追ってくる者⑹
ぶつぶつぶつぶつと唱えていた呪詛が彼女たちの耳にも届いたらしい。「何?なんか変な声しない?」「えっ、だよね。キモ…。はやくメイク完成させて合コンに行こうよ。」「今日の相手ってN高のネコ科達でしょ?いちころじゃん。」「それな~。芋女と違って構ってくれる雄ならいくらでもいるのよね。」
今なら思えます。ここで出て行って喧嘩を売るやつは馬鹿だなって。黙ってそのままトイレにこもって嵐が過ぎるのを待てよって。でもダメなんですよね、ぷつんと来るとだれにも止められない。
バタン。トイレのドアを豪快に開けると、鏡の前でメイクをしている陽キャどもを睨みつける。「あんた達なんか、寄ってくるのは顔が目的の頭がちゃらんぽらんな奴らばっかりでしょ?」虎族と水牛族と思われるその女たち二人は化粧中の手を止めて私を見る。「あ?」「あっれれ~?芋子ちゃんじゃん、何?なんか文句あるの?」長いくるくるした巻き髪をいじりながら水牛族の女は応戦体制にはいった。「ええ、なんなら文句しかないわ。オロチが好きならアピールすればいいのよ。なのにそんな勇気がないから裏で悪口を言うしかない。くだんない、低能で度胸もないなら威張り散らすな。」「っ…この…ブスのくせに!」虎族の女の手が降りかかる。バチン、火花が散った。右頬が熱い…。「ふん、二度と歯向かわないことね。次歯向かってきたらあんたの居場所、クラスにはないと思った方が良いわ。」その脅しを聞いて水牛族の女が隣で楽しそうに高笑いする。バチン、バチン。虎族と水牛族の女は二人ともぽかんとしたまま右頬をおさえた。まさかここで仕返しをされるとは思わなかったらしい。「ほざいてなよ、性格ブス。」そう二人に言ってやると私はさわやかな気分で女子トイレを出た。今なら滅茶苦茶嫌だった生徒会の仕事も頑張れそうだ。それくらいさっぱりした気分だった。




