追ってくる者⑶
眩しいほどの美しい微笑みを浮かべて立っている八重村オロチの姿を見て私は青ざめる。「いや、これは、その…。どこから聞いていらっしゃいました?」私は冷や汗をかきながら手をもじもじとすり合わせる。「へらへら人のよさそうな笑みを作っているけど…てところからかな。」ほとんど全部!私は内心悲鳴をあげる。「あ…あの緑は新入生代表のスピーチが上手で…その…すこし嫉妬しちゃって言っただけで本心ではないんです。」尼子がフォローのつもりで言ったその言葉にむっとする。「いいえ、決して嫉妬なんかじゃありません!あなたを見てて思ったことをそのまま言っただけよ!本当に腹黒の冷徹勘なんじゃないの?いまだってにこにこしてるけど腹の中では何を考えているか分かったものじゃないわ!どうせ私をどうやって処分するか考えているんでしょ!煮るなり焼くなり好きにしたら?でも私、今の言葉絶対撤回なんてしないわ!」そこまで言い切ると私は謎の達成感を得て一瞬とても気分が良くなったがすぐに冷静になりますます青ざめる。でも撤回なんてしないと言った手前私は震えそうになる体を一生懸命おさえて彼を睨みつけた。彼は私の言葉に心底楽しそうにくすくすと笑う。「いいね、煮るなり焼くなり好きにしていいんだ。」オロチは私の顎を右手で掴むと顔を上げさせた。彼の顔がぐっと近くなり私は息を呑む。近くで見れば見るほど美しい男だ。その金色の目で見られると息をするのもわすれるほどの…生死の危険を感じる。彼の目は固まった私を見てますます楽しそうに輝く。「じゃあ、好きにさせてもらうよ。」にこっと微笑むと彼はぱっと離れる。「僕たち、おんなじクラスなんだ。これから仲良くしていこうね。緑さんがお望みの処分というものについてはおいおい報告しにくるよ。」オロチはそれだけ言うと去っていった。「緑?大丈夫?」尼子のその声掛けに私は緊張の糸がぷつんと切れてその場にへたりこんだ。




