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短編小説

君を『消去』する方法

作者: うわの空
掲載日:2012/04/14

 散りかけた桜の木の下で、彼女きみは僕に言いました。



 私をころしてほしいの。

 心臓を止めるだけじゃなくて、『私』そのものをころしてほしいの。


 なかったことにしてほしいの。

 いなかったことにしてほしいの。



 ――けれどあなたは、しなないで。

 大好きだから。

 私の大好きなあなただけは、絶対にしなないでね。




 僕は考える。彼女の望みを叶えるために。

 彼女の望み。


 それは殺人ではなく、消去だ。

 彼女という人間そんざいの、消滅。

 となると、普通の方法じゃ無理だ。

 刺し殺しても、焼いても突き落としても、彼女の身体が残ってしまう。


 ――爆弾ならどうだろう。

 いや。きっと、肉片一つ残ることすら、彼女は許さないだろう。



 ……ああそうだ。

 彼女を消去するのなら、彼女と一緒に撮った写真も捨てなくちゃ。

 学校のアルバムも、皆燃やさなくちゃ。

 身体の一部でも写りこんでいるのなら、それは消さなくちゃ。

 消去するのなら、徹底的に消さなくちゃだめだ。



 そうだった。だとすれば、彼女の両親も殺さないと。

 だって彼女の両親は、彼女の存在を知っているもの。

 彼女の存在を知っている者がこの世にいたら、それは消去にならないから。

 クラスメートも、先生も、仲良しだった野良猫も、

 彼女の存在を知るものは、みんなみんな殺さなくちゃ。

 じゃなきゃ、消去にならない。






 ――待って。



 じゃあ僕は?

 彼女きみのことを愛している、僕は?

 そうだ僕も、僕ももちろん死ぬべきで、





『けれどあなたは、しなないで。

 大好きだから。

 私の大好きなあなただけは、絶対にしなないでね』





 ……君の望みを叶えるのなら、僕はどうすればいい?

 君のことを忘れて生きる? できる? そんな簡単に?



 もしも君のことを忘れてしまったとしても。



 それは、『君の大好きだった僕』なのだろうか。

 それは、『君の大好きだった僕』が生きていることになるのだろうか。




 僕は君のことが大好きで、

 君はそんな僕のことが大好きで、

 それじゃあ君のことを忘れてしまった僕は、誰になるんだ?




『君の存在が消えた世界で生きている僕』は、

『君の大好きだった僕』なのだろうか。


 





 ごめん、この問題の解き方が分からないんだ。

 答えを教えてくれないか。




 ちなみに僕の答えはね、 





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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公である『僕』の真剣さが伝わる、簡潔で良い文章だと思います 読者も一緒になって考える、疑問を投げかけるための小説 そんな感じなんですかね [気になる点] ずっと『僕』の思考…
[良い点]  シンプルで、綺麗な文体で、それでいて深い。  素晴らしい作品です。 [気になる点]  私個人の要望ですが、「なぜ、彼女は自らの消去を望んだのか」、その理由を軽くでも添えて欲しかったです。…
2012/05/08 17:42 退会済み
管理
[一言] この作品はすごいですね。 まず、ビックリもしましたが、最後の終わり方が独特。 そして、文学的な内面を含めた「君が望む君の消え方とは?」についての答えの導き方。最終的に、この作品でその答え…
感想一覧
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