27
私は昼間に起きたこと、脳裏から離れないジョージ君の表情から眠れないでいた。幾度か、アヘンを使おうかと思ったが、頭が、それを否定していた。
彼の瞳……開かない瞳……美しい、瞳。
私は寝台から下りて、ガウンを羽織り、カーテンを開けた。暗闇と雪が覆う世界を見て、すぐに ジョージ君の邸宅を見た。
彼の容態はどうなのだろうか……? いつも明るい笑顔を浮かべ、周りを和やかにするジョージ君……。けれど、彼がそうする度に、私はもう一人の彼……ジョシュア君に惹かれていった。
彼の、刺すような冷たい眼差しが私の心を虜にした。
切れ長の瞳が、私の心を捕らえて離さない。彼の美しさ……何者にも代えがたい……。現実から逃避をするように、私はそう、考えていた。
……どの角度から見ても完璧に造形された彫刻のような……。
形容などとてもできない……その片割れを傷つけたビクトリア……。
私は変に高揚していた。彼らの美を手に入れられたらと……ジョージ君は私に言った。一緒に遠くへ連れて行けたらと……。一体、遠くとはどこなのだろう?
行けるものなら行きたい。彼らと一緒にその場所へ……。
私が求めるものは、ひとえに美しいもの。何のくもりもなく、傷一つなく……。
それこそが私を退廃の世界に導き、得も言われぬ感覚に陥らせる。
たゆたいし流れ……神々の恩恵にあずかりし世界というのならば、どうか、彼の瞳をもう一度、開かせて下さい。
確かに人間は私を含め、原罪を皆もっている。正しい人間などいない。
エデンの園で蛇に身を変えたルシフェルに言われるがまま、リンゴの実を食べたイヴとアダムのように……。
よってアダムとイヴは園を出ていかなければならなくなった。
けれども、主は人間を愛しておられた。自らの姿に似せ、魂の息吹を吹きこみし人間を。だからこそ、毛皮を二人に与えたのだ。
主は、すべての人間を愛しておられる。
だからこそ、ノアの一族だけを残し、愛する人間を滅ぼすのは最後と決めた証しに、空に虹を示しになった。
……主よ。どうか、ジョージ君をお救い下さい……アーメン。
私がおすがりできるのは、主、のみだけなのですから……。
お母様……お母様……。




