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外伝 ユイ①

幼少の頃、私はいつも一人だった。

この銀髪のせいで仲間外れにされたのだ。


「なんでユイだけ違う髪の色なの?」


今思うと、全く悪気は無かったのかもしれない。

ただ他の人と違うから、違うと言っただけ。

子供は素直だ。素直だからこそ残酷なこともある。


その言葉に幼い私は深く傷ついてしまった。

私はみんなの輪に入るのが怖くなった。

そして一人でいることを選んだ。



***



裏山で子犬を見つけた。

真っ白な体は泥で汚れていて、お腹を空かせていたようだった。

仲間からはぐれてしまったのだろうか。

こっちへおいで、と声をかけても低木の陰から出てこない。

人間を怖がっているようだった。


巫女に、捨て犬を見つけたので飼いたい、と話した。

巫女は一緒に裏山に見に来てくれた。

だが子犬を見ると、あれは狼犬だから人には懐かないので飼うことはできない、と言った。


それでも諦めきれなかった。

昼ご飯のパンをこっそり隠して、裏山に持っていった。

最初は警戒して出てこなかったが、三日目にパンを食べてくれた。

狼にも犬にも仲間外れにされて一人ぼっち。私とおんなじだ。


「お前も一人なんだね。私と友達になろう」


話しかけると、言葉がわかるかのように擦り寄ってきた。

名前をリドとつけた。

どんな名前にしようかと考えていた時にふと頭に浮かんだのだ。

ずっと昔に聞いたことがあるような気がするが、思い出せなかった。


その後もこっそりと餌をやり続けた。

裏山をリドと一緒に走り回った。

リドと友達になってから、私は少し毎日が楽しくなった。



***



五歳のときだったと思う。

夜中にふと目が覚めた。何かがおかしい。

危険を感じて身を潜めて周囲を観察すると、部屋の中に知らない男の人が二人いた。


六人部屋でベッドが六台並んでいたのだが、ランタンをかざして一人一人の顔を確認しているようだった。

一番端のベッドにいた私は毛布を頭から被って震えていた。

私のところに来て毛布を剥がされた瞬間、ベッドを飛び出して廊下に逃げた。


「あいつだ、追え!」


男が追ってきた。私は「助けて!」と叫びながら廊下を走った。

扉を開けて外に出たが、そこで追いつかれて腕を掴まれた。


「助けてえーー!!」


思いっきり叫んだ。

巫女の部屋に明かりがついた。


「大人しくしろ」


男は片腕で私の体を抱え、私の口の中に布を無理やり詰め込んだ。

『早く、早く助けに来て!』と心の中で願った。


その時、草の陰から物凄い勢いで何かが飛び出してきて、私を抱えている男に体当たりしてきた。

リドだった。

男がよろけた拍子に私を手放したので、咄嗟に草むらに隠れた。

ランタンを持っていたもう一人の男がナイフを取り出してリドに向かって行った。リドはナイフを避けて男の腕に噛みつき、男はナイフを落とした。

よろけていた男もナイフを出して、リドに襲いかかっていった。


そのとき扉から巫女が男性の職員二人を連れて出て来た。

それを見た男達は、観念した様子で走り去って行った。


「リド!」


泣きながら駆け寄ると、リドは怪我をしていたようで足から血を流していた。

孤児院でリドの怪我の治療をしてくれた。そしてリドを飼うことを許してくれた。


巫女はあの二人の男のことを、海外から来た『人買い』だと言った。

幼い子供を(さら)って奴隷として売り(さば)く悪い人達がいるのだという。

もし人買いなら、子供なら誰でも良かった筈だ。でもあの男達は明らかに私を狙っていた。

巫女は、私の銀髪が珍しかったから狙われたのだろう、と言った。


それから孤児院の警備が強化された。

結界を張って、悪意がある人は敷地に入れないようにしたのだ。

これだけ強い結界を張るには相応のエネルギーが必要なのだが、巫女長が許可をしてくれた。

リドも番犬として役立ってくれた。

その後、何度か不審な人物が孤児院に近づいたことがあったが、結界で弾かれた。


リドを飼い始めてから私は明るくなった。

リドという大親友ができたことで、(かたく)なな心が解けたのかもしれない。

孤児院のみんなの輪にも入ることができ、仲がいい友達もできた。

それからは、孤児院は心から安らげる場所になった。



***



八歳の誕生日に、孤児院の巫女のリーダーであるセレナの部屋に呼ばれた。

セレナの部屋に一人で呼ばれるのは初めてだった。

何を言われるのかドキドキしながらセレナの部屋を訪問した。


そこで私が赤子の時に港街アクティの商店の前に置き去りにされていたことを告げられた。

親がいないということはわかっていた。

そもそもここは孤児院だから、親がいない子供だけが集まっている。

だが、その事情は様々だ。親が病気や事故で亡くなった、行方不明になった、金銭的な事情で育てられなくなった、などだ。

そのどんな理由でもなく『捨てられた』のがショックだった。

セレナは置き去りにされたと言ったが、要は捨てられたのだ。


そして、添えられていたというペンダントを受け取った。

美しい水晶のペンダントだった。

こんなもの一つだけ残してーー。


私は両親に愛されなかったんだ。


もともと何かを期待していたわけではないので、立ち直りも早かった。

セレナは私のことを心配してくれていたが、ショックではあったが逆にスッキリしたくらいだ。


私には居場所がある。

孤児院が私の家で、リドやみんなが私の家族なんだ。



***



孤児院では、幼い時から個々の能力を判断して、それを伸ばすような教育をしている。


就学の際、同じ歳の子供達が集められた。

巫女に言われるまま、訳もわからずに水晶玉に触れた。

ひんやりと冷たかった。

そして水晶玉の中に虹色のモヤがかかったようになり綺麗だなと眺めていた。

その後、私は巫女としての能力が高いと言われた。


巫女に必要なことは、水晶玉と共鳴する力、薬草の知識、薬を作る知識、治療の知識などだ。

知識については勉強すれば身につくものだが、水晶玉と共鳴する力はそうはいかない。訓練によって強化することもできるが、そもそも素質がなければ強化すらできない。

私には持って生まれた素質があるという。


私は嬉しかった。こんな私でも人の役に立つことができるんだ。

それからは通常の勉学と併せて、巫女に必要な知識を身につけていった。


十三歳になると職業を選択する。三年間の職業訓練や見習い期間を経て、十六歳から正式に仕事を始めることができる。もちろん仕事でなはく勉学を継続することもできる。


私の能力の場合、巫女か結界師のどちらかを選ぶことになる。


巫女の主な仕事は二つ、女神の神殿で祈りを捧げてこの国の結界を保つこと、神殿が運営する病院で薬を作ったり患者の治療を行ったりすることだ。


結界師は、旅人や商人と共に旅をしながら結界を張ったり治療を行ったりする。

この国には盗賊などはいないが、最近では海外から犯罪者が密航してくることもあり危険が増しているので、格闘術も身につける必要があった。


大半の女性は巫女を選ぶので、結界師を選んだときには皆に驚かれた。


結界師を選んだのは情報収集のためだ。

もし巫女になったら活動範囲が狭くなる。女神の神殿や、神殿が運営する施設だけになるのだ。

結界師なら国中を行き来できるので、情報収集がしやすいと思ったのだ。


欲しかった情報は、銀髪の民に関するものだ。

子供の頃は自分の銀髪を疎ましく思っていたが、やがて私の個性だと思えるようになった。

そして、成長するにつれ自分のルーツを知りたいという思いが強くなってきた。

この国には銀髪の民はいない。セレナはおそらく他の大陸から船でやってきたのだろうと言っていた。自分でも色々調べてみたが、ミロステアでは詳しい情報は得られなかった。


実際、結界師になってから国中の街や村へ行くことができた。

そして最終的に分かったのは、この国には銀髪の民に関する情報がないということだった。



結界師になって想定外だったことがある。

それは思っていた以上にコミュニケーション能力が必要だということだ。

旅の期間をお互いに気持ちよく過ごすためには、雑談も含めた対話が必要なのだ。


孤児院の中だけで育ってきた私は、自分が人見知りだということにすら気がついていなかった。

その点、狩護師はみんなコミュニケーション能力が高い。見ていて勉強になる。

この人見知りを克服するのが今の私の課題だ。



まだ目的は果たせていないが、結界師を選んで良かったと思っている。

これからもっと人の役に立てるように、経験を積んでいきたい。

そして、ここまで育ててくれた孤児院に恩返しをしていきたいと思っている。



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