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イケメンほいほい  作者: いけちぃ
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同窓会を終え解散した所で俺様会長様に捕まった。



「家まで送ってやる」

「結構です」

何て嬉しくない申し出だろう。

即答して睨まれる。

この人、本当綺麗な顔をしている。

特に日本人離れした眼に惚れ惚れするが、それで睨まれると迫力あり過ぎで怖い。

「いいから来い」

「いや、本当、嫌ですって。飲み過ぎたし歩いて帰りたいんです」

「そうか」

視線が和らいでホッとしたのも束の間、何故か手を繋がれた。

うわぁ、指も長いし当たり前だけど大きいなぁ。

とか思って抵抗するのを忘れてました。

「まずは駅まででいいんだろ」

「え?あ、はあ、そうですけど・・・」

そのまま手を引かれ歩く内に事態に気付く。

「な、何で会長様まで?」

「送ると言ったろう」

「了承してませんが」

「歩いて帰りたいとしか聞かなかったぞ」

ハイ、そうですね。

この人が引かないと判るから口を閉ざした。

昔も今も、俺様なのは変わってない。

「あの、せめて手は放して下さい」

「何故だ。俺はこのままがいい」

チラリと視線を向ける会長様の色っぽさ!

心臓に負担が掛かるっ。

「どうした、気分でも悪いのか?」

「いえ、会長様の破壊力に免疫が無いのでダメージが・・・」

繋がれていない方の手で胸を押さえ動悸を抑えるべく集中する。

「言ってる意味が分からん」

分からなくて結構だ。

「おい、無視するな」

無視してません。

耐えてるだけです。

まあ、黙ってるから会長様からすれば無視になるのか。

「おい」

少し苛立ちを含んだ声と怪訝な面持ちで覗き込んできた美形。

心臓へのダメージが倍になった。

妙な呻き声を上げてしまったが、気合で赤くなるのは防ぐ。

このタイミングで真っ赤になったら弱味を提供する事になるから御免だ。

「大丈夫か?」

「大丈夫です。お綺麗な顔を近付けないで下さい」

「何を怒ってるんだ」

「怒ってませんよ。物凄く困って照れてるだけです」

「・・・・・お前が?」

ああ、もう駄目だ。

腕で顔を隠してみるが、会長様の驚愕振りからして無理だったらしい。

完全に赤くなった事を知られた。

ついでに興奮し過ぎで瞳も潤んでいる。

「その反応は何だ」

「っだから!放れて下さいって!!」

「お前・・・俺の顔に赤くなってるのか」

「近いんですよ!」

「・・・俺の顔は好みか?」

「お、お願いですから放れて下さい!頭が全く回らないっっ」

言われてる事の半分も理解できてない。

必死に懇願してやっと会長様は身を起して放れてくれた。

全速力した後のように息切れして荒れた呼吸を治すのに何度も深呼吸。

頭上から痛いほどの視線を感じるが、今は無視だ。

脳を正常に戻すのが最優先。

「はぁー」

疲れた。

大きな溜息を最後に自分でも落ち着けたと確認する。

そのタイミングで頬に触れた会長様の指先にビクリと体が震えた。

「質問に答えろ」

目を合わせられ、一瞬息が止まる。

それから記憶を遡る。

「会長様の顔は好みかどうか、よく分かりません」

「だったら俺が好きなのか」

「それも違います。あ、でも・・・好きなんですか?」

赤くなったのは好意があるからだろう。

となると、人柄というより外見に惹かれる部分があると考えた方が正しい。

基本、俺様は好みじゃない。

この顔ありきの性格でもあるので文句はないが。

「凄く良い男だと思ってるのは顔が好みって事なんですかね」

「知るか。お前の話だろう」

「そうでした」

悪びれず同意すると舌打ちされた。

一気に不機嫌になったのがダダ漏れな雰囲気で判る。

再び歩き出したが、どうせなら手を離してくれればいいのに。

溜息もつきたくなるさ。

「あのですね」

ペースはこちらの歩幅に合わせてくれているが、会長様の不機嫌な原因が正直鬱陶しい。

呆れた調子になるのは許してもらおう。

「別につきまとったりしませんよ」

「何だと?」

「身の程は弁えてます」

その辺の女性みたいに会長様の美貌に靡いたのが気に入らないんだろう。

寧ろそれが普通だと言ってやりたい。

この人が割と自分を気に入っていた理由の殆どが“好きにならない”からだと今なら解る。

だから幻滅して怒っている。

まあ、それで嫌われてしまえば良いとも思う。

言いたいことは言わせてもらうけれど。

「こーゆー事されても勘違いしません」

繋がれた手を掲げてお前にも原因があると示す。

「ただ、私も一応女なのでときめくくらいは許してもらえませんかね」

暫し黙り込んだ会長様。

空気が緩んだようで視線を上げると目が合った。

どこぞの悪役みたいにフッと笑みを零し。

「許す」

の一言。

これ、悶絶しない女なんていないでしょ。

何たる格好良さ!

見事なスチル画像ゲット!

くらいなテンションになる。

「おい、また赤くなってるぞ」

会長様の笑い声が実に愉しげである。

「・・・破壊力半端ないっすねー・・・」

間抜けな感想しか言えず、また笑われる。

ハイ、結構です。

イケメンっぷりを間近で頂いたので道化でも何でも受け入れますよ。



終始ご機嫌だった会長様とは駅でお別れしました。

家を知られたくないし心臓がもたないとの理由でキッパリ拒否しましたので。

何がツボだったのか。

大いに笑い、目尻に溜まった涙を拭いながら引いてくれた会長様。


また連絡するとのお言葉は聞こえなーい。

本気じゃないし社交辞令、そうに違いない。



形式的な礼を述べて電車に駆け込み、帰宅する頃には疲れ果てていて、そのままベッドへ倒れ込んだ。

目覚めて直ぐ、習慣で携帯をチェックした事でまた疲労が襲う。

見なきゃ良かった。

有言実行の男。

俺様会長様のメールなんて・・・






心の平安と忙しさを理由に放置してたら嫌な所で再会した。

そう、職場でだ。

新規の取引先のようで社長の営業スマイルが半端ない。

秘書として控えている自分の方が愛想悪いくらいだろう。

見目麗しい男の最大の魅力と言っても良い印象的で強い瞳がこちらへ向く度に緊張で強張る。

決して目を合わせたくはない。

なので終始俯き気味に影に徹して事無きを得た。




満足気な社長の隣で廊下を歩きながらスケジュールの確認をしつつ伝えていると美声に呼び止められた。

名指しでね。

しかもフルネーム。

スルー出来ずに立ち止まりぎこちない動作で振り向けば、当然、会長様でしたとも。

「彼女を少々お借りしても?」

この社長なら二つ返事で差し出すに違いない。

引き攣った顔で隣に視線をやれば素晴らしい笑顔で「どうぞ」と言った。

しかも背中を押して早く行けと催促されました。

絶対、いつか訴えてやる。




先程まで商談していた部屋に再び押し込められた。

共にいたはずの社員は既におらず2人きり。

ドアの側で立ち尽くしていれば冷気を纏った会長様に手首を掴まれ力付くでソファーに投げ飛ばされました。

座らされたとかじゃなく、投げられてぶつかった先がソファーってだけだ。

何て恐ろしい。

怒りを散らして仁王立ちしてらっしゃいます。

「あ、あの、ご用件は・・・」

重圧に耐え兼ねて口を開いたのがまずかった。

更に強く睨まれた。

「お前は何か?俺のメールを無視するのが趣味なのか」

そんな趣味は無い!

必死で横に頭を振るが怒りが緩む気配は無い。

「どうして返事をしない」

恐怖で青ざめつつ回らなくなった頭でどうすべきか悩む。

正直に答えるべきか、適当な言い訳をするか・・・

この状況で適当な言い訳をしようものなら逆鱗に触れるのは必至だろう。

正直に答えても同じ結果な気はするが、それでも誠実さではマシだ。

意を決してその場で土下座した。

「関わるのが面倒でシカトしました!!」

そして叫んだ言葉に会長様の反応が恐ろしくて顔を上げられない。

暫しの沈黙。

「お前、本当イイ性格してやがるな」

笑いを含んだ声。

そっと視線を上げると口元を手で覆い笑っている会長様がいた。

この人のツボが分からん。

「女がいつまでも床に座るな」

「は、はい」

「全く。土下座なんて初めて見たぞ」

「私も初めてしました」

会長様の空気は大分緩んでいるけれど、とても安堵出来るほどの余裕は無くてソファーにへたり込む。

大企業の御曹司で次期社長。

現在は専務取締役のポストに就いている元生徒会会長様こと“桐山 炬兎きょう”に睨まれて今後生きていけるか?

無理に決まってる。

社会的に抹殺なんて容易いはずだ。

名刺交換しておいて彼がそんな偉い肩書きだったなんて知ったのはつい小一時間前。

この会社に出向いて初めて知りました。

全く持って笑えない。

「それで?」

憔悴して考え込んでいた為、いつの間にか隣に腰掛ける相手に気付かなかった。

声がして密着しそうな距離にいると認識した。

しかも問い掛けの意味が解らない。

優雅に足を組み、ソファーの背に腕を投げ出している様が実に美しい。

見惚れる反面、居心地が悪くて身を縮めて少しでも距離を取ろうと試みる。

「3週間振りの感想は?」

甘くなった声に鳥肌が立つ。

この人、絶対態とやってる。

「感想ですか?相変わらず麗しいですね」

少し体をずらすが桐山の腕に阻まれた。

ソファーにあった手がこちらの肩に移動していたからだ。

挙句にグッと抱き寄せられて逃げられないばかりか密着度が上がった。

ヒッと悲鳴を漏らすのは当然の権利だと思う。

「俺に逢いたくは無かったか?」

「はあ?!」

「俺の顔を好きでトキメクんだろう」

「そうですけどっ。出来たら今後も関わりたくないです!」

押しやるのにビクともしない。

「無理だろ」

「無理ですね」

あっさり事実を突き付けられるから諦めて溜息。

無駄な抵抗も止めた。

このまま次期社長様の身体を堪能してやる。

「どうした、大人しいな」

「役得ってのを楽しもうと思いまして」

「・・・情緒がない」

「有ったら困る癖に求めないで下さい」

この間の一件は忘れてない。

取引先相手となった以上は暇潰しの玩具扱いだろうと受け入れるしかない。

どうせいつもの事だ。

「気が済んだら放して下さいよ」

「・・・・・」

拘束が解かれたから離れれば、難しい顔の桐山がいた。

「何か」

「いや・・・今後はちゃんと返事をしろ」

「善処します」

これも接待だ。



主要キャラが我儘なのは今更。


彼等はそれが許される人達なのだ。


それなりに譲歩するのも自分の務めだと自覚してる。




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