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ソラヌムドゥルカマラ  作者: 佐伯亮平
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 使用人たちはクリスマスの準備に右往左往している。居間には、オーナメントで飾られたモミの木が堂々と王様のように鎮座している。

 モミの木は、ドイツから伝わったと執事が教えてくれた。北欧神話の主神であるオーディンを崇めていたドイツ人が、聖木である樫の木に、生贄を捧げる風習があった、と。そのことに心を痛めたキリスト教の伝道者が、主神の聖木を切り倒すと、倒れた木の間にモミの若木が生えていたからだそうだ。

 いまだ、木の先のオーナメントは、頂上のシュピッツェを付けているご家庭もあるらしいけれど、私の家では赤い硝子のクーゲルのまま。昔は、葉のない林檎を差していたとお祖母様から聞いたことがある。林檎はアダムとイヴが食べた禁断の実を表しているらしい。赤色はイエス様の血。そして、これが緑ならば、永遠となる……。

 今はまだ無いけれど、クリスマスまでに、モミの木の下はプレゼントで埋まる。私はサンタクロースさんに感謝の意を込めて、ミルクとクッキーを置いておく。今頃は、ノース・ポールの横に建てたお家の中で世界中の子供たちに配るプレゼントを用意しているのかも……そう思うと、少し可笑しくなって、私は笑みをこぼした。

 私がサンタクロースさんに願うクリスマス・プレゼントは……白薔薇を模したアイボリー・ブローチ……。そんなことを無意識と意識の狭間の中で考えながら、私は外を見る。

 お母様は春をことのほか愛していらっしゃった……。けれども私は、小さな時から生命の息吹となる季節よりも、夏……枯れゆく秋、そして、すべてが凍てつく冬が好きだったように思う。

 雪に覆われる朝、触れた瞬間に、凍りついた花弁はなびらが欠け落ちる様と同じく……。

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