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「怒りに飲まれてはいけません。あなたの魂を成長させる試練なのですから。それを乗り越え、真珠のように魂を成長することができたなら、あなたは同じく真珠でできた天国の門をくぐることを許されます。罪を悔い改めなさい。そして、祈りを欠かさず行い、これからもミサへ出るように」
「はい……」
「それでは、神のゆるしを求め、心から悔い改めの祈りを唱えてください」
「神よ、慈しみ深く私を顧み、豊かな憐れみによって犯した咎をお許し下さい。悪に染まった罪深い私を清めてください」
両手の指を交互に組み、私は唱えた。
「全能の神、あわれみ深い父は、御子キリストの死と復活によって世をご自分に立ち返らせ、罪の赦しのために聖霊を注がれました。神が教会の奉仕の務めを通してあなたに赦しと平和を与えてくださいますように。私は父と子と聖霊の御名によって、あなたの罪を赦します」
「アーメン」
「罪を赦して下さった神に感謝をささげましょう。では、喜びと平和のうちにお帰りください」
「……ありがとうございました」
私は馬車の窓から外を眺めながら息を吐いた。告解をしたのは初めてではない。前にしたのは、お父様がお継母様をお迎えになられた時。けれども、今回はあの時のように私の救いにはなってくれなかった。……なぜか、鬱屈した感情が晴れない。それがどうしてなのか、自分でもわからない……わからないけれど、ジョシュア君が言った、抑圧という言葉が頭に浮かんでは消えていった。
馬車の窓を台にして通りすぎていく、ゾーイ・トロープのような風景を私はただ眺める。――往来を行く恋人たち、夫婦、子供……。
私にもいつか、喜びから始まり、苦しみに終わる刻を過ごさなければならない日々が訪れることを思うと……あの、吐き気がこみ上げてきた。