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第五章 クローノ (転) 3


 雨の中、神殿兵たちが帰還していく。首謀者の死体も回収したと報告があった。任務は全て無事完了だ。

皆、気が抜けている。それぞれのちの報奨に気分が飛んでいるようだった。

 その中に、同行して歩くクローノとアーシアの姿もあった。

 周りを隙間なく囲まれたその姿は、まるで連行されている犯人のようだ。

 よく見ると、クローノがアーシアを支えている。

 アーシアは意識がないようだった。


「ヨロヨロ歩いてんじゃねーよッ」


 後ろの兵に小突かれてクローノは真っ直ぐ歩き出す。後ろを振り返ることはない。

 彼の視線は、目覚めないアーシアにだけ注がれていた。

 先頭が大通りを抜け、神殿の敷地内に入ったようだ。


「ふう、やっと帰って来たか。さーてこれから熱い風呂にでも入るかな。メシはいつものあの娘のいるメシ屋に行って……」


 クローノのすぐ前を歩いていた神殿兵が一人言を漏らすのが聞こえた。

 しかし、彼のささやかな望みは永遠に絶たれることとなった。

 ヒュン………ズムっ……ドサッ

 倒れてきた男の額に矢が一本刺さっていた。目を見開いて、信じられないという顔で。


「な……!?」


 ヒュンヒュンヒュンッッ!

 いきなり周りに矢の嵐が吹き荒ぶ! 周りの神殿兵たちが次々と倒れてゆく。


「一体どうなってるんだ!?」


 混乱しながらもクローノは棍を回転させ、降り来る矢を退け続ける。

 腕の中の彼女だけは守らなければ!


「何やってるの、今のうちに逃げるわよ!」


 そう考えた途端、いきなりアーシアが起き出してクローノの腕を取った。


「は……? あ、あれ? アーシア、……気がついてたの」

「決まってるじゃないの。気絶したフリをして逃げるチャンスを待ってたのよ。常識でしょう? いいから、ほら行くわよ!」


 なぜか()ねたように元気の無いクローノに首をかしげながら、アーシアは混乱の中を走り出した。


       ◇  ◇  ◇


 神殿の奥、宮と呼ばれる建物の三階に、<ラマ>の部屋があった。

 このセレンシア神聖国において、最高位である<ラマ>。しかし現在その部屋にいるのは<ラマ>だけではない。椅子に座る老人を囲んで、紺地の青装束の隠密兵が5名。そしてその前に立っているのは、このセレンシア神聖国において将来を約束されたエリ-トのはずの、ナーガ・イスカ・コパであった。



「……どうしてなのか、理由を訊いてもいいかね」


 現<ラマ>であるリュース・アル・ナムシンが口を開いた。元大司教の声は、現役を退いてなお、張りのあるバリトンを響かせていた。

 窓から遠い何処かを見ていたナーガが振り向く。


「ほう、知りたいと仰るのかな<ラマ>よ」

「……………」


 クスクスと可笑おかしそうに笑い、ナーガは続ける。


「それとも以前のようにお師匠様とお呼びすれば宜しいのでしょうかね?」

「どちらでも良い。説明のしやすい方にしたまえ」

「では、リュース様と呼ばせて頂きましょう」

「好きになさい」

「君たちは出ていて欲しいな」


 一瞬、そう言われた青装束たちの間に否定の空気が流れる。しかし、彼らは部屋を出ていった。そしてドアを閉め、最初から廊下にいた者と一緒にその外で見張りを始めた。開放された老人は椅子に深く腰掛け直し、目をつむる。


「10年前、リュース様。ボクは貴方に教えを受けていた。懐かしい記憶です」


 それを眺め、ナーガは静かに話し出した。




 あの頃、ボクは幸せだった。

 勘違いしないでもらいたいですが、満たされていたという意味ではありませんよ。

 何も知らないという状況が幸せだった、そう言っているのです。

 ですが、あの日が来てしまった。全てを知る事が、あれほど悲しいことだとは知りませんでしたよ。そんなこと、貴方は教えては下さらなかった……。

 あれは、12歳の誕生日を間近に控えた休息日のことでした。

 ボクは、見てしまったんですよ。

 何十年も立ち入り禁止と言われ封鎖されていた、奥院最奥のドアの向こうに、人が入っていくのを。

 その日は祭日で授業もなく、祭礼もなく、珍しく暇な一日だった。

 忘れ物さえしなければ。

 ボクはその日、忘れ物を取りに神殿内に入り込んでいました。

 勿論、その日は一日中、神殿全てが休日で、敷地は門で閉ざされていました。しかし、ボクは鉄網が破れた通風口を知っていたので、そこを通って入り込んだんです。

 あの時は、見つかったらどうしようと心配でした。

 それまでは知ってはいても、その通風口を使ったことはなかった。誰も知らない抜け道を自分だけが知っている。それだけで良かった。それだけで、少年だったボクは満足でした。

 しかし、前日から読み進めていた本を机の中に忘れてしまった時、ボクの中で何かが囁いたのです。あの秘密の入口を使ってみたい、と。

 今はもう、その本の名前は忘れてしまった。それだけのものでしか無かったんですよ。 事実、ボクはその囁きの後は、本のことよりもただ、【秘密の通路を使って入ってはいけない場所に入る】という行為そのものに魅せられてしまった。

 愚かなことです。その後、自分がどれだけ苦しむかも知らずに。

 そしてボクは建物に入り、さらにその人物を追いかけて最奥のドアをくぐっていったのです。




「どうしました、すごい汗ですよ? いつも冷静な貴方がどうなされたというのです?」


 リュ-スの顔から、汗が噴き出していた。少しも止まる気配が感じられないまま、汗はいつまでも出続ける。わずかの間に、さきほどまでの超然とした態度が一変し、国の最高権力者は一介の「人」の顔に戻っていた。

 それを見ているナ-ガの顔は笑っていない。声も。なのに、なぜかリュースには、その顔が笑っているように見えていた。そして、泣いているようにも。


「続けましょうか……」




 そのドアはいつも閉まっていた。開いている所など見たことがなかった。

厳重に鍵がかけられたドアは、学生の中でも色々噂されていました。どれも荒唐無稽な憶測に過ぎませんでしたが。

 誰も見たものは居なかった。真実を……。

 その事そのものが幸せなことだと気付かないままで。

 そして愚かなボクは、引き返せないドアを潜ってしまった事を、すでに引き返せなくなってから気付いたのです。

 そう、その奥に広がっていたものは、悪夢そのものでした……。

 始めは宝の山かと思いました。なにせ、見たことも無いたくさんの発掘品が並べられていたのですから。

 しかし、そうではなかった。そうではなかった……。それは、その人物をやり過ごし、次の部屋に入った瞬間に一瞬で理解できましたよ。なにせ、あれ程おぞましいものはそれまで、見たことがなかったのですからね。

 そこに収められていたものは、禁断の遺物たちだった。最初の部屋にあったものは、遠隔系の殺傷兵器でした。5世紀前の大戦争、そこで使われた【銃】や【砲】という名の個人兵器の、山だったのです。

 そこは武器庫でした。大きさや威力、種類のそれぞれ違う、禁忌として封印され忘れ去られた兵器、【銃】の。火薬銃、電気銃、磁力銃、電磁力射出銃、そして光の銃。そして神話の神罰と同等以上の威力を内包した【砲】と【爆弾】。さまざまな威力と発射機構を備えた兵器の山でした。

 だが、それだけではなかった。それだけなら、ボクも忘れることができたかもしれない。歴史の貴重なコレクションとして胸に仕舞うことができたかもしれません。しかし、次の部屋にあったもの、<あれ>だけは………。

 その部屋にあったもの、それは床から天井にまで達したガラスの様に透明な柱の群れでした。そしてその中には、たくさんの管が配置され、その中心には、……。

 異形の者たちが浮いていたのです。




「あの時、後で戻ってきた時ドアが開いていたのは、私の閉め忘れでは無かったわけか……」


 下を向いたまま、リュ-スはつぶやく。


「ええ。ボクが逃げ去った痕跡だったのです。貴方が勘違いしてくれたことに、感謝しなければなりませんね。でなければ、今ここにボクは居なかったことでしょう」

「……………」

「続けてもいいですか?」


 リュ-スは無言だ。


「……続けさせて頂きますよ」




 あまりの恐怖に逃げ去ったボクは、通風口の中で震えながら、今見たものを思い出していました。緑色の液体に浮かぶ、醜い怪物たちの数々を、その恐ろしい異形の様を。

 しかし恐怖を押さえながら思い出していると、色々と疑問が湧いてきました。

 最大の疑問は、【あれは何だ】ということでしたが、それ以外にも、【なぜ一つとして同じ姿のものがいなかったのか】ということや、【よく見えなかったが、奥のほうに見えた人そっくりのものは何だったのか】、そして、【神殿の上層部は、この事にどこまで関わっているのか】という疑問です。

 なにせ、どう見ても発掘されたものには見えなかった上に、どう見積もっても、貴方一人で実行できる数ではなかったからです。

 そこで次の日から私は、それらを調べ始めた。

 勉強をしながら、いや、勉強すると見せかけて、図書室や資料室を漁りました。

 時には閲覧禁止の極秘資料室に忍び込んで。

 そして半年。ある一文を見て、ボクは、心の底から打ちのめされました。

 極秘資料室に、忘れ去られたように押し込まれていたレポ-トでした。あんなものがあんな所に、素人が忍び込むことのできる場所にあったこと自体が、この国のあまりの凋落ちょうらく ぶりを示していると思いませんか?

 その中には、この二百年に渡り神殿の一部の者たちによって続けられてきた、実験のことが書かれていました。

 その内容は、熾烈しれつ の一言でしたよ。

 永年の混血で失われてしまった古代種であるセレンの血筋を、もう一度復活させるために行われた人体実験の数々。そのために繁殖させられていた、何も教育を与えられずに育てられた実験用の使い捨て人間たち。その成れの果てのホルマリン漬けの山、山、山。

 悲しかった。……むなしかった。

 自分が信じてきたもの全てが崩壊するのを感じました。

 そして決定的な一文。

 わずかに何人か記された、ある程度の成功例たちの名前。

 それが、今のこの現状の理由です。




「その中に自分の名前を見つけたときの絶望は、誰にも解りはしないでしょうね」


 淡々とした話し方。それが、より深く、ナーガの心の闇を表していた。


「その瞬間私は、信仰、生まれ育った国、仲間、友、そして師匠。その全てを失ったのです……」


 じろりと視線を項垂れる老人に落とす。視線の中の老人は動かない。ピクリともしない。

 何処からか、地面を揺るがす振動が二度聞こえた。


「………今のは、何、だね………」


 項垂れたままリュースがした質問に、ナーガが答える。


「神殿兵たちの全滅の音ですよ。第一の部屋にあったものの中で最大の代物、【時空砲雷】を使ったね」


 【時空砲雷】。時空の振動波を球状に打ち出す大砲のことだ。当てられた目標は粉微塵に形も残らず消滅する。


「……………………………………………………………」

(この様な小さな男の為に造られたのかボクは……)


 ナーガは何も語らず動かない老人に背を向けて、ドアに向かって歩み出す。


「その後ボクはファルシオン帝国に留学を希望しました。その結果は、もうお話しなくてもお解りですね」


 ドアを開ける。


「さようなら。もうお会いすることもないでしょう」


 後ろ手にドアを閉めた。隙間から、頭を抱え椅子から崩れ落ちるシルエットが、見えた気がした。


       ◇  ◇  ◇


「クローノ、これからどうするの?」


 神殿の中庭の茂みに隠れながら、アーシアがクローノに訊いた。


「アベルを待つ」


 その口調は、アベルがここに来ることを、欠片も疑っていない様に見えた。


「……いいけど、来るの? 本当に」

「来るさ。あいつは、そういう奴……だよ」


 気絶していた間にどの位の時間が過ぎたかは判らない。しかし、辺りは薄暗くなり始めている。そして、

 帰りの道程の中で、覆面と思われる男の遺体が見つかったと伝令が走るのを聞いた。あの覆面がアベルにとって、どんな人間なのかは知らないし解らない。

 しかしクロ-ノは、わずかな会話の中で、二人の間に共通の何かがあることを感じていたのだ。ほんのわずかの嫉妬と共に。


「来るさ。ばか、だからね……あいつも……」


 忍び込むとしたらここを通るしかない。その位置で、クロ-ノは茂みに隠れ押し黙った。



 ようやく本降りになった雨の中を、ひたすらアベルは走っていた。

 街に入り、裏通りを抜け、見上げる程高い巡らされた白亜の塀をひらりと越え、神殿裏に忍び込む。

 見つからないように遠回りして山を越えた。街に入る時も暗闇の時と場所を選び、さらにペイントによる変装すらほどこした。裏通りを抜る時も、建物の屋上や影をたくみに、時間をかけて利用した。張り巡らされた白亜の塀すらも、簡単に乗り越えて神殿裏に忍び込む。今のアベルの身体能力は、クローノが見ていたとしても驚くレベルに到達していた。絶望と怒り、ただそれだけを糧にして、たった数ヶ月で彼はレベルを上げていた。


(ナーガ)


 なぜかここまで、神殿兵に一人も会わなかった。

 しかし、アベルはそんなことは気付いてもいなかった。気付いていたとしても関係無かっただろう。

 居たらいたでつき進むだけなのだ。今の彼には、もう。


(どこだナーガ、どこにいるっ!)


 それでも厳しい訓練で身に染みついた本能か、無意識に人の気配を避けながら神殿の奥へ入っていった。この間通った中庭へと続く道筋。

 普通であれば、彼ら神官戦士が一生入ることの無い領域。

 神官たちの領域へ。



(来る!)


 クローノは気づいていた。アーシアには判らないだろう。自分だけがこの気配に気づくことができる。それだけは確信していた。それだけは確かだった。何年も同じ道場でしのぎを削った相手だからこそ判る、自分とシンクロする気配の糸。

 足音はしない。しかし確かに気配はする。

 獣にはない、怒りと憎しみと哀しみを混ぜ合わせた気配。

 人の気配だ。

 ほんの少しの時が経ち、草を擦る音が抜けていく。その瞬間、クローノは立ち上がって、その人物に声をかけていた。



「アベル、どこへ行くんだ?」


 後ろから声が来た。知っている声だった。7年間毎日聞いていた声。


「クローノか」


 アベルは振り返って答えた。


「無事、だったんだな」

「お陰様でね」

「そりゃあ良かった。ああ、悪いな今急いでるんだ。ちょっと行かせてくれないか?」


 おどけて言う。クローノは一瞬だけ、昔に戻った気がした。一瞬だけだ。


「どこへ?」


 アベルは頭を掻く。


「また、訊くのか」


 何度も、何度も掻く。血が出そうに掻いて、血走った目を向けた。


「何でお前はそうなんだいつも! 何でもお見通しな顔をして、何でも理屈で通そうとしやがる……お前は何様のつもりだクローノ!ああ!? それともナニか? 俺のすることは全部お前に報告しなくちゃいけないのかよ!」

「そうじゃないよ、でも、今回はちゃんと聞いておかなくちゃと思ってるよ」

「なんでだ!?」

「知らなきゃ、手伝えないじゃないか」

「…………は?」


 目を点にして見返すと、クローノがくすくす笑っていた。



 クローノは笑っていた。アベルにあんな変な顔をさせたのは、多分自分だけだろうなと思った。

 何とか真面目な顔を思い出してから続ける。


「父さんが標的なら行かせる訳には行かない。でも、他の事なら手伝えるよ」


 アベルも真剣な顔に戻って、答えた。


「お前、自分が何言ってるか解ってるか?」

「解ってるつもりだよ」

「頭おかしいんじゃねえのか!? さっきはおれを止めるとか言っといて、いきなり正反対のこと言ってんだぞお前?!」

「正反対なことじゃないよ」

「はぁ!?」

「ぼくはずっと、君を助けたい。そう言っていたじゃないか。違うかい?」

「……」

「ぼくの目的は、君を助けることだ。救うことだ。君に人殺しはさせない。君が後で後悔するようなことは絶対させない。でも、……少々法を犯すことくらいは、良いんじゃないかなこの際さ?」

「……馬鹿だろお前」

「うん。最近ぼくもようやく気がついたんだ」


 二人の少年がにらみ合う。


「おれはナーガを殺すぜ。神殿もぶっ壊す」

「止めるよそれは。それ以外なら手伝うさ」

「馬鹿だろお前」

「お互い様じゃないかいそれ?」

「………いいのか?」

「友達だろ。ぼくはまだそう思ってるけど? 違うのかな?」


 今度はアベルが笑っていた。皮肉っぽく、豪快な笑顔で。


「違わない、さ。そうじゃなくなるのが悲しかったくらいだぜ、親友」

(男の人って、ばか?)


 草の陰から聞いていたア-シアは呆れていた。それと同時に、可笑しくてたまらなかった。

 良く判らないけど多分きっと、羨ましいから。

 笑いが止まらなくなって困っていたら、少年二人が呆れた顔で覗き込んでいた。



「ナーガ司祭の部屋は、こっちだよ」


 クローノが先頭に立って案内していた。

 アベルとアーシアは、神官の礼服に着替えて変装している。

 クローノのアイディアだった。

 まだこの奥院全体には正体不明(クローノたちはアベルの説明で大体判っていたが)の集団の事は届いていないようだ。だから、誤魔化せるはずだ。

 押し寄せる闇と非常事態に混乱して走り回る知り合いから、声をかけられる。


「おやクローノ君、帰ってきたのか。後ろの二人はどなたかな?」


 何度もそう訊かれたが、「辺境からの旅の神官を案内してるんです」と答えると皆納得して去っていく。そういう事はよくある事だったからだ。代わりに「何かあったんですか?」と訊いてみているのだが、誰もハッキリと状況を理解している人間はいないようだった。

 しかし同時に、「そのホッペタの手形はどうしたんだい? おや、後ろの方も」と訊かれたのにはまいった。


「いえ、まあ、済みません急いでますのでっ」


 笑っているところを覗かれた腹いせに女の子に叩かれた、とは言うわけにはいかない。

 なにせまだ後ろで怒っているのだ。


(なんで叩かれなきゃいけないんだよ……)


 かなり、理不尽だった。



 司祭の個室が連なる区域は、閑散としていた。

 非常事態なので本殿や市外で走り回っているのだろう。もしかしたら、もう敵に捕まっている人もいるかもしれないが。


「どうする、出直すかい?」

「いや、いないならそれはそれで好都合だ。俺が見たのは神殿兵じゃなかった。まずは背後関係を洗い出してやる」

「だいぶ冷静になったようね、安心したわ」


 その言葉に、アベルとクローノは顔を見合わせる。


((そりゃ、理由なく女の子に叩かれれば頭が空っぽにもなるわなあ))


 一人はため息をつき、もう一人は肩をすくめた。


「鍵、開いたわよ」


 いつの間にか先に部屋に入っていくアーシアを見て、二人はもう一度同じ動作をくり返した。



 ナーガ司祭の部屋の中は、廊下以上に閑散としていた。

 本当に今人が住んでいる部屋なのか、疑問に思えてくるほどだ。


「なんだこりゃ、何も無いじゃないか。ほんとにこの部屋なのか?」

「間違いないよ。でも……確かに何もないね」


 本棚もタンスもカーペットも、当然あるはずのマンダラすら無い。あるのは薄いシーツの敷かれたベッドと、何も上に置かれていない小さな机ひとつだけ。


「どうやら元々物が少ないところにきて、さらにわずかに残っていた物も持ち出した、って感じかしら」

「どうしてかな」

「そりゃ、出ていく為だろうよ」


 肩をすくめる。


「でも、アベルの話だと、ナーガ司祭はこの国を乗っ取るつもりのように聞こえたんだけど」

「ンー……俺もそう思っていたんだが……」


 その時、ツカツカと部屋中を歩き回っていたアーシアが何かの紙切れを持ってこちらにやって来た。


「これを見て。ベッドの下に落ちていたわ」


 差し出された紙切れには何かの暗号のようなメモと、ナーガ司祭のサインが書かれていた。クローノ達には見覚えがない。重要な内容のようだが、解読には時間がかかりそうな気がした。


「きっと、見つかっても解読することはほぼ不可能。そう思って完璧に掃除をしなかったんだろうね……」

「多分な……せめてどういう暗号かだけでも判れば……」


 男二人で鼻を寄せ合い唸る。が、良い考えは浮かばない。そこへ予想外の方向から助けが来た。


「この暗号は見覚えがあるわ。ファルシオン帝国諜報部で使われている暗号よ。内容は判らないけど」


「!! なんだって!?」


 どうして、スカウト学校を出たての彼女にそんな知識があるのだろう。クローノの中にふと疑問が浮かぶ。この国にそこまでの知識があるのなら、これほど大胆に裏をかかれることもなかったろう。つまり、アーシア個人の知識?


(だとしても……いったい、どこでそんな他国の機密を……?)

「……なるほどね、そういうカラクリかよ」


 アベルは疑問に思わなかったようだ。今はそれを気にしても始まらないと、クローノも黙り込んだ。と、頭を上げたクローノは、メモを持ったアベルがこぶし を握り込んでいるのに気づく。手の甲に浮かび上がる血管の束。どれだけ力を込めているのか。


「アベルアベル! それ、証拠品……」


 声をかける。が、間に合わない。メモは手の中で粉々に粉砕されていた。


「え? あっ」


 急いで手を開くと、粉になった紙切れがその動きで宙に舞った。


「……………すまん」

「いやまあ、きっとあんなんじゃどうしようも無かったよ、と思う。うん……多分」

「何やってるの!? それより、急ぐわよ。司祭の後ろ楯が帝国と判った以上、目的は国の乗っ取りなんてものじゃないわ。下手したら国が無くなるわよ」

「いや、でも今更そう言われても」


 そこまでの事態となると、一介の学生上がりに何ができるとも思えない。知り合いを逃がすくらいか? それに。


「つーか、こんな国守ったってな……」


 アベルが如実にやる気を無くした態を取る。


「じれったいわね! 国を潰すためには何が必要かしら? 建物を壊したって局地的な戦いに負けたって国が滅びる訳ではないのよ? 国が滅びるっていったい何? 考えてみなさい!」


 アーシアの怒りが爆発した。

 その言葉に二人はハッとする。国を動かしている存在、最高議会!


「父さんが危ない!」 「じーさんか!」


 アーシアはもう走り出している。二人はアーシアを追って走り出した。


       ◇  ◇  ◇


 ナーガは、現神官長が臥せっている部屋に向かって歩いていた。

 すでに<ラマ>と現大司教の身柄は押さえている。他の19人議員も抑えた。あとはプルーノだけだ。


(もうすぐ、……もうすぐすべてが終わる。これで、ボクも……)


 伝えられた、ジニアスの最後の言葉を思い出す。


(友……だと……? ボクに友など居やしないさ……)


 この10年間、すべてこの日の為に生きてきた。そう、今日の日の為だけに……


(友など、必要無い)


 扉に手を掛けた。


「待てよ、アンタ。その扉から手を放しな」


 体が静かに止まる。


「君か……。今更何の用だい? ン、ああ、まだ彼女の墓の場所を教えていなかったね。南のカナル山の中腹の、神殿が見下ろせる位置に建ててある。行ってあげるといい。では、ボクは忙しいからこれで……」


 体をドアに向けたままで口を開く。


「待てって言ってるんだよ、ナーガ司祭!」

「まだ、何か?」


 視線はドアを睨んだままだ。


「本当に、墓を作ってくれたんだな……。嘘かでまかせかと思ってたよ……。スカウトは普通、機密保持のために共同墓地に埋められるか骨壺しか残らないのに。……ありがとな、感謝してる。……でも、悪いな。今はそっちの用じゃないんだよ」

「ほう? 何かな困ったね。今は本当に急いでるんだが」

「……なぜジニアスを殺した?」


 ドアの方を向いていたナ-ガが振り返った。わずかに首を振る。


「おやおや、彼は気に入った人間にしか名前を明かさないはずなのに……。いつの間に仲良くなっていたんだい? びっくりしたよ」


 いつもの堂に入った芝居がかった仕草が余計に大袈裟になっている。馬鹿にしているのか、それとも……もしかして動揺しているのか。


「ごまかすな! アンタの部屋でメモを拾ったよ。掃除が下手糞だぜ、クロ-ノを見習いな。実はあいつの得意技だ」


 ナーガがへえ……という顔で今度こそ向き直る。メモの意味に気づかれるとはさすがに思っていなかったらしい。正面からアベルを見る。


「神官と司祭では必要な能力(スキル)が違うのさ。そういえばそのクローノ君はどうしたんだい?」

「アンタのお仲間を食い止めてくれてるよ」

「なるほど。いい友達、だな」


 皮肉を込めたつもりだったようだ。だが、妙に力のない言葉だった。


「ああ、本当にな。だけどアンタにも居ただろう。なぜ殺した!」

「いないさ……そんなもの……」


 正面を向いて、ただ瞼だけが下を向いていた。口だけが哂う。


「……………………」


 一転、ナーガはまた芝居の様に大げさにため息をついた。


「フゥ、仕方ない。いいだろう、教えてあげよう。この計画には彼の死が必要不可欠だったのさ。彼の名字を聞いたかい? マク・ベ? 違うね。本当の名前はジニアス・F・ハウザ-。帝国の上級貴族の三男坊さ。内輪はともかく、公式には現在失踪中のね。だから、いくら賊の首領とは云え、その彼が惨殺されれば、陰ながら帝国が動いても他国に言い訳が立つんだよ。ちなみに彼の実家には了解を取ってある。勘当同然の息子が国の役に立つと喜んでおられたよ」


 にこやかに穏やかでない内容を話すナーガ。芝居か本気かいまだに判断がつかない。しかし、少なくとも今は笑顔で笑っている。アベルは俯いて震えていた。握った拳を持ち上げる。


「なんだよそれ……そんな事の為に友達を殺したってのかアンタはっ!!」

「ボクに友達など居ないと言ったろう!!」


 仮面が崩れウェーブの黒髪の青年が怒鳴った直後、

 ド ウ ン ッ・・・・・・・・

 いきなり轟音がした。廊下に響く音が止み、アベルは利き腕を押さえて膝をついていた!


(な、何だ……?)


 ナ-ガの後ろに隠していた右手が前に伸ばされていた。その手の中に、煙を吐く鉄の筒が握られていた。歩いて近づきながら言う。


「【銃】というんだ。これはこの国の秘密の一部に過ぎない。が、すばらしい威力だろう? そう思わないか?」


 ゴリィ! 銃口をアベルのこめかみに押し当てて訊く。


「……くしょう……!」


 脂汗が滴り落ちる。腕に穴が開いていた。どこか大事な筋でもやられたのか、腕が満足に動かせない。痺れているだけならいいが。


「今の一時期は平和だ。この国の周りだけは。だが人は愚かだ。いつかまた争い出す。しかしこれが世に出れば、泥沼の戦争は無くなる。必ず無くなる。そう思わないか?」

「アンタ……本気で言ってんのか!? そんな事したらよけい泥沼が広がるのがオチだ!アンタにだって解らないはずはないだろう!?」

「解らないね」


 狂信者の顔だった。瞳の中に深すぎる悲しみが宿っていた。消し去るにはもう深すぎる闇が。


「相手に同じ武器があればそうだろう。だが、これは発掘品だ。しかも改良も加えてある。複製技術そのものが失われている場合、君の不安は的外れでしかない。そうは思わないかい……?」

「……………!!」


 怒鳴りつけようとしてアベルはナ-ガの目を見た。だがそこで固まってしまう。冷水を浴びたような気がした。

 虚ろな目がそこにあった。生きている人の目ではあり得なかった。


「いや、たとえそうだったとしてそれがなんだい? 君の言うとおりだったとしてもそれが何だというのかな? どっちでもいいのさ。どうでもいい」

「なっ!?」


 押し当てた銃口がさらに強く押し込まれ、当てられた額がゴリゴリと音を出す。


「建て前だよ。ボクはただ、ボクを造り出した者どもに、いったい何を造ったのかということを、知らしめてやりたいだけなんだ」


 アベルにはナーガの言っている意味は解らなかった。しかし、それが破滅を意味していることだけは解った。ナーガ本人までをも含めて、すべての。


「させねェ!」

「邪魔をするなら君も死ね」


 ぐっ、引き金にかかる指に力がこもる! 撃たれる! だが。

 ガシッ! カランカランカラン……。


「っ!」


 飛んできた棍に手を打たれ、ナ-ガの手の中から銃が吹き飛んでいた。



「下手糞な説教ですね。そんな程度では誰も説得できませんよ、ナーガ司祭」

「クローノ!」


 アベルは叫び、クローノの後ろに後退する。拾った棍をクローノに返した。


「大丈夫かアベル」

「少し時間をくれ。処置をする。2分で大丈夫と口にできる」

「分かったよ。というわけですので、しばらくぼくがお相手をしましょうか、司祭」


 ナーガは武器を奪われた。普通なら焦る場面のはずだ。しかしなぜか転がった銃を急いで取りに行くでもなく、痺れた手を振りながらゆっくりと振り向く。


「……まさか、もう全員倒したとか言わないよねぇ?」

「まだ4、5人ですよ。残りは信頼するパ-トナ-に任せてきました」

「おやおやまた自己犠牲かな……。ハッそういうの好きだよねえ君たち。戻ってあげなくていいのかな? そこの彼に同じく、君のパートナーもまた、もう二度と会えなくなるかもしれないよ? 彼らはあれでも精鋭でね、しかも殺人倫理を薬で抜いてあるんだよ。快楽だけはそのままでね?そんな中に女性が居ていったいどうなっているのかな?心配かい?心配だろう!?はははは!」

「そう、思いますか?」


 挑発。しかしクローノはそれに乗らない。包帯を巻きながら横で見ていたアベルは、クローノの昔との違いを目の当たりにし、驚嘆を禁じえないでいた。


(本当に、あのクローノか?)


 優柔不断で優しくて、人の言葉に敏感に反応する小心者の天才。その面影はまるで無い。


「彼女を侮らないことですよ。なにせ彼女が真価を発揮するのは屋内での闘いなんですからね。見たことはありません。でも、そう、彼女が言っていたんです。だからぼくも信じた。お仲間が心配ですか? 屋内の彼女はきっと強いですよ?」


 屁理屈に近い内容、なのになぜこうも説得力があるのだろう。


「……信じたからって何でも上手くいっていたら、こんな世界にはなっていないんだよ?」

「それは皆が最後まで信じることができなかったからでしょう。一度や二度の失敗で簡単に心変わりをする事を、【信じる】などとは言って欲しくないですねぼくは」

「若いな、君は………」


 眩しそうにナーガが目を細める。


「ええ、羨ましいですか?」

「……………。そうかもしれないね、だけど!」


 ドウン!

 服の中に隠していた銃でいきなり撃たれた! それをクローノはステップで躱す! 

「何っ!」

「免許皆伝を侮らないようお願いしますよ。直線攻撃しかないと分かっていれば、どんなに速かろうと躱せないものは無い。判ってさえいればアベルだって同じ。これが、人間の力です」


 返答は銃声だった。両手に持った銃で撃ちまくってくる!


「……たとえ躱せたとしても! 近づけなければ相手を倒せまい! それが人間の限界というものだよ! 悔しいかい? ハハハハハ」

「さあ、どうでしょうね」

「なに?」

「助かったぜクローノ。もう大丈夫だ」


 ナーガは、いつの間にかアベルが後ろに回っている事にようやく気付く。元神官戦士の技量の賜物、宣言どおり二分で傷には包帯が巻かれ、痛み止めの処置までが済んでいた。


「………」

「アンタの負けだ。アンタ一人で俺たちふたりを相手にはできないぜ!」


 ナーガの顔からようやく余裕が消えた。鬼のような形相に変わる。


「……まだだ。ボクは君たちのような甘ちゃんの坊やどもに負ける訳にはいかないんだ……負ける訳にはいかないんだよ!!」


 ビ ッ !!

 それをアベルが躱せたのは奇跡だった。本能で体をひねった場所を、ほとんど見えない光の筋が通りすぎていた。後ろの壁に開いた穴から煙が覗く。壁が、燃えていた。

 二人の全身から脂汗が流れる。


(なんだよ……あれは……今のは攻撃、なのか!?)

「【光線銃】というらしいね。大戦時代の最前線兵器だったものだよ。最大のものは山をも消し去ったという話だ。くく、今のは躱したようだが、奇跡はもう起きない。起こらない。解るだろう?」

「くっ………」


 攻撃軌道はさっきと同じ直線。しかし速さが桁違いだ! 認識する暇もない。人間の反射のレベルを完全に超えている。


(あんなもの、どう躱せばいいっていうんだ!?)

「どんなに速くても躱せるんだったね! 見せてもらおうじゃないか、それが本当かどうかをね!」


 ビッビッビッビッビッ! 気の抜けそうな音とともに無尽に死がばらまかれてゆく!


「な!?」


 アベルの服に穴が開いていた。直線しかない。そう思い込んでいた。だが、一瞬見えた残像が曲がっていた。僅かだが軌道修正まで効くらしい。


(そ、そんなのどうやって躱せばいいっていうんだ?!)


 もはや二人とも勘で躱すしかなかった。限界スピードで動きまくる。だがそれですべて躱せるはずもない。おのずと限界が来た。所詮は疲れる人の身で、そこは狭い廊下なのだった。


「「ぐあぁぁああぁああっっっ!!」」


 のたうち回る! 奇跡的にまだ急所には当たっていない。しかし、すでに二人の体には何ヵ所もの小さな穴が開いて煙を吹いていた。



(ィイイッッテェェェ!! どこに当たったんだ? どこが痛いかすら解らねえっ)

(か、体に力が入らない……。体の中か、ら、燃えているみたいだ……)


 二人とも目はまだ死んでいない。しかし体が言うことを聞いてくれなかった。二人とも膝をつく。支える棍の無いアベルは、流れた血で滑って横に転がった。

 カターン。身じろぎしたアベルのふところからダガーが落ちた。自分のではないダガー。無念そうにそれを見たアベルは、あることに気付いて目を見張る。

 その握りに赤黒いもので文が書かれていた。多分、死ぬ間際に自分の血で書いたのだろう。


(そうか……そういう事だったのか。アンタ、俺が隠れていたことに、気付いていたんだな。これを届けてもらいたかったのか? ………ちぇ、分かったよ)

「く、くくくくくく、アハハハハハアハハハハハハハアッハッハッハッハ!……ク~~ックックッ」


 突然、転げたまま笑い出したアベルに、他の二人は訝しげに眉をひそめた。そこへ、哂いを収めたアベルがつぶやく。


「……よう、アンタ。ジニアスの、最後の言葉を知りたくないかい?」


 痛みをこらえて、近づいてくるナ-ガに声を掛ける。上げた視線の先に鼻の高い顔が迫る。


「聞いたよ、もう。確か、【友だと思っていた】、だったか。まったく。迷惑な話だね。どうして今更そんな事を言ったのか、とても理解……できないよ」


 なぜかわずかに歯切れが悪い。アベルはその歯切れの悪さに賭けた。


(どうせ今の状態じゃ、それしかできないしな)

「違うね。本当の最期の言葉はこれさ。受け取れよ、オラッ!」


 転がったまま思い切り投げる。直後、激痛で転げ回った。



(ダガー?)


 カランカラン……。投げられたダガーが床を滑って転がってくる。

 ナーガは、アベルの獣のような悲鳴を聞きながら手に取った。


「これが何だというんだ……い……っ!!?」


 に血文字が書かれていた。見覚えのある字だった。


【あなたは生きて下さい】


 最後の文字は力を失って、おかしな具合に伸びていた。最期の文字。

 体が震える。あの男は最期の瞬間にこれを書いたのか!? 自分を殺すように命令した私に宛てて!? まさかこの言葉の為に死を受け入れたとでも言うというのか!? それだけの為だけに!!?


「何故だっ!!!」


 思わず口をついて出た言葉に返事があった。


「解らないのかよ? 解ってるはずだ。答えはさっきアンタが口にした言葉だぜ……」

【友】

「う、うあ、ああぁ………うあああああああああああああああああああああああ!!!!!」


 ナ-ガは頭を抱えて絶叫した。


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