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プロローグ
目を閉じると、カラカラと音を立てて記憶のフィルムが逆回転を始める。
急ブレーキの悲鳴、そして――鈍い「ドンッ」という衝突音。
やがて映し出されたのは、5歳のあの日。目の前で起きた忌まわしい出来事。
その瞬間から、ミアの心には、小さくも抜けない楔が打ち込まれていた。
あの人がいなければ、今の自分は存在しなかったかもしれない。
でも――あの人がいたからこそ、自分は「生きて」いる。
ミアは、曇り空のような心を抱えたまま、ただ時の流れに漂うように日々を過ごしていた。
深く、暗い影が――年月を重ねるたび、ミアの足跡をなぞるように、長く、静かに伸びていった。
夢を追うことすら、ためらうほどに。
――風に舞った赤い麦わら帽子。
それは、ミアの人生を決定づけた一瞬――。
誰かの命と引き換えに。




