「考えろ」

命令もあって幸いに視線を外す。

思考に集中すべく雑念を払い、少し落ち着いて質問を反芻する。

いやいや、知らねーよ、そんなの。

俺様じゃないし、頭の中を覗けるわけない。

強いて言うなら鳳巳への対抗意識だろう。

何て迷惑な、いや、役得なのか?

「お礼を求めてます?」

「あ?」

凄まれた。滅茶苦茶、怖い。

思った事を聞いただけだと言うのに。

「答えになっていない」

「キスしてやったから感謝しろって意味では、」

「無い!お前、いい根性してやがるなぁ」

違う、喧嘩は売ってない。

必死で頭を振って青ざめる。

「鳳巳先輩への対抗心だと思います!」

「何だと?俺はどれだけ最低なんだ」

「知りません。間違ってます?」

「・・・・・厳密には違う。焦りが正しい」

「へぇー」

「少しは興味を持て」

面倒そうなので正直聞きたくない。

そろそろ帰ってくれないだろうか。

「俺はお前を気に入っている」

「はあ、ありがとうございます」

棒読みに桐山は眉を顰めたが話の腰を折る事はしなかった。

「他の連中も気に掛けているのは知っているが、俺の入る余地が無くなるのは困る。だから鳳巳と関係を持っていると知って焦った結果がああだ」

「いえ、あのですね、先輩と関係なんて有りません」

「隠す必要はない。あいつが珍しく執心しているからな」

「いやいやいやいや、だから!誰ともセックスしてませんて!!」

「お前、慎みはないのか」

叫ばせたのは貴方ですけどね。


それから何故か説教へシフトした。

「危機感がない」から始まり、最終的には「色気が無い」で落ち着いたらしい。

つまりは俺様専務様に見合う人間ではないぞと?

そういう事なら最初から弁えてますけど。


「油断してるとまた襲うぞ」


聞き流していたのがお気に召さなかったのか一言。

色気感じない相手にその気になるのかと考えていたら、ニヤリと笑い「試してみるか?」とのお言葉。

全力拒否したら腹を抱えて大爆笑された。

・・・ストレス解消のサンドバック気分です。




こんな人、部屋に入れるんじゃなかった。

話を聞いてくれるのではなく、やりたい放題振る舞っているし。

結局問題は解決せず。

NOを言わせない男、桐山炬兎という厄介事が増えただけだった。






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