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豊満のグルメ ~チートスキル“スーパーマーケット”で美味しいスローライフのつもりが、なんか思てたんと違った件~  作者: 石和¥


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第37話 塩と新機能

ここからは書いて出し

 夜になっても、翌朝になっても。領主とその兵隊たちは戻ってこなかった。昼前にガタガタと馬車の音がしてきたけれども、“魔境の森”がある南側ではなくメルバのある北側からだった。

 これは、商人ギルドかな。


「カロリー、また商人の馬車が来た」


 リールルに言われて外に出ると、思った通りのミシェルさんだった。


「ユーフェムさんはどうしました?」


「申し訳ありませんが、いまギルドマスターはメルバを離れられません」


 ミシェルさんの表情を見るまでもなく、なにか問題が起きたことはわかる。それが戻ってこない領主たちと関係があるのかまでは不明。

 朝食後に置いたままだったテーブルに案内する。シスター・ミアが香草茶を淹れて、聞かれたくない話もあるだろうと子供たちを外に連れ出してくれた。


「なにがあったんですか?」


「コールエンに向かう西向きの街道がリヴェルディオンの兵に塞がれました。塩の調達に向かうはずだったイルネア商会の馬車が襲われて、人死にが出ています」


 コールエンというのは、イルネア商会の本店がある西の港町だ。塩の販売を独占してきたケルベル商会が解散させられて、今後の供給はイルネア商会が担うはずだった。

 それが途絶えたってことか。


「コールエンまでは馬車で往復10日。その間でしたらケルベル商会から徴発された塩で乗り切れるはずだったのですが、新たな供給先を探すことを考えると間に合わなくなる可能性が高いです」


 その港町がどのくらい遠いのかは初めて聞いた。馬車で片道4日くらいは掛かる距離、といっても馬車が一日に走れる距離を知らないのでフワッとした概算で100キロか200キロか……どっちにしても、わたしにはどうにもできない。

 いまもフードトラックがあったら、エルフを蹴散らして代わりに行くこともできたのにな。塩なら“スーパーマーケット”で買えるものの、この世界の港町は見てみたい。

 そんな悠長なことを考えている辺り、わたしにはメルバの危機が他人事なんだと思う。


「ケルベル商会は、どこから塩を仕入れていたんですか? それがわかれば、そこと交渉したらいいと思いますが」


「どこでどう仕入れるかは商人の才覚で、他人に話すことはありません。ケルベル氏は北部だと匂わせてはいましたが、それが事実かはわかりません」


 それはまあ、そうかもしれない。となるとお手上げか。


「メルバで塩が切れるまで、どのくらいですか?」


「冬支度で塩漬けの仕込みが始まっていましたから、いつもより消費が進んでいます。保って半月、早ければ10日ほどかと」


「わかりました。塩はどうにかします」


「ありがとうございます。精いっぱいの値付けで、金貨50枚まででしたら……」


 え、8万ドル⁉ ちょっと待って、この世界で塩ってそんなに高いの⁉


「そこまではしませんよ。わたしのいたところで、塩はそれほど高価なものではないです。ちょっと待ってくださいね」


 計算のためにi-phoneを出す。さすがに圏外だけど、なんでか電源は減っていない。これも転移者特典なのかな。まあいい。

 前に“スーパーマーケット”で調達してみた海塩(シーソルト)は、たしか600グラム弱(21オンス)のボトルが4本セットで約1,650円(11ドルちょい)だった。

 メルバの消費量は概算で月に200キロだっけ。ざっくり12ドルかける85として……仕入れは1,020ドルか。命にかかわる物資で足元見るのもどうかと思うけど、あんまり安く売るのもマズい。本来は数千ドル(金貨)単位の商売なのに、ここでわたしだけ金貨1枚でいいですよなんて言い出したら後々いろんな問題が出そう。


「今回は、メルバのひと月分を金貨5枚で引き受けましょう」


 ミシェルさんからはエラく感謝されたけど、それでも8千ドル。日本円で120万だ。元値は15万円くらいなのに。


「商人ギルドまでお持ちしますか?」


「いいえ、いつまでにご用意いただけるかお伝えいただければ、こちらからすぐに荷馬車を出します」


「では、ミシェルさんはギルドに戻って馬車の手配をしてください。すぐに用意しますから」


 ビジネスに慣れたはずの商人ギルド事務長も、さすがに面食らった顔をする。わたしが笑顔で調達を保証すると、無理やりに納得して馬車に戻っていった。

 わたしを信用したから、というのとは少し違う感じ。商人ギルドからすると、わたしとの取引で得られる利益はすでにかなり大きい。ここで金貨5枚の結果が吉と出ようが出るまいが大きな問題ではないんだろう。


「コハク、丘の上までお願いできる?」


「にゃ」


 聖獣姿のコハクに乗って丘の上まで行くと、“スーパーマーケット”を出してそのまま店内に駆け込む。調味料売り場の塩は、当然ながら200キロも置かれていない。

 ボトル入りの海塩4本セットを、購入手続きのとき85と設定するだけだ。


「うおぅッ⁉」


 ドンと置かれたボトルの山は、ちょっとした自動車くらいの体積になった。ボトルは日本で入浴剤が入ってるくらいの大きさ。それが4本かける85セットで340本。円柱型をしたパッケージの問題なのか、想像していたよりずっとかさ張る。

 広い通路が一瞬でいっぱいになって、慌ててストレージにしまい込む。


「ありがとコハク、孤児院に戻ろう」


「にゃ!」


 外に出て“スーパーマーケット”を消そうとした瞬間、いきなり耳元で電子音と音声アナウンスが鳴り響いた。


“購買条件を達成、新機能が実装されました”


「おわぁッ⁉」


 振り向いたコハクが、どうしたの? って顔でわたしを見る。この声、聖獣様には聞こえないんだっけ。もう何度も聞いてきた声なのに、心の準備がないときに耳元で鳴るとビクッとするわ……

 でも、いつもの“レベルアップ条件を達成”ではなかった気がする。新機能ってなんだろう?


“従業員設定機能が実装されました”

“従業員用制服機能が実装されました”

“従業員用商品知識インストール機能が実装されました”

“店内移動用ローラーブレード機能が実装されました”

“セキュリティスタッフ用制圧装備が実装されました”

“従業員用食堂設備が実装されました”

“従業員用衛生設備が実装されました”

“従業員用ホームディフェンス機能が実装されました”


 なんか、アナウンス多くない⁉ 立て続けに言われて、ほとんど聞き取れなかった。でも途中なんか色々と違和感あるものが混じってた気がする!


「とりあえず、最後の“従業員用ホームディフェンス”って、なに?」


“従業員の暮らす家を、スーパーマーケットの結界内に統合します”


 おお、それは、とてもありがたいかも!

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― 新着の感想 ―
米国では知らんが我が国ではソレを要塞と呼んでいる。
すげぇ高性能なスーパーマーケットだw 特に商品知識共有化がチートすぎる。
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