歩む未来への決意
「私、ラズさんに会いに行こうと思う」
ミアは母親に、こう切り出した。
「ミア……。あなたが辛い思いするなら、お母さんはあまり賛成できないわ」
隠していたわけではないが、母親は今までミアを事故の事から遠ざけるように接してきた。
思い出して欲しくない、あの忌まわしき出来事。 幼いミアが負った心の深い傷。
その傷は時が癒すどころか、命の尊さに気づくたび、むしろ深くなっていった。
母親も、心のどこかでは、それに気づいていたのかもしれない。
でも、向き合うことで、またミアの中で何かが壊れてしまうかもしれない。そんな葛藤の中、振り絞った答えだった。
「お母さん……あの日から、ずっと右手を気にして過ごしてきたの、今ならよくわかる。
お母さんも、辛かったよね?」
そう口にした瞬間、胸の奥に沈めていた想いが、一気にあふれ出しそうになる。
「でも――やっぱり、私が今生きていること、身代わりになってしまったレイさんのこと、ちゃんと知りたいの。
レイさんから……許してもらえないと、わたし……」
ミアは、こみ上げる想いに胸を締めつけられながら、それでもぐっと飲み込んだ。
「ミア、ごめんね。お母さん、あなたに忘れさせることが、一番幸せだと思っていたの。
あなたに罪なんてない。あなたは、幸せに生きていいんだって。そう思ってほしかったの」
ミアの母親も、大人になったミアが、自分で考えて行動できていることに、もう何も言うことはなくなった。
「どんな顔して会えばいいのか分からないけど……行ってくるね」
「ミア…、ラズさんがどう思っていようとも、私はあなたの一番の味方。それは忘れないで」
ミアは、こくりと頷き、家を出た。




