表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソラヌムドゥルカマラ  作者: 佐伯亮平
15/27

15






  愛していた


  すべてを投げうってでも共に居たいと願った日々


  けれど、過ぎ去りし刻はその情熱を私から奪い去った


  美しかった日々……人としてあれた日々……


  願わくばもう一度、この手に……



 そこまで読んで、私は詩集を閉じた。

 生前、お母様が愛読なさっていた詩集。心のうちが、素直に表現された詩。読むたびに、人の愛は時に儚く、時に重く……強く……弱く……そう、重なっている気がする。

 少し開けた窓の隙間から入り込む風が、レースのカーテンを揺らす。それには冬の気配が混じっていた。そのまま外を見ていると、ジョシュア君のお屋敷から、ジョージ君……? が、出てくるのが見えた。私に手を振って、「おいでよ!」と言いたげに合図をしている。私はお母様の詩集を本棚に戻して部屋を後にした。





「こんにちは! ベアトリス」

「こんにちは。ジョージ君」

「今日、ビクトリアはいないの?」

「ええ、お継母様と買い物に行っているの」

「そう」

「ジョシュア君は? ジョージ君」

 私は話しの流れに沿って訊いてみた。

「ジョシュも買い物だよ。母さんに付いて本を買いに行ってるんだ」

「……そう」

「残念?」

 私の顔を覗き込むようにジョージ君は言った。……同じ顔なのに、二人の性格がここまで違うことに、私は少し驚いた。

「そんなことはないけど……」

「ふふ。ベアトリスは、嘘が下手、だね」

「……」

「ところで、そろそろ降誕祭(クリスマス)だね」

「そうね」

「今年は、クリスマス・カードを君とビクトリアに書かないとね」

「ありがとう、ジョージ君」

「どういたしまして」

 ジョージ君はそう言って満面の笑みを浮かべた。ジョシュア君には決して見られない、笑顔。

「ところで、サンタクロースにお願いするプレゼントは決めた?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ