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贖罪の道しるべ

 あの日から15年後、ミアは二十歳の誕生日を迎えた。


 ミアは以前の街を離れ、きれいな空気と木々の香りに包まれた静かな町で、今も両親の愛に守られながら暮らしていた。

 

 ミアの両親は、事故のことを多くは語ってくれなかった。

 母親にとっても、あの事故は、右手に呪いが掛けられたような、悔やみきれない出来事となっていた。

 それでも母は、毎日変わらぬ笑顔でミアを包み、惜しみない愛を注ぎ続けてくれた。

 そんな母に、あの残酷な記憶を再び引き出させるようなことはできなかった。

 

 しかし、大人になりきる前に、ミアはどうしてもこの贖罪を果たさなくてはならなかった。

 自分が夢を持つなら、あの事故と真剣に向き合わなければ、この命と日々が自責の念で潰れてしまう気がした。

 その決意を導くように、一人の少年と出会った。

 

 ミアは、その日母親に頼まれ、街の市場に向かっていた。

 この市場では、普段目にしないような野菜やハーブなどが、色とりどりのカートに並べられている。

 逆に一般家庭ではどんな料理に仕立てられるのかも想像がつかない食材たちは、レストランなどのシェフたちが、手に取り匂いや色を確認している。

 その中に――16か17歳くらいか。大人びた雰囲気をまといながらも、まだ幼さを残した端正な少年がいた。

 一人前に、周りのシェフたちと思われる大人たちと、肩をならべ食材を見極めていた。

 

「シェフ?じゃないわよね?」

 

 少し、違和感がありつつも微笑ましく、彼を見ていた。

 

 ミアの買い物が終わり、少し建物が寂しくなった道端で、うなだれている人影が見えた。

 先ほどの少年だった。惜しみなく落胆の色を発しているその少年の横には、パンクした自転車があった。

 

 ミアは、その少年に声をかけてみた。


「あれ?パンクしちゃったの?」


 おそらくあの市場で買ったであろう、食材の袋を両手にもった少年は


「はい…。隣の街から来たんですけど……。まいったな…。」


 そう言って、両手の袋を胸のあたりまで持ち上げてみせた。

 

「うちに修理道具あると思うけど…寄ってく?」


 ミアは自分の家の方向に目線をやった。

 

「本当ですか?ありがとうございます!よかった~開店に間に合う!」


 そういって、ミアの後ろをパンクした自転車を押しながらついていった。

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