『因みに』を会話の中で五回も召喚する人
初めまして、阿吽と申します。
どうぞごゆっくりお読みください。
※シリーズの説明を先にご覧ください。苦手な方がいるかも知れませんので。
ゆくゆくはそれ以外にもでて来ることだろうが、私が思う三大口癖を紹介したい。
最初に、私が言葉遣いに関してとやかく言えるほど、話が上手なわけでも、あらゆる言葉を網羅しているわけでもないことはご理解頂きたい。年相応、人並みぐらいだと思っている。
言葉は正しく適切な量を使用すればなんの問題もない。いろんな言葉を知っているほど、こちらの思いや理解してほしい文章をより正確に伝えるためのツールであると思う。でも、多用したり使い方を誤ってしまえば、相手に不快感を与えてしまったり、会話の妨げになるかもしれない。それが悪い口癖。
今日はさっそく、先日作った『私の苦手な言動シリーズ』として筆を執る。多分、いや私は、十中八九ひねくれていて、この類のことが得意(である必要は全くない)なのだろう。それでは本題へ。
私は今日もあの人の声に反応してしまう。
恋か――。
いや全然違う。断じて違う。そんな感情は毛ほどもない。
相手は三十以上歳の離れた上司。恐らくこの会社に勤めて長いのだろう。お局とか言ったりするのか。実際にネットで「お局とは」と検索すると、まさしくその人に該当することばかり書かれている。やはり、お局で間違いない。
これは私が言えたものでは到底ないが、あまり仕事ができる印象がない。何かにつけて口うるさく、諸先輩方もあまりよく思っていなくて、上層部も手を拱いているらしい。言い換えれば丁寧だが、度が過ぎる細かさ。常にかりかりしているのか、不機嫌な時は挨拶すら周りに返さない。かと思えば、甘ったるい口調で陽気な時もある。これは相手によって極端に変えている節がある。たちが悪い。
*
ある日、いつものようにパソコンに向かって事務作業をしていると、後ろの方であの人が話しているのが聞こえる。話し相手は部下。私の先輩だ。肝心な時は小さいのにいつも声が大きい。聞きたくなくても、無理やり耳に入ってくる。
どうやら、語尾が強くなってきており、少し口論になっている様子だ。本人は冷静に喋っているつもりだろうがこれもいつものこと。先輩はいたって冷静で少々困っている。だって会話の中で、あの人が話そうとする度に『私のターン!』と言わんばかりにちなみにを挟むのだから。
『ちなみにな?』『ちなみにさあ‥‥』『いや、あの、ちなみにな??』と様々な因みにが飛び交う。
私はパソコンに目をやりながら、頭の中で『いち‥‥に‥さん‥‥‥』と数えていると、ひとつの会話の中であの人は結局、五回も因んでいた。何をそんなに因む必要があるというのか。
*
その日の午後。今度は電話で話しているのが後ろから聞こえる。またあの人だ。
相手は社内の人間ではないのだろう。口調がやわらかいのですぐわかる。ただ、名乗りの段階から声が高い。ワントーン上の高さどころではない。それはだんだんと声が甲高くなる。金切り声とはこの人のことを言うのだろう。確かに金属を切断するような声だ。耳が痛い。
だが、私もさすがに耳を塞ぐほど肝が据わっていないので、黙ってその声を受け入れていると、またもや繰り返し聞こえてくる言葉が耳につく。今度はぎゃくにだ。
なにか提案をしているのだろうか。会話の内容はあんまりわからないが、とにかく逆を提唱している。なんか妙に『逆に!』と言っているときは嬉しそうだ。笑い声が微かに混じっている。
相手からすればそんなに逆逆言われたら、否定されているような気分にならないのか心配だったが、私の知ったことではない。
私は気にせず外回りに会社を後にした。
*
外回りから帰ってくると、オフィスに残っているのはあの人だけだった。他の先輩方は帰ってしまったらしい。そういえば定時をまわっている。少し資料をまとめてから、今日は帰ろうかと席に座り作業をしようとすると話かけてきた。
「ねえ、外回りどうだった?」
「あ、外回りですか?何件か話聞いてもらって、良いところまで行ったんですど、検討で終わりました。また改めて行ってきます」
「検討か‥‥‥」
「はい、すいません」
「要するに元気がないんじゃない?」
(でた。ようするにだ。これもよく使うんだよなあ‥‥‥)
「はあ」
「それよ、『はあ』とかやる気のなさそうな返事。もっとシャキッとしないとだめじゃない?」
「すいません‥‥」
「要は私みたいに力強く喋らないといけないよ!?」
「明日からやってみます」
バタンっと力を込めてパソコンを閉じてその場を後にした。
いつそうだ。こちらの意見は基本的に聞こうとしない。因んで、逆にして、すぐに要する。
自分へと話の流れを強引に作ってはまとめにかかったり、論点がズレていることが多い。
話をまとめることは悪いことではないが、あまりにも汚い。まとまってもない。話していると非常に不愉快である。これで打ち合わせなどは成立しているのだろうか。所謂マウントを取ることをこの人はよくするが、それで何か進展したケースがあっただろうか。私にはわからない。
私含め、皆さまも注意されたし。口は災いの元だ。
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