6章(戦争編)「崩壊の足音・1」
6章(戦争編)「崩壊の足音・1」
―――試験後日 三田市 廃工場にて―――
「何故、龍を殺そうとしたのかしら?」
「私らの大将のはずではなかったの?」
「あら、答えられないの」
「そう―――」
バキッ…どこかの骨が折れる音がする。男が悲鳴を上げる。椅子に腰かけて男を見下ろすその声の主は、冷酷な目つきをしている。髪は金髪。腰辺りまで伸びている長い髪をおろしている。凛とした顔つきで、よく見れば美人だ。
「彩香さん…すいませんでした…!」
「誤って済むもんですか! あの子を殺そうとしたってことは、国家反逆罪にもなりかねませんよ?」
「…おっしゃる通りです…」
「わかった、もういいわ。それよりね…」
「はい…?」
「龍が、今どこにいるか調べて頂戴」
「どこにいるか。ですか?」
「そうよ。私には何も知らされていないのよ…黙って出て行ったもんだから…」
「わかりました。早急に調べます。」
「そうして頂戴」
「おい! 聞いたな、てめぇら! 龍さんの居場所を調べろ! この街で知らない人は居ないほどの有名人だ! いろんな人に聞いてみろ!」
――はい!――
―――同時刻渋谷の某マンション―――
「僕が好きなものは、そう人のもがいているところ。それを見るのが楽しくて楽しくてたまらないんだ。それを聞いたら、変人だと普通は思うだろう。そう、それが普通の反応。それでいいんだ。だけど、それじゃぁー面白みってもんがないじゃないか。だから、君たちには予想外の反応をしてもらいたいもんだね。」
「さてと、そろそろ僕はいかなきゃなぁーあの変人のところに…」
自称変人の望月 空也は、マンションを出てとある喫茶店に向かった。
店に入ってあたりをきょろきょろと見渡すと、そこには一人女の子がいる。その女の子のところへ望月は歩いていく。
「あ! 空也兄だぁっ!」
「はぁ~…雪、あんまり大きな声だすなって…」
「いいじゃんーっ!お兄ちゃんとの感動の再会を果たした妹が、大声をあげて席を立ち、手を振るのは当たり前のことでしてー…」
「もういいから、座れ」
望月は雪と向かいの席に座り、呆れた口調で言う。
「…にしても、雪お前何しに来た?」
「何しに来たってぇー決まってるじゃない! 転校してきたんだよ? 剣銃学校に」
「あぁ、そうだったな。」
望月が椅子にもたれかかって椅子をかたこといわせながら言う。
そして、コーヒーを頼んでいる。
「そうだよ~っ!もしかして、忘れてたの?」
「わりぃわりぃ…」
「ところでお前、どこに住むんだ?」
「へ?」
「へ? じゃないだろ、ちゃんと住むとこ決めたのか?」
「…それはぁ、そのぉ…」
「まさか…」
「そこでそこでお兄さんにお頼み申しあげたいことがあるのですが…お部屋に、泊らしてはもらえませんか?」
望月はコーヒーを飲みながら思考を巡らせる。もしかしたら妹を上手いこと動かせば、いろいろ楽しめるかもしれない。でもでも、いろいろ厄介なことになりかねない。
等といった様々な思考が交錯し、望月は珍しく若干の混乱状態に陥っている。
そして、決断。
「よし、わかった。いいぞー泊めてやる」
「ほんと!?」
「あぁ…その代りと言ったらなんだけどー」
「家賃は、払えよな」
「はうぅ…わかりましたぁ」
望月はコーヒーを飲み干すと席を立ち
「じゃ、そろそろ僕はやることあるから帰るわ。地図と鍵渡しとくから、それで帰ってこれるだろ?」
「うんっ! またね、空也兄!」
望月は、喫茶店を後にしてとある学校に向かった。その学校とは、WSGH。
秋沢 龍一達の居る学校だった。
「やぁ、先生お久しぶりです」
「あら、望月君じゃない。どうしたの?級に」
「実は、旅行部を見学したくて」
「うちの部を? いいけど…見学してもおもしろくないわよ?」
「いいんです。ちょっと話したい人物がいるだけですから」
「そう、じゃぁ案内するわ。ついてきなさい」
望月は旅行部顧問に連れられ、旅行部の部室へとやってきた。
それを見た龍一は目を丸くしている。
(望月…さん?)
「今日ここを見学したいって言ってきた望月 空也先輩よ。怒らすとろくなことないから、粗相のないようにね」
「望月 空也ですー。ここはもう3,4年前に卒業したんだけどー懐かしくなって学校に来たってわけでー旅行部なんてできたって聞いたんでー気になって見学しにきましたぁー」
「さいですかー」
「よろしくお願いします」
「じゃ、私は職員室に戻るので、何かあったら来てね」
「はい」
望月は、近くにあった椅子に座る。
その椅子は、秋沢 龍一の向かいだった。
{なにしてんすか、望月さん}
{なにってー、部活の見学だけど?}
{そういうこと言ってんじゃありません。どうせなんかまたろくでもないこと考えてるんでしょう?}
{人聞き悪いなぁー}
{まぁ、何もしないでくださいね}
{わかってるってー}
龍一は、ほっと一息つくと紅茶をすすりだした。美菜やその他部員は呆けた顔でこちらを見ている。
「えっと、今はこの前の旅行の新聞作ってるところです。…っていっても、あんまり何もしてないですけど」
「そっすねー、さっきからおしゃべりばっかりっすからね~」
「ほとんどはお前がアニメやゲームの話しとか意味わかんない話しとかしてるだけだろうが」
龍一が鴨井にチョップを入れる。美菜は、その間黙々と作業を続ける。羅衣は紅茶を飲みながら鎖鎌の手入れ、蘭は読書。という風に思い思いのことをしている。
堕落してるな…龍一はつくづくそう思うのだった。
「まぁ、僕のことは気にしないでー、作業を続けてくださいよー」
「やってさ!みんな手伝ってよねっ!」
「ごめんごめん!今手伝う!」
龍一は美菜のところに駆け寄って、作業を手伝いにかかる。鴨井と羅衣と、蘭もしぶしぶ手伝う。
(ふーん。DOTSの創始者様はぁ~、今は過去を忘れ、日々楽しんでるわけかぁー)
「あぁ~、やっぱ用事思い出したから僕は帰るよー。じゃぁ、作業がんばって」
「あ、はい。」
望月は、学校を後にした。
―――なにしに来たんだろうね―――
―――翌日 休日の学校にて―――
サッカー部長である音無 新市はレギュラーを率いて、職員室の前にて構えていた。
何をするのかと言えば、一目見ただけでだいたいは想像できる。皆一様に武器を持っているのだから。
「いいか? これから職員室内に入り、職員を一人残らず殺害、最終的に校長を殺ってこの学校をダイナマイトで破壊する。」
「はい。でも、大丈夫すか?俺らだけで…
学年首席ばかりの旅行部にも協力を頼んだ方が良かったのでは…
「その必要はない。俺らだけで十分だ。サッカー部の力、見せてやろうじゃないか。」
音無はいよいよ扉に手をかけた。そして、潜む様な声で
「全員、突入」
そう告げると共に、11人が一斉に職員室になだれ込む。
「サッカー部だ!殺されたくなければ全員手を挙げろ!只今より、この学校を破壊する!」
音無は、銃を職員達に向ける。そして、手近の教師に撃とうとした…
だが、その瞬間に何者かに銃が弾き飛ばされ鷹と思うと、音無の体が宙を舞った。
「…たく、俺らに喧嘩売るならもっと多人数できやがれってんだ…」
「校長…?」
サッカー部は全員で校長にかかっていく。
「…っ舐めてんじゃねーぞっ!」
「…たく、舐めてんのはお前らのほうだ…ろっ!」
校長は全員が殴りかかってきた瞬間に、拳一つで全員を気絶させてしまった。
ほんの一瞬だった
「お前ら、こいつらを警察に引き渡しとけ」
「はい。わかりました」
―――同時刻 渋谷の某マンション―――
「ははは! やっぱりサッカー部はおもしろいねぇー、僕の望む行動をしてくれたよ~」
「あんたって相変わらずおかしな人よね…で、どうしたの?」
「サッカー部の連中がー、レギュラーだけで学校に喧嘩を売ったんだよ~威海さん」
「ふ~ん、ってなんでそんなこと知ってるのよ」
「それはー、隠しカメラだよ」
「は?」
「僕はあの学校に昔隠しカメラをしかけたんだよねー、それをこのモニターでチェックしているのさ」
望月は、自分が見ているモニターを指差す。
昔。とは望月が学校に通っていたころだろう。
「いやぁ~、やっぱり火種を蒔いといて正解だったよー。昨日僕があんなこと言ったら、本気にして…まぁ、本当の事を話したまでなんだけど…すぐ行動に起こしてくれるなんてさぁ~。いやぁー、実に面白い! これから、この火種がどうなるだろう! 反政府主義だったあのお人は、どう動くんだろうねぇー」
「どうでもいいけど、あんまり部外者を蒔きこまないでよ…」
望月が楽しそうに喋っているのを威海は呆れながら、眺める。
(やっぱ普通にしてれば、いい男なのに)
「あぁ…! 僕は待ちきれないよ~。あのお人が動くのが楽しみだぁー」
このいかれた黒幕主義の男に、龍一の人生は再び大きく変化することになるのだった。
街を弄ぶこの男 望月は、今日もどこか楽しげに街を弄ぶ。
おはこんばんにちは!
久しぶりの投稿です
ウーノも、そろそろいろいろ動きだしてきますよー
この望月が作った火種が、これからどんどんいろんな形でふくらんでいきます。
いやぁー、楽しみです
そういえば僕の小説で今まで ~編ってついたことなかったなぁ