あなたをつかまえたい
あなたをつかまえたい。
粘土に指を押しこんで、
第二関節までの深い手応えがほしい。
なのにあなたは
つかまえどころがなくて
私の手は宙を掻くだけ。
あなたの空っぽの微笑みの上を
素通り。
あなたと、後ろの風景が
同質に見えてしまったの。
あなたの心のありかはどこですか?
走るあなた
近づき遠ざかる。
遠近法を駆使した絵の中を
自由自在に移動するあなた。
あなたという生き物が、
今はここにいる。
教室の私の隣の席に座って。
少し前は向こうの窓の前にいた。
一時間前は、その窓から見える
渡り廊下を歩いて。
私に気づいたり私に気づかなかったり、
あなたの視線は宙を飛ぶ蝶のよう。
あなたの見る世界にいる私。
私の見る世界にいるあなた。
透かし絵のように重なったり
ふいに方向転換したり
あなたの世界と私の世界。