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「……」
「……ビクトリアは、すっかり自分の物だと言いたいようだね」
「彼女は……我が強い、から……」
私はそう言って彼を見た。無機質な瞳は、氷のように冷たくなっていた。
「だろうね」
「ええ……」
私はどうしていいか、わからなくなった。ここにお母様がいたら、何と仰るかしら……。私はそう思いつつ、おば様の顔を見た。
「さあ、あなた達も好きなところに行っていいのよ。私は、執事さんとご一緒するから。ジョシュア、ベアトリスさんをちゃんと、エスコートしてあげなさい」
「わかったよ、母さん」
「じゃあ、またあとでね。ベアトリスさん」
「はい」
おば様は、夜に映えるドレスを翻して執事と去って行った。
「どこか、行きたいところはある?」
そう、平坦な声でジョシュア君は言った。
「……あの、じゃあ、メリーゴーランドをもう少し近くで見てみたいかな」
「オーケー。行こう」
私の手を取ってくれる……ことはなく、彼は歩き出した。期待していた自分を恥じたのと同時に、どうやったらビクトリアみたいに男の子と仲良くなれるのか、接することができるのかが頭をよぎった。