15
*
愛していた
すべてを投げうってでも共に居たいと願った日々
けれど、過ぎ去りし刻はその情熱を私から奪い去った
美しかった日々……人としてあれた日々……
願わくばもう一度、この手に……
そこまで読んで、私は詩集を閉じた。
生前、お母様が愛読なさっていた詩集。心のうちが、素直に表現された詩。読むたびに、人の愛は時に儚く、時に重く……強く……弱く……そう、重なっている気がする。
少し開けた窓の隙間から入り込む風が、レースのカーテンを揺らす。それには冬の気配が混じっていた。そのまま外を見ていると、ジョシュア君のお屋敷から、ジョージ君……? が、出てくるのが見えた。私に手を振って、「おいでよ!」と言いたげに合図をしている。私はお母様の詩集を本棚に戻して部屋を後にした。
「こんにちは! ベアトリス」
「こんにちは。ジョージ君」
「今日、ビクトリアはいないの?」
「ええ、お継母様と買い物に行っているの」
「そう」
「ジョシュア君は? ジョージ君」
私は話しの流れに沿って訊いてみた。
「ジョシュも買い物だよ。母さんに付いて本を買いに行ってるんだ」
「……そう」
「残念?」
私の顔を覗き込むようにジョージ君は言った。……同じ顔なのに、二人の性格がここまで違うことに、私は少し驚いた。
「そんなことはないけど……」
「ふふ。ベアトリスは、嘘が下手、だね」
「……」
「ところで、そろそろ降誕祭だね」
「そうね」
「今年は、クリスマス・カードを君とビクトリアに書かないとね」
「ありがとう、ジョージ君」
「どういたしまして」
ジョージ君はそう言って満面の笑みを浮かべた。ジョシュア君には決して見られない、笑顔。
「ところで、サンタクロースにお願いするプレゼントは決めた?」