17
「ベアトリス」
「何? ジョージ君」
「もし良かったら、僕の家の薔薇園へ来ない?」
「いいの?」
「ああ、もちろんだよ」
彼は微笑んで言った。
その薔薇園は、ジョージ君のお屋敷の敷地を抜けた、奥まった場所にあった。まるで隠されるように。薔薇は小ぶりながら、鮮やかな赤色をしている。
「……きれい」
「だろう? 母さんが手入れしてるんだ」
「そう。でも、赤色の薔薇だけなのね」
咲き乱れる薔薇を見渡しながら私は言った。
「ああ、母さんが好きなんだ」
「ジョージ君も?」
「そうだね。でも、僕は白薔薇の方がいいかな」
薔薇に触れながら彼は言った。
「……私も色の中では白が一番好き。薔薇もプリムラ・ブルガリスも……」
「そうなんだ。僕と同じだ」
「ええ」
私は微笑んで言った。
「よかった。元気出たみたいだね」
「ありがとう。ジョージ君のおかげよ」
「どういたしまして」
彼は右腕を胸につけ、左腕を背中に回し、脚を引くという、貴族のようなお辞儀をした。
「ふふ」
「ベアトリス」
「どうかした? ジョージ君」
「君は、永遠を信じる?」
「永遠……?」
「君を連れて行けたらいいのにな」
「連れて行くって、どこへ?」
「ずっと、ずっと、遠いところだよ。今、いるところよりも……」
そう言って彼はまた、薔薇に触れた。