22
飲み終えた私たちはカップを戻し、メリーゴーランドの手前までやって来た。木馬が上下する度に、辺りへと驚きの声が響く。
「みんな、楽しそうね」
「……そうだね。君も、乗ってみたらどう?」
「そうしたいのだけど、何だか……その、恥ずかしくて……」
「そう」
「……ジョシュア君は、乗らないの?」
「僕はいいよ。興味ないから」
「そうなの……」
それ以上返す言葉もなく、私は再びメリーゴーランドを見た。ロンドのように、繰り返し、繰り返し、木馬は回転している。幻想的だなと思う私の手に冷たい感触がした。空を見上げると雪が降ってきていた。
「雪……」
私の言ったことに反射したように、ジョシュア君も空を見上げた。
「粉雪、だね」
「そうね。初雪だから」
私はそう答えた。最初は少なかった雪が、少しずつ増えていく。……雪の中に佇むジョシュア君は例えようがないほど美しかった。本当に、人間なのかと思うほどに。
「あの、ジョシュア君…………」
それから先、〝ビクトリアのことが気になるの?〟という言葉が出てこない。返事を聞くのが怖くて……。
「……」
「……ずっと、あのお屋敷にいる?」
とっさに出た言葉とはいえ、自分でもおかしいと思ったけれど、もう遅い。多分……ジョージ君の言った〝永遠〟が、気になっていたからかもしれない。
「さあ、それは僕にはわからないね」
返ってきた言葉はしごく当然のものだった。
「ごめんなさい。おかしなことを訊いてしまって……」
「気にしなくとも構わないよ。そろそろ行こうか」
ジョシュア君は静かにそう言って、私に背を向け、歩いていく。
彼の背中を見ていると、なぜか切なさと苦しさがともに湧きおこり、心の底から、それらが這い上がってくるような感覚に襲われる。それと同時に顔の中心が痛くなり、私は涙を流していた。




