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ソラヌムドゥルカマラ  作者: 佐伯亮平
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 歩を進めるたびに、散り落ちた枯れ葉が音を立てるので、小鳥が木から飛び去り、辺りが静かになった分、川のせせらぎがより強調される。

 ここには長いこと来れないでいた。すべてがお母様のことを思い起こさせるから……。けれど、今は違う。この場所は館と同じ、私とお母様だけの世界。アリスが行ったところのように、閉ざされた、場所……。眸を閉じると、小川に指を浸し、ナーサリー・ライムのオレンジとレモンを口ずさむお母様の姿が浮かぶ。――いったい、いつ返すの? オールド・ベイリーの鐘がつめ寄る……。思い出しては口ずさんでいた。ベッシー・ベルとメアリー・グレイも……。

 そんな風に、ずっと、ずっと、続くと思っていた世界は私の思いに反して、いとも簡単に崩れ去ってしまった。

 私たちは、大人の人たちから見ればまだまだ幼くあるのだろう……隠された巣で育つ雛鳥のように。風音を聴き、梢の先から伝い落ちる雨滴を眺め、少しずつ……少しずつ……巣立ちへと近づいていく。けれど、その途中、温かな巣から冷たい地へと落ち、息堪えてしまうこともあるかもしれない……。

 そんなことを考えながら、私は、深い夢想の世界へと落ちていく。

 ――そこで聴こえるのは、お母様の声だけ……。

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